夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『俺たちフィギュアスケーター』

2008年05月28日 | 映画(あ行)
『俺たちフィギュアスケーター』(原題:Blades of Glory)
監督:ウィル・スペック,ジョシュ・ゴードン
出演:ウィル・フェレル,ジョン・ヘダー,クレイグ・T・ネルソン他

以前、本国では大人気のコメディ俳優なのに
日本では知名度すらイマイチの俳優として、
ウィル・フェレルとベン・スティラーを挙げました。
本作はそのウィル主演ですが、ベン主演でもありやなと思って観ていたら、
ベンは製作者として名前を連ねていました。や、やはり。

こんなアホな作品を真面目に作ってしまうって素晴らしい。
このアホくささにこの邦題はピッタリ、秀逸だと思います。

フィギュアスケート世界選手権の男子シングル部門。
養父からスケートの英才教育を受けてきたジミーは、
美形で華麗なスケーターとして大人気。
一方のチャズは酒と女に目がない一匹狼で、
下品とも言える振り付けで観衆を魅了し続けている。

決勝で対決したふたりは同点で1位に。
しかし、表彰台の上で罵り合い、前代未聞の大乱闘となる。
事態を重くみた協会は、ふたりの金メダルを剥奪し、
競技からの永久追放処分を言い渡す。

養父からも絶縁されたジミーはスケート用品店で働き、
チャズは着ぐるみをまとってスケートショーに出演。
それぞれが悶々とした日々を送る。

ある日、ジミーのストーカーだった男性が、スケート用品店にやって来る。
彼が言うには、ジミーの追放以降、
ほかのスケーターを追っかけてみたが、いまいち熱くなれず、
ジミーを戻らせる手段はないかと規約書を読んでみたところ、
永久追放の対象となるのは、追放された部門だけであることが判明。
すなわち、ジミーが出場できないのはシングル部門だけだというのだ。

希望を見いだしたジミーは、ペアを組む相手を探し始める。
スケートショーの楽屋を訪れたジミーは、偶然チャズと再会。
憎み合うふたりはまたもや乱闘騒ぎを起こすが、
その様子をTVで見たコーチが、ふたりにペアを組ませることを思いつく。
史上初の男子ペアの誕生なるか。

犬猿の仲だったふたりが、次第にお互いの力を認め、
固い絆で結ばれて行くと書けば、ありがちなスポ根ですが、
美形がウリのジミーは美形とは言い難いマヌケ面だし、
チャズのあの腹でスケート選手は、なんぼコメディと言えどもあり得ない。
それでも許せてしまうのはアホらしすぎるから。

ナンシー・ケリガンやサーシャ・コーエンなど、
本物のメダリストたちも実名で出演。

脳みそカラッポにして笑いましょ。

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『カンナさん大成功です!』

2008年05月23日 | 映画(か行)
『カンナさん大成功です!』
監督:キム・ヨンファ
出演:キム・アジュン,チュ・ジンモ,イム・ヒョンシク,
   ソ・ユン,キム・ヒョンスク他

鈴木由美子の同名コミックを韓国で映画化して大ヒット。
韓国人は美容整形に対する抵抗が少ないと言われていますが、
「見るぶんにはキレイなほうがいいけれど、
自分の彼女が整形するのは嫌」と思うのは万国共通なようで。

身長169cm、体重95kgの女性カンナ。
美声の持ち主で、歌もプロ級の上手さだが、
デブでブスでは表舞台に立てるはずもなく、
人気歌手アミのゴーストシンガーを務めている。

コンサートの舞台裏に設置されたマイクで、
モニターを見ながらアミの口パクに合わせて熱唱すると、
ノリすぎて床が抜けてしまうことも。

周囲はカンナに冷ややかな目を向けるが、
イケメンのプロデューサー、サンジュンだけは
いつもカンナを気遣ってくれる。
自分に気があるのではと、友人ジョンミンに話すと、
勘違いも甚だしいと一笑に付される。

ある日、サンジュンの誕生パーティーに招待されたカンナは、
「ぜひこれを着てきてほしい」という手紙が添えられた宅配便を受け取る。
開けてみると深紅のドレス。
ピチピチのドレスが腹に食い込んで、見るも無惨な姿だが、
サンジュンの想いに応えるため、カンナはそれを着て出かける。

パーティー会場を訪れると、
そこにはまったく同じドレスを見事に着こなしたアミが。
宅配便はアミの悪戯だったのだ。

事情を察知したサンジュンは、アミを連れ出して怒るが、
カンナの容姿に対する本音も吐く。
偶然それを聞いてしまったカンナは、全身整形を決意。
別人としてサンジュンの前に現れる。

