夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『幸せのちから』

2007年01月30日 | 映画(さ行)
『幸せのちから』(原題:The Pursuit of Happyness)
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ウィル・スミス,ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス他

ロードショーにて。
実話だから感動が大きいと言わんばかりの宣伝は嫌いだと書いたことがあります。
でも、みんな好きなんですよね、「実話に基づく」が。
うちの近所の映画館が満員御礼って、きっと初めて。
全財産21ドルから立ち上がった父子の、実話に基づく本作は
「この手は、離さない」のキャッチコピーからして泣けそう。

1981年、サンフランシスコ。
クリスは骨密度の測定器のセールスマン。
儲かると信じて私財を投じたこの器械は、
レントゲンより精度が高いものの、価格もレントゲンの2倍。
妻子を養うにはひと月に2台は売りたいところだが、
思うように買い手は見つからない。

今日も売れない器械を抱えて歩いていると、
いいスーツを着ていい車に乗った男性に出くわす。
思わず「成功の秘訣は?」と聞くと、「株だよ」。
飛び込んだ証券会社の事務所で、研修生を募集していることを知る。
多数の応募者の中から研修を受けられるのは20名。
半年間の無給の研修後、正社員として採用されるのはたった1名。
クリスはそれに賭けることにする。

しかし、家賃も払えない生活に耐えかねた妻のリンダは
5歳の息子クリストファーとともに家を出る。
何があっても息子は自分が育てたいと、
クリスはリンダに申し入れ、クリストファーを連れ戻す。
アパートより安上がりなモーテルに移るが、
そこの宿代も払えずに追い出され、
父子はホームレス生活を続けながらチャンスを掴もうとする。

父子を演じるのが実の親子というのも話題です。
宣伝に躍らされて期待して観ると「あれ~?」。
貧困生活からの脱出をもっとハリウッド流に押しまくって
描いているのかと思ったら、なんだか地味。
ルービックキューブで証券会社の幹部の目に留まるくだりは
ちょうどそんなもの、流行ったなぁと懐かしくなりますが、
駅のトイレや電車内で夜を過ごし、日々の研修に耐える様子はひたすら地味。
息子を連れて顧客獲得に行くのは反則かなという気も。
でも、息子だけは絶対に失いたくない、
そばにいなきゃ駄目なんだという思いは伝わってきます。

最後のクリストファーの表情は、
これだけを見るためにこの映画を観たような気にさせられます。
原題は「幸せの追求」の意。
幸せは追い求めるもので、得られないものなのか。いかが?

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『日本以外全部沈没』

2007年01月27日 | 映画(な行)
『日本以外全部沈没』
監督:河崎実
出演:小橋賢児,柏原収史,松尾政寿,土肥美緒,寺田農,村野武範,藤岡弘、,
   ブレイク・クロフォード,キラ・ライチェブスカヤ,デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ他

小松左京の『日本沈没』をパロった筒井康隆原作の小説を映画化。
人をナメているとしか思えないこのタイトルに、
企画があの叶井俊太郎氏とくれば、そそられるに決まってます。

2011年、天変地異が起こる。
まずアメリカ大陸が海の底へと沈む。
続いて中国大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸が沈没。
数週間後、日本以外の陸地という陸地がすべて沈没。
難民となった外国人が世界中から日本へと押し寄せる。

アカデミー賞俳優もやってくるが、ちやほやされたのは最初だけ。
これだけ外国人が溢れては、外国人タレントの需要が下がり、
一生遊んで暮らせるほどあったはずのドル紙幣も今や価値なし。
ホームレス生活を余儀なくされる。
その妻の元人気女優は体を売って日銭を稼ぐが、
客からもらった「うまい棒」をめぐり、夫と大喧嘩。

彼女と同じく、外国人女性たちは街角に立って客を取るか、
日本人家庭で家政婦として働くしか生きるすべがない。
生活が保障されているのは日本人だけ。
各国の大統領や首相までも、日本の首相に媚びへつらうしかない。
どんどん傲慢になってゆく日本人に、外国人たちの反感は増す一方で……。

ヒドイです。原作者の筒井氏も特別出演されていますが、
いいんですか、こんなヒドイ作品に仕上がってて。
ものすごい低予算、短期間で撮られたそうですが、
だからってこんな作品を世に出してエエんかいなと思うぐらい、ヒドイ。
アカデミー賞俳優が過去の作品について
「あの作品に出演したのは人生の汚点だ」という台詞がありますが、
本作はまちがいなく出演者の汚点になると思われます。

