夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ボックス!』

2010年05月30日 | 映画(は行)
『ボックス!』
監督:李闘士男
出演:市原隼人,高良健吾,谷村美月,清水美沙,宝生舞他

前述の『グリーン・ゾーン』とハシゴ。

『探偵!ナイトスクープ』の放送作家、百田尚樹による同名小説を
『デトロイト・メタル・シティ』(2008)の監督が映画化。
監督のお名前は、ボクシング好きのお父さんがお付けになった本名だそうな。
そんなわけで、ボクシングのお話。亀田興毅のカメオ出演にウケました。

大阪・恵美須高校の1年生、成績学年トップのユウキこと木樽優紀は、
教室で予習を済ませて家路につく。
突然降り出した雨に、たまたま通りかかった英語教師、高津耀子が
ユウキに傘を差し掛け、一緒に帰ることに。

電車内には優先座席を占領して騒ぐチンピラ。
我慢できずに注意しに行った耀子は、
ユウキともどもチンピラに取り囲まれてしまう。
そこへ登場したこれまたガラのよくない男子高校生は、
へらへら笑いながら、チンピラたちを一瞬でこてんぱんに。

彼は、カブこと鏑矢義平。ユウキとカブは幼なじみ。
ユウキは小学校の途中で関東へ引っ越し、以降、会えずにいた。
2人は実は同じ高校へかよっていたのだが、
特進クラスのユウキと出来の悪いカブは会う機会がなく、
お互い知らずにいたのだ。偶然の再会に2人は大喜び。

カブの実家であるお好み焼き屋で昔話に花を咲かせたあと、
カブはユウキをボクシング部へと誘う。
勉強の虫だったユウキだが、見学するやすぐに入部を決める。
それにくっついてくるかのように、
カブの大ファンだという同級生の智子もマネージャーとして入部。

天才型のカブに対し、頭で考えてコツコツと練習に励むユウキ。
2人の前に立ちはだかるのは玉造高校の稲村和明で……。

単純なスポ根ものと言われればそれまでですが、
友情、恋愛、その他ドラマの要素てんこ盛り。
切なく、爽快。笑えて、泣けます。

カブ役の市原隼人とユウキ役の高良健吾は
スタントなしのリアルファイトをこなすまでになったというのだからスゴイ。
稲村役で出演するのはホンマもんのボクサー、諏訪雅士選手で、
その体と比べるとやはり引けは取るものの、市原くん、ごっつええ体。

堅物教師役、香椎由宇の黒縁メガネもいいですが、
ボクシング部顧問の筧利夫と生徒のやりとりはテンポ抜群。

谷町筋界隈の町並みも楽しく、
市原くんの意外な大阪弁の上手さにも驚き、
宝生舞のおばちゃんぶりにちょっと引き、
大阪を堪能できる作品なのでした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『グリーン・ゾーン』

2010年05月28日 | 映画(か行)
『グリーン・ゾーン』(原題:Green Zone)
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン,グレッグ・キニア,ブレンダン・グリーソン,
   エイミー・ライアン,ハリド・アブダラ他

税金もろもろを支払うために休みを取った日に、劇場にて。
いろんな意味でめちゃ面白い作品でした。大満足。

2003年のイラク。米国陸軍上級准尉ミラーと彼の部隊は、
どこかに隠されているはずの大量破壊兵器(WMD)の捜索任務に就いている。
しかし、上からの指示に従って現場へ踏み込んでも、
WMDはおろか痕跡すら窺えない。

毎度の空振りに不信感を抱いたミラーは、
軍部の打ち合わせの席で、情報源はいったい誰なのか、
ガセネタではないのかと問う。
すると、情報源は明らかにはできないが間違いない、
黙って捜索を続けていればいいのだと強く言われる。

打ち合わせ後、ミラーに話しかけてきたのはCIA調査官のブラウン。
彼もミラーと同様、何かがおかしいと感じでいた。
2人がお互いの部下と共に調査を進めたところ、
国防総省情報局の高官パウンドストーンに行き当たるのだが……。

湾岸戦争後、イラクはWMDの不保持が義務化されました。
本当に保持していないかどうかは国連が確認調査を進めていたのに、
その場にいちいち米国がしゃしゃり出てくることにイラクは腹を立て、
途中から非協力的な態度を取るようになりました。
それを面白くないと思ったのがブッシュ大統領。
不保持だなんて言ってるけど、どこかにWMDを隠してるでしょ、
そう決めつけて非難し、ついにはイラク戦争へ。