ナチュラル(っぽい)美人で、完璧なボディ。
カンナは歌手ジェニーとして売り出し、みるみるうちに大人気となるが……。

笑えます、泣けます。
めっちゃ元気の出る作品として太鼓判。
整形を依頼する医者が、カンナの声から美女と信じ込み、
テレクラでカンナ相手に語っていたがゆえに、
カンナに脅されて手術を引き受けざるを得なくなるくだりは爆笑。

いつしかブスの気持ちを忘れて、
友人に心ない言葉を投げつけたり、父親のことを恥じるようになったり、
いろんな場面でいけ好かない言動に走るのも、
観る側の心を押したり引いたり、巧いです。
ラストのコンサートのシーン、最高。

それにしても、来月セブンイレブンで発売の
「ヨン様弁当」ってどうよ。

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『ディスタービア』

2008年05月20日 | 映画(た行)
『ディスタービア』(原題:Disturbia)
監督:D・J・カルーソー
出演:シャイア・ラブーフ,キャリー=アン・モス,
   デヴィッド・モース,サラ・ローマー,アーロン・ヨー他

ロードショーで観た2本(これこれ)を先に書いたので、
GW中に観たレンタル新作が後回しになってしまいました。
でもこれはぜひ書き残したい1本。
青春、恋愛、ミステリー、サスペンス、ホラーの要素まで
コンパクトに詰め込まれてワクワク、ドキドキ、ハラハラ、胸きゅん。

休暇の帰り道、事故に遭った男子高校生ケールは
車に同乗していた父親を亡くし、
そのショックから立ち直れないでいる。

授業中も心ここにあらずの彼に無神経な言葉を投げかけた教師を、
ケールは我慢できずにぶん殴って、3カ月の自宅謹慎をくらう。

学校に行かなくていいなんてラッキーと思いきや、
自宅から半径30メートル外へ出るとアラームが鳴り、
即刻警察がやってくるという監視システムを足首に取り付けられる。

毎日ダラダラし続けるケールに母親は腹を立て、
オンラインゲームや音楽のダウンロードの契約を切ってしまう。
何もすることがなくなったケールは望遠鏡を取り出し、
ご近所さんの観察を始める。

ある日、隣人の様子が怪しいことに気づく。
車は報道されている連続殺人犯のものと同じ。
ガレージに血の付いた大きなゴミ袋を運び込む姿。
ケールは、近所に引っ越してきたばかりの美少女アシュリーと、
悪友のロニーを誘って張り込むことにするのだが……。

自宅の2階窓際を一周する「ご近所さん見学ツアー」はオツなもの。
住人の習慣や人間関係までバッチリ。
ケールとロニーがウハウハ喜ぶ様子が可笑しいです。

張り込みを開始してからは、携帯やデジカメ、iPodなど、
イマドキのアイテムを最大限に駆使して、
高校生3人が捜査を進めるさまはスピード感に溢れ、痛快。

終盤のおどろおどろしい死体発見場面や
犯人との格闘劇はサスペンスそのものですが、
グッとくるのはアシュリーとのやりとり。
自分も覗かれていたと知って激怒するアシュリーに、
「確かに覗いた。だけど、君が考えているような(卑猥な)ものではない」と、
ケールがとまどいがちに挙げてゆく、自分が見つめてきた彼女の仕草や表情は、
言い訳なんかではなく、ただ好きな人を見つめていたい、
そんな気持ちが伝わってきます。

もちろんハッピーなエンディング。
1本でいくつものちがう味わいのある、とってもおいしい作品なのでした。

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『最高の人生の見つけ方』

2008年05月16日 | 映画(さ行)
『最高の人生の見つけ方』(原題:The Bucket List)
監督:ロブ・ライナー
出演:ジャック・ニコルソン,モーガン・フリーマン,ショーン・ヘイズ他

前述の『ミスト』と同日に、ロードショーにて。

ハリウッド俳優の訃報を聞くと、毎回少なからずショックを受けますが、
本作の主演ふたりについては、もしもどちらかひとりでも亡くなったら、
私の受けるショックは半端ではないと思います。