ちょっとだけ興味を引かれたのは、寺田農演じる田所博士。
これはスタンリー・キューブリック監督作、
『博士の異常な愛情』(1964)のパロディーでしょうが、
これまた中途半端にパロっていて、単なるイカレたエロ親父となっています。

結局、本作で素晴らしかったのはタイトルだけ。
そのタイトルに騙されました。
久々に唖然呆然のシロモノでしたが、騙されたなぁと思うとき、
騙されてしまう自分を好きになれるのが超駄作のいいところ?

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『愛の流刑地』と『ママが泣いた日』

2007年01月19日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
『愛の流刑地』を観た翌日、
レンタルDVDで観た映画が『ママが泣いた日』です。

『ザ・コンテンダー』(2000)で、
副大統領の指名を受けたために、
男性議員らから嫌がらせを受ける女性議員を果敢に演じた
ジョーン・アレンが主人公。

夫と4人の娘に囲まれ、幸せに暮らしていたはずのテリー。
ある日、夫が失踪。日を同じくして、
夫の勤務先のスウェーデン人秘書が退社。
駆け落ちとしか思えず、絶望の淵に立たされたテリーは、
以来、とことん嫌な女になります。
飲んだくれては娘たちに八つ当たりし、
さすがの娘たちも母親に愛想を尽かし始めます。

唯一、テリーに優しい眼差しを向け続けたのは、
ケヴィン・コスナー演じる隣人デニー。
彼は元メジャーリーガーで、今はただの酔っぱらい。
過去の栄光にすがり、サインボールで稼いでいますが、
テリーの良き理解者となります。

こうして書くと、温かい方向に進みそうですが、
実はとてつもなく暗いエンディングで救われません。
ドロドロして暗そうな『愛の流刑地』のほうが
本当は遥かに幸せなエンディングに思えます。

2作に共通するのはこんな台詞。
『愛の流刑地』では、冬香が菊治にこう尋ねます。
「あなたは死ねますか、私のために」。
菊治は首を振り、こう言います。
「あなたに出会うまでの僕は死んでいた。
 あなたが生き返らせてくれた」。
『ママが泣いた日』では、デニーがテリーにこう言います。
「君と一緒にいると、人生これからだっていう気がするんだ」。

『愛の流刑地』では、表情を読み取る間もなく
登場人物たちの胸の内をすべて
台詞として喋らせてしまうと書きました。
『ママが泣いた日』で好きだったのは、喋らせないこんなシーン。
末娘のポパイが、片想い中のゴードン、デニーとともに、
ゴードンの父親のバンジージャンプを見に行きます。
デニーがゴードンに「君はしないのか?」と尋ねると、
ゴードンの父親が「息子はしないんだ。臆病だから」。
そしてデニーに「やってみないか?」というゴードンの父親に
デニーがひと言、「いや、やめとく」。

これ以上、何の説明もありません。
しかし、その場に居合わせたポパイとゴードンの表情を見れば、
ゴードンひとりを臆病者にしなかったデニーのひと言が
嬉しくて仕方なかったことがわかります。

「言わなわからん」が私の信条ですが、
すべてを言わない映画のこんなシーンは大好きですね。

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『愛の流刑地』

2007年01月16日 | 映画(あ行)
『愛の流刑地』
監督:鶴橋康夫
出演:豊川悦司,寺島しのぶ,長谷川京子,津川雅彦他

封切り日に観てきました。
ご存じ、渡辺淳一の同名ベストセラー。
日本経済新聞に連載中には、
ビジネス紙にはふさわしくない性描写で物議を醸した不倫愛のドラマです。

ちなみに、私には「浮気」という考えはありません。
浮気はできない性分ですので、浮気はあり得ない。
だから、もし好きになることがあれば、
そのときは「浮気」じゃなくて「本気」です。

かつては恋愛小説の人気作家だった菊治、45歳。
最近は新作を発表することもできず、くすぶっている。
そんなとき、取材先の京都で、元編集担当者から
彼の熱烈なファンだという女性を紹介される。
彼女は3人の子を持つ人妻、冬香、32歳。