……という説明でいいでしょうか。
けれど、WMDなんて存在しなかったことは今や周知の事実。
これをこんな娯楽大作にしちゃうなんて、可笑しくて仕方ありません。
最大級のイヤミであり、イラクに対する罪滅ぼしでもあり、
悪徳高官たった一人のせいにしているのは言い訳にも思えます。

政治的要素をこんなにも含みながら、あくまでも娯楽映画。
『ボーン・アルティメイタム』(2007)同様、
疾走感と臨場感に溢れる、出色のアクション映画です。

ところで、ミラー役とパウンドストーン役、2人の共演作といえば、
アホなコメディ『ふたりにクギづけ』(2003)ですね。
2人は背中でくっついたシャム双生児でした。
片方は奥手、片方は女たらしで。

『インフォーマント!』(2009)のハゲづらをかぶったマット・デイモンも見物。
それもこれも、体を張っていることには違いありません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『なくもんか』

2010年05月25日 | 映画(な行)
『なくもんか』
監督:水田伸生
出演:阿部サダヲ,瑛太,竹内結子,塚本高史,皆川猿時,
   片桐はいり,鈴木砂羽,伊原剛志,光石研,いしだあゆみ他

劇場に観に行くほどでもないかと思いましたが、
レンタル開始を心待ち。

『舞妓Haaaan!!!』(2007)と同じ監督・脚本・主演。
監督は、杉田かおるがまだ愛らしかった頃の『池中玄太80キロ』で
演出を担当していた人でもあります。

食堂を経営する両親のもとに生まれた祐太。
浮気に借金に悪癖と、どうしようもない父親は、
妊娠中の母親を見捨て、祐太を連れて家を出てしまう。

父親が身を寄せたのは、下町の商店街にある、
ハムカツが名物の惣菜屋“山ちゃん”。
ところが今度は祐太を残し、“山ちゃん”の売上金を持ち逃げ。

泥棒の息子だというのに、“山ちゃん”の夫婦は祐太に目一杯の愛情を注ぐ。
夫婦の実の娘である徹子と分け隔てなく可愛がり、
祐太はそんな夫婦に応えて、笑顔を絶やさず、真面目に働き、
いつしか商店街の人気者となって、“山ちゃん”を任される。

一方、父親と祐太が出て行ったあと、母親は弟を無事出産。
祐介と名づけ、女手ひとつで育てる。

しかし、祐介が小学生の頃、事故で呆気なく死亡。
親戚中をたらい回しにされた祐介は、生きていく手段として笑いを身につける。

学校を卒業してお笑い芸人を目指した祐介だったが、鳴かず飛ばず。
もう諦めようと思った折りに出会ったのが、先輩芸人の大介。
大介と祐介は兄弟漫才師として売り出し、大ブレイク。

ずっと、生き別れた弟を探し続けてきた祐太は、
あるとき、祐介が自分の弟であることを知り、押しかけるのだが……。

ドタバタ人情喜劇で134分はキツイのではと思いましたが、あっちゅうま。
オナラネタが頻出するのにはゲンナリですが、
それをやっているのが二枚目俳優のはずの伊原剛志なのは可笑しい。
阿部サダヲの「ゆうこママ」も下ネタに走りすぎ。
でも、最後はその下ネタから続く流れに泣かされるのでした。

個人的にいちばんヒットだったのは、
鈴木砂羽演じる母親が事故に遭うシーン。不謹慎で失礼。
原付で走行中、歩いている男性の後ろ姿を見て「あ、楳図かずお!」。
しかし、頭モジャモジャのその人は、楳図かずおではなく、藤村俊二でした。
藤村俊二はこの一瞬の友情出演。なんて粋な使われ方。

宮藤官九郎、三谷幸喜は好き嫌いが分かれるところですが、
やっぱり私はどちらも好き。安心して楽しめます。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

追悼、ロニー・ジェイムス・ディオ。

2010年05月21日 | 映画(番外編:映画と音楽)
今週初め、メタル界の超大物、
ロニー・ジェイムス・ディオ氏が67歳で亡くなりました。

『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』(2005)を観て以来、
食わず嫌いだったヘヴィメタも聴いてみようと思い、
ヘヴィメタ好きの友人にあれこれ教えてもらったりして、
今では名前を聞けばそこそこわかるようにはなりました。

そんなまだまだ浅い知識の中でも、ロニーの印象は強烈でした。
背が低くて、デコはかなり後退していて、でも長髪。
ヴィジュアル的にはお世辞にもイケているとは言えないのに、
美しく伸びるパワフルなその声を初めて聴いたときにはビックリ。
友人曰く、とにかく誰もから愛された稀なヴォーカリスト。
きっと、素晴らしい歌唱力だけでなく、愛すべき人柄だったのでしょう。