エドワードとカーターは、共に末期癌に冒された老年期の男性。
対極にある人生を送ってきたふたりが、癌病棟で同室になる。

エドワードは、多方面の企業経営をおこなう大会社の社長。
吐血して、自らが経営する病院に運び込まれる。
当然、個室が用意されていると思いきや、以前、
「病床は例外なく1部屋に2つ(病床数を増やして患者を詰め込んだりしない)」と宣言したことがあったがために、
「例外ではない部屋」に入れられてしまう。

エドワードより先に入室していたのがカーター。
彼はかつて、歴史学で教鞭を執ることを夢みていた。
しかし、学生だった頃、妻の予期せぬ妊娠に、退学して働かざるを得なくなり、自動車整備工に。
以来、何十年もの間、汗と油にまみれて働いてきた。
歴史のクイズ番組を楽しみにしながら。

ある日、カーターがゴミ箱に捨て損ねた紙を
エドワードが拾う。開けてみると、そこには
“The Bucket List(=棺桶リスト(←これが原題))”と書かれており、
カーターが死ぬまでにしたいことを挙げていた。
「荘厳な景色を見る」、「マスタングを乗り回す」などなど。

そこで、エドワードはカーターと病院を抜け出し、
リストの項目をひとつずつ達成していくことを提案するのだが……。

『ミスト』とどちらがおもしろかったかと問われれば、圧倒的に『ミスト』です。
だけど、その日、鑑賞する順番として、
『ミスト』を後にしなくてよかったと思いました。
逆だったら穏やかに眠れない。

この名優ふたりでなければ、駄作だと思ったかもしれません。
でも、このふたりが「涙が出るほど笑う」シーンを見れば、
心の底から温まり、こっちも泣き笑いさせられてしまいます。
究極のコーヒー、“コピ・ルアック”の話は、
『かもめ食堂』(2005)をご覧になった人なら、
すでに十分すぎるほど知っていて、笑うタイミングを逃すかもしれませんけれど。

「『ミスト』は最悪、こっちは最高」と言うほうが、
人間的には良い人だと思われます。絶対。(^^;

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『ミスト』

2008年05月12日 | 映画(ま行)
『ミスト』(原題:The Mist)
監督:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン,マーシャ・ゲイ・ハーデン,ローリー・ホールデン,
   アンドレ・ブラウアー,トビー・ジョーンズ,ウィリアム・サドラー他

封切りの日に、ロードショーにて。

ホラーは大の苦手ですが、
どうしても観ずにはいられなかった作品が過去に数本。
『シックス・センス』(1999)、『アザーズ』(2001)、
『ダーク・ウォーター』(2004)などがそうです。

そして本作。
原作スティーヴン・キング、監督フランク・ダラボンのコンビといえば、
『ショーシャンクの空に』(1994)と『グリーンマイル』(1999)ですが、
前者のラストの温かさをイメージして本作を観ると打ちのめされます。
驚愕のラスト15分ということですでに話題になっていますが、
その触れ込みに偽りなし。いや~、凄かった。

メイン州の田舎町。
ある晩、この町一帯が激しい嵐に見舞われる。
翌朝、イラストレーターのデヴィッドは、
スーパーマーケットへ買い出しに行くことにする。
隣家の弁護士ノートンが、車を押し潰されて困っている様子。
彼とは以前から犬猿の仲だが、こんな状況ではさすがに気の毒。
不気味な霧が立ちこめる中、デヴィッドは妻に見送られ、
一人息子のビリーと、ノートンとともに出かける。

買い物客でごった返すスーパーマーケット。
レジの列に並んでいると、血を浴びた男性が駆け込んでくる。
「霧の中に何かいる」と叫びながら。

やがて、霧の中に巨大な触手生物が存在することがわかる。
謎の生物の侵入を防ぐため、
客たちはバリケードを張り、武器を手に店内で息をひそめるのだが……。

触手生物にはじまり、でかい昆虫に恐竜もどき。
どれもめっちゃ気色悪いです。
食いちぎられた体や、噛まれたあとに膨張する顔など、
どこをどう取ってもパニック&オカルトホラー。

だけど、気色悪さだけじゃありません。
極限状態に置かれると、人間はどうなるのか。
新興宗教って、こうして生まれるんでしょうね。

そして、驚愕のラストシーンは、
人間の希望を木っ端みじんに吹き飛ばします。
このラストは原作と異なるもので、原作者のキングは、
自分が思いついていればこうしたのにと悔しがったそうな。

「パパに大事なお願いがあるの。
 怪物に僕を殺させないで」。
息子との約束を果たすことがすべて。

映画の話を人とするとき、趣味が合うかどうか、
ちょっと目安になりそうな作品かも。

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