夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『猟奇的な彼女』

2003年08月29日 | 映画(ら行)
『猟奇的な彼女』(英題:My Sassy Girl)
監督:クァク・ジェヨン
出演:チョン・ジヒョン,チャ・テヒョン他

ぐうたら大学生のキョヌ。
ある日、「彼女」が酔っぱらってホームから落ちそうになったのを助ける。
電車に乗ると、ベロベロ状態の彼女はいまにも吐きそう。
ほかの乗客から彼女の彼氏だとまちがわれたキョヌは
仕方なく彼女を介抱するはめに。

とりあえずはホテルへ連れていき、彼女を寝かせてから
汗とゲロにまみれたキョヌは浴室へ。
彼女にかかってきた携帯に出てしまったものだから、
怪しい人物とまちがえられ、部屋に警官がやってくる。

留置所で一晩を過ごすキョヌ。
翌日、容疑が晴れて帰宅すると彼女から呼び出しが。
彼女を助けたはずなのに、何も覚えていない彼女に
「私に何をしたのよ!」とスゴまれ、キョヌはことのなりゆきを説明する。
そこからキョヌと彼女の奇妙なつきあいが始まって……。

見た目は清楚でとてもかわいいのに、彼女は信じられないくらい凶暴。
「ぶっ殺されたい?」を連発され、殴られることはしょっちゅう。
振りまわされるボンボンのキョヌとのコンビが絶妙におかしい。

なんとこれも「実話に基づく」
韓国の大学生がインターネットに投稿した自分の恋愛話。
これが話題となって出版、2001年に映画化されて大ヒットしました。
スピルバーグがすでにリメイク権を獲得しています。

原作では「前半戦」と「後半戦」から成り、
映画ではさらに「延長戦」が加えられています。
オチもいい感じで(読めたけど)、さわやかに笑えてホロリとできる作品です。
元気になりたいときに観ましょう。

ついでに。
シナリオライターをめざす彼女は、『ターミネーター』(1984)のような話が好き。
キョヌは「韓国人はラブストーリーが好きなんだから」と諭します。
また、「主役はハン・ソッキュとシム・ウナで」
(『八月のクリスマス』(1998)の主演2人)という会話も出てきます。

彼女にぶっ殺すと言われたときはほんとに死ぬ覚悟で。

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『戦場のピアニスト』

2003年08月26日 | 映画(さ行)
『戦場のピアニスト』(原題:The Pianist)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:エイドリアン・ブロディ,エミリア・フォックス,
   ミハウ・ジェブロフスキー,エド・ストッパード他

レンタル新作。
これまた実在のポーランドのピアニスト、ウワディク・シュピルマンの物語。

1939年秋。
ウワディクはポーランドでもっとも有名なピアニスト。
ワルシャワのラジオ局で演奏していると、街がドイツ軍によって占拠される。
想像を絶するユダヤ人への迫害がはじまり、彼らはユダヤ人居住区へと追いやられる。
強制労働が課せられ、やがて収容所へ。

逃亡を決意するウワディク。
収容所内で外につながりを持つ人物に出会った彼は、
昔の知人を頼りに脱出することに成功する。
しかし、収容所内から逃げだすことは簡単でも、
生き延びることはたいへんだった。

ここからネタバレあり。
戦場でピアノを弾きまくる話かと思っていたら
そんなことはできるはずもなく、
逃亡するピアニストのすさまじい体験が描かれています。

匿われた生活では食糧もすぐに底をつき、身体も衰弱。
でも、どんな状況下にあっても、食欲と睡眠欲は消えないのですね。

廃墟と化した街の屋敷で手に入れた缶詰を開けようとするも、
弱りきった身体では力も入りません。
それでも大事そうに缶詰を抱えている姿をドイツ軍の大尉にみつかってしまいます。
「ユダヤ人か?職業は何だ?」と聞かれ、「ピアニストでした」と答えると、
その屋敷のピアノで何か弾いてみるように言われます。
意識は朦朧、身体のどこにも力が入らない状態で、
彼は素晴らしい演奏を披露します。

それからドイツ軍が撤退する日まで、
大尉はウワディクに食糧を運びつづけるのでした。
ライ麦パンに添えられた苺ジャムを
指でひとすくいしたときのウワディクの歓喜の表情。

ポランスキー監督の人生は波乱万丈そのもの。
フランス出身でポーランドに移住、そしてユダヤ人迫害の対象に。
妻だった女優のシャロン・テイトは、
1967年、オハイオのカルト教団マンソンファミリーに
お腹の赤ちゃんとともに惨殺されました。
その後、未成年女子に対する強姦罪で逮捕され、保釈中にアメリカから脱出。
現在も逃亡犯として罪が適用されるため、昨年度のオスカーでは、
この作品が受賞するかどうかが大きな話題に。
結果、受賞はしたけど、式には欠席。

食べて、寝て、いい音楽を聴く。これがすべて。
見応え十分、オススメ。

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『現金に体を張れ』

2003年08月24日 | 映画(か行)
『現金に体を張れ』(原題:The Killing)
監督:スタンリー・キューブリック
出演:スターリング・ヘイドン,ジェイ・C・フリッペン,
   コリーン・グレイ,ビンセント・エドワーズ他