ロニーは映画の中でもメタルの神として崇められています。
『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』(2006)は、
公開前からものすごく期待していたのに、ほとんど笑えず……。(^^;

幼い頃からロックをこよなく愛する男、JB。
厳格な父親は、ロック=悪魔の創造物だと決めつけて禁じますが、
ある日、敬愛するロニー・ジェイムス・ディオからの啓示を受けたJBは、
ロックの極意をモノにするため、ハリウッドを目指すことに。
途中、街頭でギターを弾くKGと運命的な出会いを果たし、
2人はロック・ユニット“テネイシャスD”を結成。
過去の一流ロック・ミュージシャンたちが皆、同じピックを使っていたと知り、
悪魔の歯から作られたという噂のピックを手に入れようと、
そのピックが展示されている博物館へと向かうのですが……。

ちょっぴり期待外れで残念な作品でしたが、
ロックに関するさまざまな小ネタはとても楽しいです。
博物館の展示品は、ミュージシャンたちが使用した実物なんだそうな。
メタリカやAC/DC、オジー・オズボーン、ヴァン・ヘイレンなど、
超有名どころも惜しみなく協力しています。

ミカ・カウリスマキ監督の『GO! GO! L.A.』(1998)では、
ポスターの中のジョニー・デップ(クレジットなしで出演)が
主人公に目配せする、とってもお茶目なシーンがありました。
『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』では、
ポスターから抜け出たロニーが歌いまくるシーンがあり、迫力満点。
遊び心に満ちていてニヤリ。

ご冥福を心からお祈りします。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『チェイサー』

2010年05月18日 | 映画(た行)
〈おことわり〉
 この日記には、香港の作品を韓国の作品とした誤った記述があり、
 後日、読者の方からご指摘を受け、お詫びの日記を書きました。
 あらためてお礼とお詫びを申し上げます。
 後日の日記をご覧ください。

『チェイサー』(英題:The Chaser)
監督:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク,ハ・ジョンウ,ソ・ヨンヒ,チョン・インギ,
   パク・ヒョジュ,キム・ユジョン,ク・ヌボン他

ちょうど1年前に公開、秋にDVDが発売された韓国の作品。
観るのに体力を要しそうで先延ばしにしていましたが、
先日、TSUTAYA DISCASのスポットレンタルにて。

本作が監督のデビュー作とは末恐ろしい、いや、素晴らしい。
予想どおり、観たあとはドッと疲れ、凹み、しばらく放心状態でした。
2004年に実際に起きた連続猟奇殺人事件に基づいています。

訳あって刑事を辞めさせられるはめになり、
今はデリバリーヘルスを経営しているジュンホ。
このところ、店の女の子が数名、仕事に出たきり失踪しており、
客から電話がかかっても、デリヘル嬢を用意するのにひと苦労。

その日も、デリヘル嬢が出払ったあとに電話が。
困ったジュンホは、風邪を引いて休んでいるミジンの家まで押しかけ、
何が何でも仕事に出ろと怒鳴り散らす。
シングルマザーのミジンは仕方なく、幼い娘に数時間で戻るからと言い聞かせ、
客との待ち合わせ場所へ出向く。

ジュンホは、これまでデリヘル嬢が失踪した日に電話してきた客と、
今からミジンが会うはずの客の電話番号が同じであることに気づく。
その客がデリヘル嬢をよそへ売り飛ばしていると思い込んだジュンホは、
客の家へ着いたら、場所をこっそりメールしてくるようにミジンに伝える。

ところが、いくら待てどもミジンからの連絡はない。
心配したジュンホが住宅街へ車を走らせると、ミジンの車を発見。
その頃、ミジンは絶望的な気持ちで猟奇殺人犯と対峙していた。

荒削りな部分は見えるものの、その息もつかせぬ展開に圧倒されます。
前半は短気で喧嘩っ早いジュンホの言動にはしばしば笑わされますが、
後半はただのデリヘル嬢売り飛ばし事件ではないと悟ったジュンホが、
走って走って走ります。
ラストも一筋縄では行かず、非情さに愕然。(T_T)

韓国映画のリメイクといえば、
『インファナル・アフェア』(2002)のリメイク、
『ディパーテッド』(2006)がありますが、
本作も同じくレオナルド・ディカプリオがリメイク権を獲得して、
ハリウッド・リメイクが決定しているそうです。

純愛を描いた韓国映画も良いけれど、
こんな男泣きのバイオレンス映画を見せられると、凹みつつも、
スゲぇな、韓国、と思うのでした。傑作です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする