夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

麺づくりに燃える。(その2)

2010年11月29日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
前回に引きつづき、「こだわりの麺」が登場する作品。
もう1本は韓国の作品、『彼とわたしの漂流日記』(2009) 。
今年の梅雨頃公開され、DVDレンタル開始になったばかり。

失恋、失業、借金と、人生に絶望した男キムは、
ソウル市内を流れる漢江(ハンガン)に、橋の上から飛び込みます。

ところが、自殺に失敗したようで、目が覚めるとそこは小さな無人島。
けれど、遠くへ流されたわけではなく、顔を上げれば、
何百メートルか先にはさっきの橋と行き交う車、高層ビルも見えています。
それぐらい、泳いで行けるやろっちゅう感じなのですが、キムには無理。
携帯で救いを求めるも、誰にも信じてもらえず、
遊覧船の客にSOSのサインを出すも、笑顔で手を振られる始末。

ええい、こうなったらこのままここで暮らすしかありません。
何か利用できるものがないかと無人島を歩きまわるうち、
キムが見つけたのはインスタントのジャージャー麺の袋。
麺は空っぽ、粉末ソースのみが開封されずに残っている状態。

これまでの毎日を振り返ると、幾度ジャージャー麺を拒絶してきたことか。
ジャージャー麺なんて別に食べたくない。
そう思っていたことを天に向かって謝罪します。

どうしてもジャージャー麺が食べたい。
麺さえあれば、この粉末ソースでジャージャー麺がつくれる。
そう思ったキムは、そこらに生えている草を使って
麺をつくろうとしますが、どうにも上手く行きません。

やはり無人島で麺をつくるのは無理なのか。
しかし、空から落ちてきた鳥の糞にヒントを得たキムは……。

いや、もう、ほんとに可笑しいシーンの連続なのですが、
見事ジャージャー麺にありついたシーンでは、
キムと一緒に涙してしまいました。

彼とわたしの漂流日記、「彼」はこのキムのことです。
「わたし」は、対岸のマンションに住む引きこもりの10代女性。
望遠鏡で月を見ていて、偶然「彼」を発見します。
誰かに気づいてほしくて、彼が地面に書いたメッセージ。
それに応えたくて、彼女は完全武装で夜中に部屋を出ると、
メッセージ入りの空き瓶を島に向かって放り投げます。

こんなアナログな手段で通信を試みながら、
ネットの世界でしか生きてこられなかった彼女が
彼に送るメッセージはいつも、PCで打ち込んだたった一文。
そんな様子も実に興味深いです。

ジャケットにも写っているアヒルのボートが立派な脇役。
可笑しくて、優しくて、切なくて、とっても素敵な作品でした。
麺づくりも含めて、オススメ。

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麺づくりに燃える。(その1)

2010年11月25日 | 映画(番外編:映画と食べ物・飲み物)
最近観た映画の話をお昼休みにしていたら、
「こだわりの麺が出て来る映画をよく観てるよねぇ」と言われました。
どうやら私は「麺づくり」のシーンに遭遇すると、
それについて熱く語っているようです(笑)。

去年の夏に公開された『南極料理人』(2009)。
南極観測隊の調理担当だった西村淳のエッセイが基で、
「おいしいごはん、できました。
 氷点下54℃、家族が待つ日本までの距離14,000km
 究極の単身赴任」がキャッチコピーでした。

南極ドームふじ基地。
観測隊員として越冬することになった8名の男たち。
雲氷学者、気象学者、大気学者、雪氷サポート。
医療、車両、通信それぞれの担当者。
そして、調理担当の西村(堺雅人)。

鼻水も凍る過酷な地で、精神も肉体も疲労過多、
娯楽といえるものはわずか。
せめて胃袋は満たしてもらおうと、
西村は毎日懸命に献立を考えています。

この食事が本当に美味しそう。
シャケやおかかの入ったおにぎりにみそ汁。
特別な日には盛装でコース料理も。
フォアグラのテリーヌ、ヒラスズキのポワレ、ローストビーフ、
もちろんワインも一緒に。

立派な伊勢エビがあると聞いた隊員たちの頭の中は海老フライ。
西村は、海老フライには大きすぎると主張しますが、
「僕たち、気分は海老フライだからね!」とみんなから言われ、
渋々リクエストに応えた結果には大笑い。
また、乏しい火力で分厚い和牛を焼く工夫も笑えます。

