夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『バースデーカード』

2016年10月31日 | 映画(は行)
『バースデーカード』
監督:吉田康弘
出演:橋本愛,ユースケ・サンタマリア,須賀健太,中村蒼,木村多江,安藤玉恵,
   黒田大輔,清水伸,田中圭,谷原章介,洞口依子,宮崎あおい他

月曜日にTOHOシネマズ西宮にてハシゴ。前述の『金メダル男』の後に。

監督は『旅立ちの島唄 十五の春』(2012)の吉田康弘。
TV版『びったれ!!!』(2015)の脚本家でもあります。

鈴木家は、父親の宗一郎(ユースケ・サンタマリア)、母親の芳恵(宮崎あおい)、
長女の紀子(篠川桃音)、長男の正男(星流)の4人家族。
小学生の紀子はすぐに泣くせいで意地悪な同級生から時折いじめられるが、
家に帰れば明るく優しい両親とやんちゃな弟に囲まれている。

あるとき芳恵が入院。その様子から母の余命がわずかであると知る紀子。
しかし芳恵は笑顔を絶やすことなく、紀子と正男が20歳になるまで、
毎年誕生日には必ずバースデーカードを送ると約束する。
そして、紀子の10歳の誕生日が4人で過ごす最後の日となる。

11歳の誕生日、約束どおり、芳恵からバースデーカードが届く。
以来、毎年届くカードに母の文字で綴られるさまざまなこと。
お菓子の作り方が記されていた年には、それを作って学校に持参。
おかげでたちまちクラスの人気者に。
中学生になれば、男の子とのつきあい方まで書かれていてビックリ。
芳恵の頼もしいアドバイスに紀子は励まされながら成長してゆく。

17歳になった紀子(橋本愛)に宛てたバースデーカードには、
芳恵の故郷である小豆島へ行くようにと書かれていた。
少女時代の芳恵の親友だった石井沙織(木村多江)を訪ねるのだが……。

ものすごく可愛いと思うけど、いつも同じような役柄と笑顔に
ほとほと飽きてきていた宮崎あおい。
これもまた同じかぁと思わずにはいられない役なのですが、
『怒り』がとても良かったせいで、新たな目で見ることができました。

しかし本作の主役はあくまでも彼女以外の人たち。
紀子役の橋本愛も良ければ、制服以降の正男を演じる須賀健太がまたイイ。
亡くなった母親のことを決して忘れることなく、
でもいないものは仕方ないとばかりに超前向き。
子どもたちを必死に育てる宗一郎役のユースケ・サンタマリアも、
こんな年齢の子どもがいる父親役が似合うようになりました。

前述の『金メダル男』で度肝を抜く酔っぱらいぶりを披露してくれた木村多江は、
本作でもベロベロに酔っぱらっています。
まさか2本ハシゴして、2本とも酔っぱらいの彼女を見ることになるとは。

ピンクレディーのくだりのみならず、気づけばかなり泣いていました。
母親の不在に悲しみ苦しみながら、一歩ずつ進んでゆく娘。
ユースケ・サンタマリアと須賀健太の存在が笑いももたらし、良いさじ加減です。
泣きたい人、どうぞ。

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『金メダル男』

2016年10月30日 | 映画(か行)
『金メダル男』
監督:内村光良
出演:内村光良,知念侑李,木村多江,ムロツヨシ,土屋太鳳,
   平泉成,宮崎美子,笑福亭鶴瓶,高嶋政宏,温水洋一他

ダンナ国内出張につき、数日間は終業後に映画三昧。
しかも上手い具合にTOHOシネマズのシネマイレージキャンペーンと重なり、
1週間ずっと1,100円で映画が観られます。
伊丹でいい作品がかかっていれば、行き来の負担も少なくて楽なのですが、
こういうときに限って伊丹ではハシゴが叶わず、
西宮まで行かなければ終業後に2本観るのは無理。

まずは月曜日、無謀を承知で西宮で18:00上映開始の本作を予約。
幸い道はわりと空いていましたが、予告編には到底まにあわず、
本編開始後1分ほど経過したとおぼしきときにすべり込み。
映画は何がなんでも最初から観たいほうですが、
特に観たかった作品ではないので悔しさもあまりなく。

これが監督3作目となるウッチャンこと内村光良
5年前に上演した自身作・主演の一人舞台『東京オリンピック生まれの男』を原案に、
監督・脚本・主演を務めたオリジナル作品です。

