青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

十三・弥生座

2020-11-05 | 昭和の映画館

レンタル「ビデオ」も無かった学生時代、昔の名作を見ようと思えば努力が必要でした。写真は十三にあった「弥生座」!ここは高校生の時に足を運んだ場所でしたが、安全に楽しめる場所でした。安全?そうです。安心して映画を観れない映画館が、大阪にはいくらでもありました。映画鑑賞を目的として、映画館に足を運ぶ人ばかりではないということを、僕も大学時代に知ったのです。



「Lマガジン」という関西の情報誌を買い、古い映画の4本立てを低料金で上映している場末の映画館(二番館とか名画座と呼ばれていました。)を探したものです。今思えばTVの深夜でも未放送、当然ビデオ発売無しという、とんでもない映画が多かった。そこで観る映画は、フィルムはキズだらけで、雨が降っていたものです。また夏休みやお正月等を除く通常の時は、ポルノ映画館に変身していました。こういう映画館では勿論パンフレットなどは売っていません。

こういう映画館があるのは、今とは違い、その当時は物騒な場所(トビタや天王寺)でした。昼間から飲み屋の路地で、空き瓶の残りの酒で宴会している浮浪者。「当ホテルは安全です」と書いたビジネスホテル。靴を片方だけ売っている露店。そういう光景が目に飛び込んで来るのです。水溜まりと思ったら小便の溜りだったり。それでも映画見たさに、そこへ行きました。

初めて危ない地域・天王寺へ行った時、さっそく事件は起こりました。いきなり横丁から「紙くれー!」と叫びながら、浮浪者が飛付いて来ました。鼻血をしたたらせて。でもあの日はジョン・ウエイン特集(4本立て)だったので、怯まず行きました。ロードショーが千円の時代に4本5百円でした。映画館の中には、ほとんど人はいません。行き場の無いように見える人がポツンポツンといるだけです。

喉が渇いたので自動販売機でコーラを買いましたが、どうも味が違う。良く見るとコカコーラの文字が、色も字体も同じなのに「コカコーレ」となっています。よく一緒に行った友人は懐かしいプラッシーを買いましたが、これも「ブラッシー」。不気味で飲めませんでした。

映画を鑑賞中に痴漢にも遭ったことがあります。人の股間に手を伸ばしてくる。そして「場所を変えましょうよ。」と耳元に囁いて来るのです。逆らうとややこしくなるのでとりあえず付いて行くと、行き先はトイレ。もちろん「しばいて」すぐに退散!

休憩時間にトイレに行ったら、2人の浮浪者が横になっていて、「兄ちゃん、まさかここで小便するつもりとちゃうやろなー」と脅かされた事もあります。そういう恐い所で映画を見たものです。映画館内で痴漢をKOしたら、大勢の仲間に囲まれて、警官に救助されたこともありました。

勿論全国の名画座と言われるような映画館がそんな場所ではありません。いや、もう今ではそういう映画館は無いと思います。地方に旅行して思わぬ映画を見つけてしまい、入った時はいつも快適でした。

僕が名画座を回っている間に、レンタルビデオ屋がタケノコのように出来始め、名画座は1軒づつ姿を消して行きました。