通称タイチョー(きたろう)の大好物はラーメン。
ところが、夜食にこっそりラーメンを食べ過ぎたせいで、
まだ滞在日数を長く残した状態で、麺が底をついてしまいます。
春まで麺の調達は不可能。
「ラーメンが食べたいんだ。僕の体はラーメンでできてるんだぁ」と
タイチョーは泣いて訴えますが、
麺をつくろうにも、かん水がないので無理だと西村は言います。

数日後に、本さん(生瀬勝久)と卓球をする西村。
球を打ち合いながら、本さんが「ちょっと調べてみたんだけどさぁ。
かん水って何で出来てるんだ?」と西村に尋ねます。
化学記号と代用品のヒントを本さんから得た瞬間、
西村はラケットを放り出し、即座へ向かいます。

できあがったラーメンを目の前にしたタイチョーとほかの隊員たち。
オーロラ観測もそっちのけで、ラーメンをすすります。
そりゃもう、このうえなく幸せそう。
観ているほうまでホッコリ、ニッコリしっぱなしの作品でした。

もう1本は次回に。

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『100歳の少年と12通の手紙』

2010年11月22日 | 映画(は行)
『100歳の少年と12通の手紙』(原題:Oscar et la Dame Rose)
監督:エリック=エマニュエル・シュミット
出演:ミシェル・ラロック,アミール,アミラ・カサール,
   ミレーヌ・ドモンジョ,マックス・フォン・シドー他

2008年のフランスの作品。現在公開中です。
原題は“Oscar et la Dame Rose”で、
「オスカーとバラ色の服を着た女性」の意。

白血病で入院中のオスカー、10歳。
同じく難病で入院している子どもたちと楽しく過ごしているが、
オスカーが重病だと知る大人たちは、
オスカーがどんないたずらをしでかそうとも叱らない、笑わない。

ある日、オスカーは予定外に両親が来院しているのに気づいて喜ぶ。
ところが、院長と両親の話をつい立ち聞きすると、
骨髄移植に失敗して、もう手の施しようがないらしい。

涙に暮れる両親は、オスカーに会う勇気がないと帰ってしまう。
しかも、両親が来院したことも、オスカーの命のことも、
院長たちはオスカーに明かそうとしない。
傷ついたオスカーは、誰とも口をきかなくなる。

まさかオスカーが立ち聞きしていたとは思わない院長は、
オスカーの態度に合点がいかない。
「誰となら話をするか」と問うと、「バラ色の女性となら」。

バラ色の女性とはいったい誰なのか。
婦長は、その朝、宅配ピザの宣伝に来た中年女性に思い当たる。
早速連絡を取ると、ローズという名の口の悪いその女性は、
死にかけの子どもの話し相手だなんてまっぴらごめんだと言う。
そこで、ピザの注文と引き換えにオスカーの話し相手になることに。

オスカーから「何日間来てくれるの?」と尋ねられて、
「12日間」とつい正直に答えてしまうローズ。
自分の命があと12日なのだと知ったオスカーに、
ローズは、1日に10歳、年を取ることにしようと提案し……。

ローズはオスカーの背中をそっと、でも強く押します。
15歳になったんだから、好きな子に告白しなきゃ。
33歳で浮気を疑われたら、ちゃんと仲直りしなくちゃ。
それに応えて、人生を謳歌するオスカー。
原文がどうなっているのかはわかりませんが、およそ10歳らしからぬ、
「遊びすぎたつけがまわって」なんて言い回しも楽しく。
ファンタジーの要素も多く含んでいて、泣き一辺倒ではありません。

その昔、ちょうどオスカーぐらいだった知り合いの男の子が、
「生まれ変わったら僕の子になりな。めっちゃ可愛がったるから」と
言ってくれたことを思い出しました。

人は長生きできたとしても、人生を楽しむセンスが必要。

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ジュード・ロウの胸毛

2010年11月19日 | 映画(番外編:映画とこの人)
すんません。こんなタイトルで。

先日、レンタル新作の『レポゼッション・メン』(2010)を観ました。

舞台は近未来。人工臓器の進歩で延命が可能となっています。
しかし、人工臓器は高額であるため、それを必要とする人たちは、
購入のさいにローンを組まなければなりません。
ローンを払い続けることができるのだろうかと、
購入者なら誰もが持つ不安を一掃するような、巧みな販売員の言葉により、
みんな、安堵の表情を見せてローンの書類に署名します。

ところが、ひとたびローンの支払いが滞ると、
製造販売元のユニオン社が送り込む回収人、通称レポメンによって、
人工臓器はただちに回収される仕組みとなっています。
突然現れるレポメンは対象者を気絶させ、人工臓器を切り取るのです。
ローンが払えなくなった者は死んで当然という現実。