1964(昭和39)年、東京オリンピックの年に長野県塩尻市に生まれた秋田泉一(大西利空)。
小学校のとき、運動会の徒競走で一等賞に輝いたのをきっかけに、
あらゆるジャンルで一等賞を獲ることが彼の生き甲斐となる。
水泳、剣道、卓球、クイズ、工作、習字、絵画、釣り、火起こしにいたるまで、
どんな大会でも一等賞を獲り、“塩尻の金メダル男”と呼ばれるように。

ところが中学校に入ると、神童として注目されたのは束の間。
対戦相手の女子が気になりはじめるとどれもこれも惨敗。凡人と化す。

高校に入学した泉一(知念侑李)は、金メダル男の復活を誓うが空回り。
同級生の竹岡啓二(ささの友間)からバスケ部に誘われ、
仲間がいる喜びをはじめて味わうが、やがてバスケ部のお荷物となり退部。
チームプレイは自分には不向きだと、ひとりで表現部を発足。
一時はもてはやされる存在になったものの、それも下火に。

高校を卒業し、一念発起して上京した泉一。
ある劇団の看板俳優になるも、座長の村田俊太郎(ムロツヨシ)が突然トンズラ。
いくら月日が経とうとも一等賞の夢に取り憑かれたままの泉一(内村光良)は、
単独で海に出ると世界一周を目指すのだが……。

そもそもウッチャンナンチャンの芸を見ても私はさほど笑えません。
本作もやたらゲラゲラ笑っているおばちゃん二人連れはいたけれど、
どこがそんなに面白いのかといった感じ。

ただ、これだけ交友関係の広い人だから、カメオ的に出演している顔ぶれが豪華。
その出方がところどころものすごく可笑しい。
「将来何になりたいの」と泉一に尋ねる小学校教師に大泉洋
剣道の対戦相手の女子に上白石萌音。表現部の後輩に土屋太鳳
表現部の発足をいとも簡単に許可する校長先生に竹中直人
泉一に精神科に行くことを勧める教師に田中直樹
泉一が描いた絵をとんでもない形でコンクールに応募する教師に長澤まさみ
その名も“なんば”の江戸前寿司屋の大将に笑福亭鶴瓶、弟子に柄本時生
と、挙げるとキリがないくらい。あ、両親役は平泉成宮崎美子です。

カメオ出演陣にたまに笑わされながら後半へ突入。
相変わらずイマイチ笑えないなぁと思っていましたが、
仕事で泉一と行動を共にするようになる亀谷頼子役の木村多江が登場してから激変。
木村多江が面白すぎる。この人、やっぱりいい女優さんです。

インストゥルメンタルで流れる曲も同年代ならば楽しい。
沢田研二、クリスタル・キング、山口百恵、爆風スランプ、ミスチルと、
時代の変化に合わせて流れる曲も変わってゆきます。

ひとつのことをきわめるのがいいか、
いろんなことで一等賞を目指すのがいいか。
人の生き方はそれぞれだけど、どっちもあっていい。

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『イエスタデイ』

2016年10月29日 | 映画(あ行)
『イエスタデイ』(原題:Beatles)
監督:ペーテル・フリント
出演:ルイース・ウィリアムズ,ホーヴァルド・ヤクヴィッツ,
   オーレ・ニコライ・ヨルゲンセン,スサンネ・ブーシェ他

テアトル梅田で『奇蹟がくれた数式』を観たあと、シネ・リーブル梅田へ移動。

ビートルズに憧れる少年たちを描いたノルウェーの作品。原題はその名も“Beatles”。
最近、バンドを結成するという映画が多いなぁと思っていたら、
これはそうでもなく、ビートルズが小道具程度の青春ものでした。

1960年代後半、ノルウェーのオスロ
16歳のキム、セブ、グンナー、オラは同じ高校にかよう男子で悪友。
セブの父親は仕事柄海外に行くことが多く、
帰国時にはビートルズのレコードを土産に持ち帰ってくれる。
それを聴いた4人は衝撃を受ける。こんな音楽があるなんて。

さっそくバンドを結成することにした4人は、夏休みに入る日、
各々練習に励むことを誓って解散する。
しかし思うように練習ははかどらない。
俺たちはいつでも一緒、秘密はなしだぜと言っておきながら、隠し事いろいろ。

暇を持てあましていたキムは、さして興味のない映画館通い。
その日となりに座った見知らぬ少女から手を握られ、恋に落ちる。
また会えることを期待して映画館に日参するが、ちっとも彼女は現れない。
想いを募らせるあまり、ラブレターを綴りはじめる。
ニッキーという名前以外はわからないから、書いても出しようがないのに。

