夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

イタリア料理は映画になる(その1)

2004年05月31日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
なんででしょう。
世の中に「なんたら料理」と名のつくものは数あれど、
イタリア料理ほど映画で取りあげられるものはないでしょう。
お料理を食べるシーンだけじゃなく、
店そのものが舞台となっちゃうのもイタリア料理です。
そして、なぜだか、邦題となるのは
トラットリアでもオステリアでもなく、リストランテ。

『シェフとギャルソン、リストランテの夜』は1996年のアメリカの作品。

1950年代、ニュージャージーのとある町に、イタリア移民の兄弟がリストランテを開く。
その名も“パラダイス”。
兄弟の名前がプリモとセコンドというところも笑ける。

兄プリモの料理は絶品で、死ぬほど旨い。
しかし、客はフツーのアメリカ人。スパゲティーと言えばミートボール。
リゾットを見て怪訝な顔をし、
「シーフードライスを頼んだはずなのに、海老も帆立も見えないわぁ」とのたまう。
ウケないリゾットをメニューから外そうというセコンドに、
「ほなら、ホットドッグでも食わせとけ」と怒るプリモ。

資金繰りに困った弟セコンドは、
通りの向かいの大繁盛店“パスカルの店”のオーナーに借金を申し込む。
パスカルは「金は貸せない」と断るが、
代わりに自分の知人である有名歌手ルイ・プリマを“パラダイス”の客として呼んでやると言う。

ルイ・プリマが来れば客も集まる。
その日を境に店を流行らせようと、セコンドは準備に走りまわる。
パスカルの口添えだとは知らないプリモも、
有名人がやってくると聞き、とびっきりのメニューを考えはじめる。

『ディナーラッシュ』(2001)が
流行店で流行の料理を食べようという、自称グルメの客だらけだったのに対し、
“パラダイス”の晩餐に訪れる人たちのただただ純粋に料理を楽しむ様子が観ていて幸せ。
世界でいちばん旨いものが詰まっているという包み焼き、
ティンパーノは死ぬまでに一度食べてみたいですね。

ラストで兄弟が朝食をとる姿を救いがないと見るか、
いや、まだまだ大丈夫と見るか。

パスカル役のイアン・ホルムは『ロード・オブ・ザ・リング』のビルボを演じた俳優さん。
『フロム・ヘル』(2001)では厳かな執事役、
『スウィート・ヒアアフター』(1997)では陰ある弁護士役、
『マイ・ビューティフル・ジョー』(2003)ではマヌケなマフィアのボスと、
なんでもこなす名優です。

原題は“Big Night”なのでした。

その2へ続く。

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『息子のまなざし』

2004年05月27日 | 映画(ま行)
『息子のまなざし』(原題:Le Fils)
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ,リュック・ダルデンヌ
出演:オリヴィエ・グルメ,モルガン・マリンヌ,イザベラ・スパール他

そんなカンヌで2002年度に主演男優賞を受賞したのがオリヴィエ・グルメです。
おそらく、過去の受賞者のなかでもっとも台詞の少ない役だったろうと言われています。
日本では去年公開、レンタルは開始になったばかり。

オリヴィエが演じるのは、職業訓練所の木工の教師(役名も同じくオリヴィエ)。
ある日、少年院から出てきた16歳のフランシスが訓練所にやってくる。
フランシスは木工クラスを希望するが、オリヴィエのクラスは手いっぱい。
フランシスは溶接クラスに回される。

しかし、フランシスのことが気になったオリヴィエは彼について調べる。
そして、やはり木工クラスで引き取ることにする。
オリヴィエの幼い息子は5年前に殺された。
実はその犯人がフランシスだったのだ。

余計なことはいっさい語られないので、
上記の事実が判明するまでにかなりの時間がかかります。

ただ、オリヴィエと妻が何か特別な事情で別れてしまったこと、
そのせいで心に深い傷を持っているであろうことなど、
観ている者にいろいろ推測させます。

10代半ばの少年に、自分の起こした事件の重みがわかるの?
加害者本人を目の前にした被害者の両親はどんな思いなの?
少年を見て半狂乱になるオリヴィエの妻。
少年に被害者の父である事実は伏せて自分のクラスに招き入れるも、
自分がどうしたいのかわからないオリヴィエ。

牛乳瓶の底のような眼鏡をかけたオリヴィエは
どんな目をしているのかも読み取れないし、
極端に無口だし、表情もありません。
それが私を苦しくして、「無表情」であることにこんなに心を衝かれたのは初めてでした。
無表情からこんなに伝わる気持ちもあるんだと。

畳み尺の持ち方、材木の運び方、
長い木を持ったままハシゴを登る練習など、
訓練所の木工クラスの様子にも興味大。

余韻がいつまでも続く作品です。

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カンヌです。

2004年05月25日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
カンヌ国際映画祭で演技初体験の日本人少年が主演男優賞に輝き、
国内外から取材依頼が殺到しているそうな。
「柳楽優弥」って、カッコイイ名前だし、画数多いし、
有名になるべくしてついたような名前やなぁ。

……そういう私の名前は結婚前も後も
「姓名通して小学生でも書ける」のがウリのいたってシンプルな名前です。

ところで、その彼が出演した『誰も知らない』は是枝裕和監督の作品。
天国の入り口にある施設で、自分の人生でいちばんの思い出を選んでビデオにするという、
『ワンダフルライフ』(1999)の監督さんです。

