福島第一原発の事故以来、放射線がどの程度危険なものか、メディアで連日のように取り上げられている。
何ミリシーベルトまでなら浴びてよいのか、汚染された野菜や水道水を口にしてもいいのか。テレビに登場する専門家は「この程度なら大丈夫」と安全を強調することが多い。
曰く、低レベルの線量であれば、被ばくしても発がんの危険性はほとんど上がらない。
しかし、こういった話を聞いて気になるのは、発がんリスクの個人差が無視されていることである。
何ミリシーベルトで発がんリスクが何パーセント上昇する、というのは社会全体を見た統計的な数字である。がん患者がそのパーセントだけ増えるということで、平均的な発がん確率の話である。
放射線を浴びて、まさにこの自分ががんになる確率のことではない。
放射線以外の発がん刺激を考えると、体質的に放射線に弱い人と強い人がいてもおかしくない。そして、もし自分が弱い体質であれば、がんを発症する確率は統計的な数字よりもずっと高くなる。
例えば、喫煙は肺がんリスクを高めるが、ある人は毎日何本も吸うヘビースモーカーなのに肺がんにならず、ある人は一切吸わないのに副流煙でがんになってしまうことがある。
明らかに、喫煙という発がん刺激に対して、体質的に強い人と弱い人がいる。
さらに顕著な例として、色素性乾皮症(XP)という病気がある。
紫外線も発がん刺激の一つであるが、真夏の海水浴に行っても、ほとんどの人は皮膚がんにならない。しかし、XPの方は紫外線によるDNA損傷を修復する機構が弱く、少しの紫外線でも皮膚がんのリスクが高まってしまう。そのため、出来るだけ日光を浴びないという生活を送る必要がある。
社会全体で見ると、日常生活で浴びる程度の紫外線なら、皮膚がんになるリスクの上昇は微々たるもので、まったく安全と言ってもよい。しかし、XPの方にとっては、同じレベルの紫外線でもリスクは極めて高くなり、非常に危険である。
放射線もDNAを損傷するが、その修復機構の強さにも個人差がある。また、がん化した細胞を攻撃する免疫系の強さも人によって異なる。さらに、遺伝あるいは生活習慣から、もともとDNAの損傷程度が大きい人もいれば小さい人もいる。
従って、低線量の放射線、とくに内部被ばくによる発がんリスクが個人個人で異なるというのは、間違いなくあるはずなのだが、現在のところはっきりしているのは、小さな子供は弱いということだけである。
放射線感受性にどの程度の個人差があるのか、特定の生活習慣、特定の病気でとくに注意すべきものがあるのか、そういったことはほとんど分かっていないと思う。
そして勿論、自分や自分の家族がどういう体質なのかを知る術も、現在のところはない。
今回の日本のように、数千万の人が相当程度の放射線を浴びるのは史上初めての事態で、過去の事例から今後我々一人ひとりに何が起るかを推測するには、規模と多様性が大きすぎる。
そのため、政府や専門家が提示する「安全なライン」は、一つの参考意見として捉えた方がよいと思う。少なくとも、彼らが語っているのは社会全体の安全であって、テレビの前に居る「あなた」の安全ではない。
やはり「放射線は出来るだけ浴びない方がいいし、汚染された食物は出来るだけ食べない方がいい」ということが、多くの人にお勧めできる考え方である。
何ミリシーベルトまでなら浴びてよいのか、汚染された野菜や水道水を口にしてもいいのか。テレビに登場する専門家は「この程度なら大丈夫」と安全を強調することが多い。
曰く、低レベルの線量であれば、被ばくしても発がんの危険性はほとんど上がらない。
しかし、こういった話を聞いて気になるのは、発がんリスクの個人差が無視されていることである。
何ミリシーベルトで発がんリスクが何パーセント上昇する、というのは社会全体を見た統計的な数字である。がん患者がそのパーセントだけ増えるということで、平均的な発がん確率の話である。
放射線を浴びて、まさにこの自分ががんになる確率のことではない。
放射線以外の発がん刺激を考えると、体質的に放射線に弱い人と強い人がいてもおかしくない。そして、もし自分が弱い体質であれば、がんを発症する確率は統計的な数字よりもずっと高くなる。
例えば、喫煙は肺がんリスクを高めるが、ある人は毎日何本も吸うヘビースモーカーなのに肺がんにならず、ある人は一切吸わないのに副流煙でがんになってしまうことがある。
明らかに、喫煙という発がん刺激に対して、体質的に強い人と弱い人がいる。
さらに顕著な例として、色素性乾皮症(XP)という病気がある。
紫外線も発がん刺激の一つであるが、真夏の海水浴に行っても、ほとんどの人は皮膚がんにならない。しかし、XPの方は紫外線によるDNA損傷を修復する機構が弱く、少しの紫外線でも皮膚がんのリスクが高まってしまう。そのため、出来るだけ日光を浴びないという生活を送る必要がある。
社会全体で見ると、日常生活で浴びる程度の紫外線なら、皮膚がんになるリスクの上昇は微々たるもので、まったく安全と言ってもよい。しかし、XPの方にとっては、同じレベルの紫外線でもリスクは極めて高くなり、非常に危険である。
放射線もDNAを損傷するが、その修復機構の強さにも個人差がある。また、がん化した細胞を攻撃する免疫系の強さも人によって異なる。さらに、遺伝あるいは生活習慣から、もともとDNAの損傷程度が大きい人もいれば小さい人もいる。
従って、低線量の放射線、とくに内部被ばくによる発がんリスクが個人個人で異なるというのは、間違いなくあるはずなのだが、現在のところはっきりしているのは、小さな子供は弱いということだけである。
放射線感受性にどの程度の個人差があるのか、特定の生活習慣、特定の病気でとくに注意すべきものがあるのか、そういったことはほとんど分かっていないと思う。
そして勿論、自分や自分の家族がどういう体質なのかを知る術も、現在のところはない。
今回の日本のように、数千万の人が相当程度の放射線を浴びるのは史上初めての事態で、過去の事例から今後我々一人ひとりに何が起るかを推測するには、規模と多様性が大きすぎる。
そのため、政府や専門家が提示する「安全なライン」は、一つの参考意見として捉えた方がよいと思う。少なくとも、彼らが語っているのは社会全体の安全であって、テレビの前に居る「あなた」の安全ではない。
やはり「放射線は出来るだけ浴びない方がいいし、汚染された食物は出来るだけ食べない方がいい」ということが、多くの人にお勧めできる考え方である。