セブは両親の不仲が気になって落ち着かない。
グンナーは商店を経営する父から配達を頼まれ、行った先で熟女に誘惑される。
どもり癖のあるオラは、なぜか自分にかまってくる同級生といい関係に。

そうこうしているうちに夏休みが終わり、いつもの日々が戻ってくる。
ところがニッキーに再会できなかった今、
キムは転校生の美少女セシリアのことが気になって仕方ない。
校外で会えば親しげに話してくれるのに、
校内で会うときのセシリアはまるで自分を空気のように扱い……。

4人ともキャラがそれぞれに異なっていてカワイイ。
バカなことをして大笑い、女の子に振りまわされて悩み涙する。
そんな彼らがとても愛おしい。

バンドに明け暮れる青春ものとしては『シング・ストリート 未来へのうた』がイチ押しですが、
音楽は二の次、だけど女の子に気持ちを伝える最終兵器が音楽の本作も捨てがたい。
甘い話ばかりではなく、当時の反アメリカ運動の様子なども盛り込まれ、
時代を知る作品としても○。オススメです。

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『奇蹟がくれた数式』

2016年10月28日 | 映画(か行)
『奇蹟がくれた数式』(原題:The Man Who Knew Infinity)
監督:マシュー・ブラウン
出演:デヴ・パテル,ジェレミー・アイアンズ,デヴィカ・ビセ,スティーヴン・フライ,
   トビー・ジョーンズ,ジェレミー・ノーサム,ケヴィン・マクナリー他

日曜日、テアトル系列のテアトル梅田とシネ・リーブル梅田をハシゴ。
まずはテアトル梅田で気になっていた本作を。実話に基づく。

インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャン。
1887年、南インド・タミルナードゥ州で極貧のバラモン階級家庭に生まれた彼は、
十分な教育を受けていないにもかかわらず、数学に特異な力を見せる。

彼の頭の中には数式が降ってくる。
それを書きとめたノートをマドラス中の大学に持ち込み、雇ってほしいと懇願するが、
みすぼらしい格好をした若者のことなど誰も相手にしてくれない。
結婚したばかりの妻ジャーナキーを養っていかなければならないのに。

仕方なく港湾事務所に職を求めたところ、インド人上司が彼のノートに目を留める。
上司はラマヌジャンに仕事を指示するかたわら、
彼の数学の才能を埋もれさせたままではいけないと、イギリス人上司に直訴。
ラマヌジャンのノートの抜萃と手紙をイギリスの著名な学者たちに送る。

ほとんどが黙殺するなか、ただひとりだけ、驚き動揺した学者がいた。
名門ケンブリッジ大学トリニティカレッジのG・H・ハーディ教授は、
同僚のジョン・リトルウッドとともにラマヌジャンをすぐさま呼び寄せることに決める。

こうして妻をインドに残し、単身渡英したラマヌジャンだったが、
植民地出で学歴のない彼のことを色眼鏡で見る人がほとんど。
しかも直感で定理や公式がひらめく彼には、証明することの必要性が理解できず、
素晴らしい公式も証明できなければ人から認められないだと解くのにハーディは一苦労。

菜食主義者のラマヌジャンは大学の食堂では口にできないものばかり。
ろくに食べられず、買い物に出れば通りかかったイギリス人に殴られ、
かといって無愛想なハーディに相談することもできない。
次第に孤独と体調不良に苛まれてゆくラマヌジャンだったが……。

主役はデヴ・パテル演じるラマヌジャンのはずなのですが、
描かれるインドは通り一遍のもので、ちと残念。
美しい妻と、嫁をいびる姑の図もあまりいただけません。

対するイギリスは生き生きと描かれていて、役者たちが本当に素晴らしい。
このところ主演作が目白押し、売れっ子のアラ古稀ジェレミー・アイアンズがハーディ役。
優しい性格の持ち主リトルウッド役にはトビー・ジョーンズ
そのほか、ジェレミー・ノーサムケヴィン・マクナリーが同僚として出演。
ここに挙げたのは、できる者はできると認める柔らかい頭の持ち主役。
どんな時代も、どれだけ差別主義がはびこっていても、良心を持つ人はきっといる。
類い希なる知性は、金持ちから出るとは限らない。