出会ったときから強烈に惹かれ合うふたり。
わずか2時間ほどの逢瀬のために
菊治が新幹線で冬香のもとへ駆けつける日々が続く。

いつの頃からか、冬香が「首を絞めて殺して」と
情事の途中に口走るようになる。
そして、花火大会の日、菊治のもと訪ねた冬香に
「愛しているなら殺して」と懇願された菊治は
絶頂感のなか、本当に彼女を絞め殺してしまう。

物語は事件の起こった場面から始まります。
女はなぜ死を望み、男はなぜ殺したか。
それが法廷で解き明かされていきます。

非常にわかりやすい作品です。
私は説明しすぎない作品のほうが好きなので、
表情を読み取る間もないくらい、
登場人物が胸の内を話してしまうのはどうよ、という気も。
また、妻の不倫は夫の多忙が原因と言いたげな夫の描き方も不満。

でも、いい場面と台詞がいっぱいあります。
菊治(豊川悦司)の「死にたくなるほど人を愛したことがありますか?」。
冬香(寺島しのぶ)の母を演じる、実母でもある富司純子には降参。
彼女の証言後、彼女に向かって菊治が土下座する場面は圧巻です。
バーのママ(余貴美子)の「女には2種類ある」。
頭と心で十分愛せば、女にはそれが伝わると。
検事の美幸(長谷川京子)の「最初の女になれないならせめて最後の女に」。
菊治が「情事の果てに殺された愚かな女だとは思わないでほしい」と訴える場面。
白から変わる冬香の下着の色も。

トヨエツが、「この映画を観た人が、不倫だとかどうとかいうことではなく、
恋っていいものだと思ってくれたら」と話していました。
ふたりで会っているときの表情を見れば、
私にはそう思えます。恋っていいもの。

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『ラッキー・ガール』

2007年01月12日 | 映画(ら行)
『ラッキー・ガール』(原題:Just My Luck)
監督:ドナルド・ペトリ
出演:リンジー・ローハン,クリス・パイン,フェイゾン・ラヴ,
   サマイア・アームストロング,ブリー・ターナー他

米国のファッション評論家ブラックウェル氏が
毎年、独断と偏見で選ぶ女性有名人ワーストドレッサーに
見事ベストテン入りしてしまったリンジー・ローハン主演。

アシュリーは生まれながらのツイてる女。
土砂降りの雨も彼女が一歩外に出た途端にやみ、
タクシーを拾えば信号はすべて青。
スクラッチくじを削れば必ず当たる。
この幸運を味方にして人生を送ってきた。

ある朝、アシュリーの勤務先の大手広告会社で、
業界のVIP、フィリップス氏を招いて
プレゼンテーションがおこなわれる。
ところが、社長をはじめ、プレゼン出席予定者は全員遅刻。
居合わせたアシュリーがとっさに出した案が
フィリップス氏に気に入られ、採用される。
社長からはおおいに褒められ昇格。
プライベートでもNBAのオーナーの息子からデートに誘われ、
まさに怖いものなしのバラ色の日々。

そんな彼女に異変が起こる。
彼女が担当したフィリップス氏主催の仮面パーティーで
ダンスした相手は運に見放された男、ジェイク。
彼はボウリング場で雑用係をしながら無名のバンドの売り込み中。
仮面の下の顔もわからないまま、惹かれあったふたりはキス。
その瞬間、アシュリーとジェイクの運が入れ替わる。

事態に気づいたアシュリーは自分の運を取り戻そうと躍起に。
友人の協力を得て、あのときのキスの相手を探し始めるのだが……。

リンジー・ローハンは売れっ子ですが、
本作はビデオスルーになったのも納得の駄作。
彼女にはスーツを着こなすキャリアウーマンよりも
ハチャメチャな10代のほうが断然似合います。
彼女を見るなら絶対『フォーチュン・クッキー』(2003)。

だけど、一旦ジェイクから運を取り戻したアシュリーが
好きになってしまったジェイクが不運に見舞われる様子に
いてもたってもいられなくなる姿はキュート。
彼が自分のそばにいてくれるだけで
この世のどんなことより幸運なんだと知るときは
やっぱり観ているこちらも幸せな気持ちになります。

ジェイクが売り込む無名のバンドとして
英国で人気のポップス系バンド、マクフライが出演。ファン必見。
不運に慣れっこのジェイクが常備している、
困ったときの七つ道具みたいなものは参考になるかも。
駄作といえども侮るなかれ。

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