そして、最高賞であるパルムドールを受賞したのはマイケル・ムーア監督の『華氏911』。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)で
アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、「ブッシュよ、恥を知れ!」と叫んだあのお方です。
今回の作品はまたまたブッシュを批判しているため、ディズニーが配給を拒否してます。
ミラマックスが配給する予定だったのですが、ミラマックスはディズニーの傘下にいるせいで、
ディズニーが「アカン」と言うたものは配給できない決まりが。
マニアックな作品を多数この世に送り出してきたミラマックスですが、
親のディズニーの言うことは聞かないとしゃあないのですね。
そら、ビンラディンの映画をディズニーが配給するのはあまりにイメージがちがいすぎるか。

ここでディズニーがミラマックスに「配給してもええよ」と言えば、
ディズニー、すごい!と言いたいところですが、やっぱりイメージって大事?
どうやらよその会社に権利を売ることになりそうです。

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『サンダーパンツ!』

2004年05月21日 | 映画(さ行)
『サンダーパンツ!』(原題:Thunderpants)
監督:ピーター・ヒューイット
出演:ルパート・グリント,ブルース・クック,ポール・ジアマッティ,
   サイモン・キャロウ,ネッド・ビーティ他

キャッチ・コピーは
「NASA公認?スペースBoo Booムービー誕生! オナラが地球を救う」。

11歳になるパトリックは、生まれたときからオナラがとまらない。
よちよち歩きの彼から放たれるオナラの威力は想像を絶し、
父親は吹き飛ばされて負傷。
一度目は我慢した父も、度重なる怪我に家出。
それがもとで、母や姉もパトリックを疎ましく思う。

どこへ行っても「屁こき虫」と嘲笑われる日々だったが、
嗅覚異常で匂いのわからないアラン(『ハリー・ポッター』のロン役)と出会う。
意気投合するアランとパトリック。

アランは小学生でありながら天才発明家。
パトリックのコンプレックスを解消すべく、
オナラを外に漏らさない「サンダーパンツ」を発明する。
幸せな思いに浸るパトリック。

しかし、アランの頭脳に目をつけた米国政府の役人が
アランをスカウトにやってくる。
離ればなれになるふたり。

そんなとき、パトリックのオナラが
素晴らしい高音を奏でることに気づいたオペラ歌手が
自分の出せない音をオナラでカバーさせようと目論む。
「各国巡業につきあえ」と言うオペラ歌手に
パトリックはどこかでアランに会えるかもと喜んで引き受けるのだが……。

自分には何の取り柄もないと落ち込むパトリックが
止まらぬオナラの原因を調べにいった病院で
「胃がふたつある。神は無益な才能を与えられたものだ」と医師から告げられ、
「才能」という言葉に敏感に反応します。
「無益な」の部分はすっ飛ばし、
自分にも才能があったんだと喜ぶシーンは感動すら覚えたりして。

最初から最後まで屁こきまくりの映画だけど、
自分の短所を長所に変えて、挙げ句は地球まで救っちゃったら
これは文部省太鼓判でしょ。

『アルマゲドン』(1998)や『マトリックス』(1999)を彷彿とさせるシーンもあって、
笑いのツボ、押さえてます。

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『ほえる犬は噛まない』

2004年05月17日 | 映画(は行)
『ほえる犬は噛まない』(英題:Barking Dogs Never Bite)
監督:ポン・ジュノ
出演:ペ・ドゥナ,イ・ソンジェ,コ・スヒ他

純愛ドラマが大好きな韓国の人たちの間では
評判イマイチだった変なコメディ。

大学の非常勤講師ユンジュは世渡り下手。
教授昇進の機会も逃し、妊娠中の妻の収入に頼る毎日。
妻はそんな夫を見下している。

団地ではペットを飼うことは禁止されている。
しかし、暗黙の了解を得ているのが現状。
鳴き声にイライラが募るユンジュは、
犬を見つけて地下室の物置に監禁する。

翌日、団地内の張り紙に目をやると、
「愛犬が行方不明。声帯手術を施しているため、吠えない」の文字が。
犬違いだったことに気づいたユンジュは
慌てて地下室に走るが、なぜか犬は消えていた。

後日、他のうるさい犬を発見したユンジュは
犬を捕獲、マンションの屋上から放り投げる。
その現場を向かいの建物から目撃したのが、管理事務所に勤めるヒョンナム。
犯人追跡を試みるが、あと一歩のところで取り逃がす。

犬を処分してほくそ笑むユンジュだったが、
ある日、妻が犬を連れて帰宅する。
夫の意見などおかまいなしの妻は、犬を飼うことに決めたと言い放つ。

妻の言いつけで犬と散歩に出かけるが、ユンジュは犬を見失う。
開き直り気味の夫に対し、
「あれがどんな犬だかわかっているの!?」と号泣する妻。
妻の説明を聞いて愕然としたユンジュは
犬を見つけるため、雨のなかを歩き始める。

そんなユンジュの姿を見たヒョンナム。
彼が犬殺しの犯人だと気づかないヒョンナムは、
ユンジュを放っておけずに犬探しを手伝うことに。

団地の住人がスゴい。
犬を殺しては鍋料理を作る管理人。
その管理人の料理を狙う謎の男。
強盗を捕まえて有名になるのが夢だったヒョンナムは天然ボケ。
その悪友チャンミはプロレスラー並みの体型で、頼り甲斐抜群。

原題は『フランダースの犬』なのであります。
邦題は英語タイトル“Barking Dogs Never Bite”を直訳したもの。
「臆病者は自分を強く見せようとして怒鳴るが、
そんな奴に限って実は怖くない」という諺。

ジャズ、ロック、ヘヴィメタ調にアレンジされた「フランダースの犬」がかっこいい。
でも、犬好きにはお薦めできません。泣いちゃうかも。

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