タクシーのナンバー「1729」についての逸話が楽しい。
しょうもない数字のタクシーだったと言うハーディに、
「そんなことはありません」と応じたラマヌジャン。
「2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です」。
こんなふうに数字のことを考えられるのはとても楽しそうだけれど、
どうにもこうにも文系アタマの私は、数学者の頭の中が信じられません。(^^;

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『われらが背きし者』

2016年10月27日 | 映画(わ行)
『われらが背きし者』(原題:Our Kind of Traitor)
監督:スザンナ・ホワイト
出演:ユアン・マクレガー,ステラン・スカルスガルド,ダミアン・ルイス,
   ナオミ・ハリス,ジェレミー・ノーサム,ハリド・アブダラ他

前述の『シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース』
大阪ステーションシティシネマで観終わったのが10:50。
いつもはなかなか来ないエレベーターがラッキーなことにすぐに来て階下へ。
地下鉄御堂筋線梅田駅に小走りで向かい、なんばまで。
TOHOシネマズなんばにて11:25上映開始の本作に余裕で間に合いました。

原作は2010年(日本では2012年)に刊行されたジョン・ル・カレの同名ベストセラー。
ル・カレは1931年生まれですから、御年85歳。
1961年のデビュー以来ずっと、長くとも数年おきには作品を発表しています。
しかもどれもそこそこ以上に評価が高い。
ル・カレに駄作なしということでしょう。これってすごくないですか。

そしてル・カレ作品が映画化されると、客席に“おひとりさま”がやたらと目立つ。
この日もオンライン座席予約しようとしたら、
中央に通路のあるやや小さめのシアターで、通路寄りの端っこほぼ全席予約済み。
端っこを取り損ねた客を見ても、おひとりさま率90%以上(笑)。
ひとりでゆっくり観て余韻に浸りたい、そんな気分にさせられるのかもしれません。
ちなみに男性が圧倒的に多いんです。男心にグッと来るにちがいない。

英国人の大学教授ペリーは、自らの浮気が原因で妻ゲイルとの仲がぎこちない。
関係修復を図るため、休暇を取ってモロッコへとやってくる。
レストランでふたり、ゆったり優雅な食事をするはずが、
弁護士で高給取りのゲイルに仕事の電話が入り、ペリーはひとり取り残される。

ぽつねんと座るペリーに声をかけてきたのが、別卓の客でロシア人のディマ。
見るからに羽振りのよさそうなディマから一緒に飲もうと誘われ、同席する。
翌日、自宅で開くパーティに招かれて断れずに出席すると、
ディマから思いも寄らぬ相談を持ちかけられる。

ディマはロシアンマフィア資金洗浄を担当しているらしい。
組織の幹部とは長らくいい関係を築いてきたが、
新しくボスとなったプリンスは自分が儲けることしか考えていない。
プリンスの儲けのじゃまになる者は即消され、次はディマがその命を狙われている。
そこでディマは自分と家族の安全のために英国への亡命を希望。
組織の情報が入ったUSBをMI6に届ける役目をペリーに頼みたいと言うのだ。

ゲイルに話せばきっと反対されるだろう。
ペリー自身も危険なことに首を突っ込みたくはないが、ディマの家族のことが気にかかる。
戸惑いつつも役目を引き受けたペリーがMI6に接触を試みたところ、
空港へやってきたMI6のヘクターとその助手ルークは半信半疑。
しかしUSBを精査した結果、これはもの凄いネタだと知る。
これでペリーの御役御免と思いきや、ディマはその後もMI6との面会にペリーの同席を望み……。

シビレました。
ペリー役のユアン・マクレガーは年を取ってさらに色気を増しています。
そもそもが浮気で妻を泣かせている男の役なわけで、その辺りも含めると、
同じくル・カレ原作の『裏切りのサーカス』(2011)のほうがずっと男くさい。

が、どちらかといえば軟弱なペリーが必死でディマの家族を助けようとする姿にグッ。
ステラン・スカルスガルド演じるそのディマも、ただのオッサンのはずが、
自分の家族のみならず、プリンスのせいで孤児になった双子のために命を張る。
もはや家族以外は誰のことも信じられなくなっていたディマが、
会ってまもないペリーのことをなぜ信じる気になったのかなど、
シリアスな中でもウィットに富んだ会話がとても楽しい。
ゲイル役のナオミ・ハリスの脚は美しすぎて目が釘付けに。

ル・カレですから、最後は万事ハッピーエンドとは行きません。
そこがまた男気にあふれていて泣けます。ニヤリとできるオチもいい。
もう1回観たいかも。

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