ユニオン社の凄腕レポメン、レミーは、
この仕事を嫌がる妻の要望を聞き入れることを決意。
最後の回収にしようと向かったその先で大事故に遭います。
昏睡状態から覚めると、彼の体には人工心臓が埋め込まれていました。
自身がローンを組むはめになり、
仕事を辞めれば支払うことができないわけで、続けることに。

けれど、それ以来、回収現場で恐怖を感じて動けません。
回収しなければ給料はもらえず、
支払いの滞ったレミーは同僚から追われる立場に。

そんなお話です。
後味よく終わってほしかった感はありますが、
なかなか楽しめました。

内容以上に気になったのがタイトルの件。
ジュード・ロウの胸元が見えた瞬間、
「えっ?」と思って、巻き戻してしまいました。

ジュード・ロウの印象といえば、胸毛。
すぐに思い出すのは『ホリデイ』(2006)で、
あのときはまちがいなく胸毛があったはずなのに、
どうして本作はツルツル?
巻き戻して再確認したけれど、やっぱりない!

あの胸毛は作り物で、もともとはなかったのかと、
どうしても気になって調べちゃいました。
そうしたら、こんな記事が最初にヒット。
「ジュード・ロウ、厳寒4度でも胸毛チラリ!」。

そのほか、いろんな人のブログに、
「胸毛が鎖帷子みたい」とか「胸毛ワトソン」とか、
「スーツに胸毛がダンディ」とか「胸毛ハンサム」とか。

そっか、やっぱりあの胸毛は本物で、
今回は剃っていたのねと安堵。
なぜ安堵している自分がいるのかわかりません。(^^;

レポメンに胸毛は不要?

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『電信柱エレミの恋』

2010年11月16日 | 映画(た行)
『電信柱エレミの恋』
監督:中田秀人
声の出演:奥村知子,渡辺一志,工藤恭造,門脇俊輔他

8年の歳月をかけて制作された、45分間のストップモーションアニメ。
ストップモーションアニメとは、最古の部類に入るアナログSFX技術で、
造形物を少しずつ動かして1コマ毎に撮影し、
1秒間に何枚もの画像を連続させて映像にする技法だそうです。
パラパラ漫画の立体版をイメージすればいいのでしょうか。

本作は、人物、小道具、背景のすべてを手作業で作り上げた渾身の作品。
特典映像のメイキングを見ると、さらに虜になります。
何度でも観たい作品となりました。

満月の夜、故障してしまった電信柱のエレミ。
光に向かって歩き出す不思議な夢を見たのは、
おそらく三途の川を渡りかけていた頃。
夢から覚めると、目の前には青空電力の作業員タカハシがいた。

タカハシが修理を施してくれたおかげで、すっかり元気になったエレミ。
どうやらタカハシにひと目ぼれしてしまったようで、
彼のことが頭から離れない。

駄目なことだと思いつつも、
タカハシと話してみたくなったエレミは電話回線に侵入。
人間のふりをして、タカハシに電話をかける。
最初はエレミからの電話に困惑するタカハシだったが、
やがて電話がかかるのを待ち遠しく思うように。
毎日の会話を幸せに感じる。

ところが、そのことが電信柱の間ですぐに噂になる。
エレミは電信柱会議にかけられ、
タカハシとの別れを決断するように迫られるのだが……。

電信柱と人間の恋だなんて、アイデアも素敵ですが、
何より造形物が人を惹きつけて離しません。
電信柱のある風景のなか、将棋を差す親父、ビラ貼りの二人組、
遊具に揺られる子どもたち、電線に止まる小鳥。
赤い円柱形の郵便ポスト、蹴り飛ばされる缶、亀の餌のレタス。
こういったものがすべて丁寧に作られていて、
見ているだけでわくわくします。黒電話の音も懐かしく。

造形物のなかで秀逸なのは、
流し台に置かれた湯吞みに注いだ水が溢れ出すさま。
メイキング映像でも目が釘付けになりました。

また、心ない運転者に轢かれた猫を見つけて
心を痛める小学生の女の子が取る、ある行動。
このシーンのメイキング映像にも和みました。

ラストシーンにじんわり。
tico moonによる音楽もぴったりで、心が洗われます。

8年もかけて1本完成させたら、
次はいったいどうなるんだろうと心配ですが、
今後を楽しみにしています。

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