「観損ねていた名作を観る」第2弾。
1956年の作品。

5年の服役生活を終えたジョニー。
彼はさっそく新しい計画を進めていた。
競馬場の売上金200万ドルをそっくりいただこうというのだ。

ジョニーは信頼のおける人間に声をかけはじめる。
彼の父親代わりで出資者のマービン、地元警官のランディ、
競馬場の馬券係のジョージとバーテンダーのマイク。
この5人で綿密な計画が練られる。

まずは強奪当日に警備員の注意を引くため、
乱闘騒ぎを起こすように元ボクサーに依頼。
さらには当日の人気レースで本命馬を狙撃するため、
ライフルの名手を雇う。

計画はとどこおりなく進められるはずだった。
しかし、馬券係のジョージは、溺愛する妻シェリーに日頃の稼ぎの悪さを罵られたさいに、
つい計画を洩らしてしまう。

悪女シェリーは自分の愛人パルに計画をばらす。
5人が強奪した200万ドルをパルが待ち伏せしてそっくりいただき、
シェリーとともに逃げるつもりだ。

決行の日、予定どおりに事は進み、
あとはアパートの部屋で盗んだ金を山分けするだけとなるのだが……。

それぞれの行動が分刻みで詳細に語られます。
ナレーションとモノクロの映像がドキュメンタリー風で、
事件をその場で見ているよう。
少しずつ狂ってゆく計画。
気持ちの揺れ動きをお節介に描写したりしなくても
ひとりひとりの表情を見ていればよぉくわかる。

この無駄のなさに脱帽。
キューブリックってすごいなぁとあらためて思う逸品。
競馬好きもご覧あれ。

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『さらば、わが愛/覇王別姫』

2003年08月21日 | 映画(さ行)
『さらば、わが愛/覇王別姫』(原題:覇王別姫)
監督:チェン・カイコー
出演:レスリー・チャン,コン・リー,チャン・フォンイー他

夏休み中はやはりビデオレンタル店に足を運ぶ人が多いのか、新作の貸出率が高い。
そんなわけで、今月はなんとなく旧作中心、
「観損ねていたものを100円レンタルで借りまくる月間」になってます。

1993年の香港の作品。
激動の中国を舞台に、京劇を取りあげています。

京劇団に預けられた子どもたち。
いつか立派な役者になることを夢見ながら、
師匠に鞭打たれて厳しい練習に耐えている。

そんな劇団にやってきたまだ幼い蝶衣。
遊女である彼の母は子どもを育てるのに限界を感じ、
やはり劇団にわが子を預けにきたのだった。
母と離れ、周囲になかなか溶け込めずにいる蝶衣に
団員のリーダー格である段小楼は優しく接する。

こうして本当の兄弟のように育ったふたりは
やがて京劇界のトップスターとなる。
段小楼は男役、蝶衣は女形として。
いつしか蝶衣は段小楼に恋心を抱くようになる。

蝶衣の思いを知ってか知らずか、段小楼は遊廓通い。
遊廓の一番人気である菊仙と恋に落ち、ふたりは結婚することに。
3人をめぐる愛憎劇がはじまる。

3時間近い上映時間のなかで、
まず袁世凱によって中国北東部が支配されていた時代が描かれます。
そして日本軍による侵略、終戦へ。
さらには中国国民党の天下の時代を迎え、やがて共産党による文化大革命が。
本当に、「怒濤の」という言葉がぴったりで、
中国ってすごい国やなぁと思うことしみじみ。
中国人にパワーがあるのはもっともだと思うのです。

作品中、京劇をたっぷりと観ることができます。
蝶衣と段小楼が演じる京劇は「覇王別姫」。
司馬遼太郎の小説にもある「項羽と劉邦」に登場する
西楚の覇王と、劉邦の愛妃である虞妃の物語。
「四面楚歌」という言葉の由来の話ですね。

香港のトップスターであったレスリー・チャンが妖艶な蝶衣を演じています。
ゲイ疑惑があっただけに(疑惑じゃなくて事実だったけど)
段小楼と菊仙を見つめる目が演技だとは思えないほど。
今年4月に飛び降り自殺。
古尾谷雅人の自殺もショックだったけど、
レスリーのニュースには呆然としました。合掌。

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クラシック音楽に浸る。〈楽器編〉

2003年08月19日 | 映画(番外編:映画と音楽)
『レッド・バイオリン』(1998)はカナダの作品。
17世紀にイタリアで作られ、その後、オーストリア、イギリス、中国、カナダへと、
4世紀にわたって5大陸を旅したという、伝説のレッド・バイオリン。
このバイオリンを手に演奏者は、必ずその魔力にとりつかれ、人生は破滅。
5つの国のそれぞれを舞台にバイオリンをめぐる物語が描かれ、スケールもでかい。
国際的バイオリニスト、ジョシュア・ベルの演奏も聴くことができます。

楽器を主人公にしたというのが非常におもしろいと思いました。
まるで生きてるみたいなんです。

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