夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち』

2013年07月31日 | 映画(さ行)
『スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち』(原題:Small Apartments)
監督:ジョナス・アカーランド
出演:マット・ルーカス,ジェームズ・カーン,ジョニー・ノックスヴィル,
   ビリー・クリスタル,ジェームズ・マースデン,ピーター・ストーメア他

今月上旬にレンタルが開始されたアメリカ作品、日本では未公開。
『モンスターズ・ユニバーシティ』のマイクの声を担当したビリー・クリスタルも出演。
声だけ聞いていると年を取ったとは思いませんでしたが、
こうして見ると『恋人たちの予感』(1989)の頃が嘘のよう、ジイさんの域です。

タイトルからアパート居住者の群像劇を想像していたら、ちと違いました。

ロサンゼルスのおんぼろアパート。
犬と暮らす色白ふとっちょ、ニートのフランクリン。
部屋にアルペンホルンを持ち込んで吹き鳴らす。

ここはスイスちゃうっちゅうねんと、アルペンホルンの音色に腹を立てるのは、
向かって左隣の部屋に住む中年男トミー。
毎日なにかひとつ目標を打ち立て、クリアせねば気が済まない。
実はインテリだったのに……という趣はあるが、ただのヤク中か。

やはりアルペンホルンが鬱陶しくてたまらず、しょっちゅう文句を垂れにくるのは、
右隣の年寄り男、画家のオールスパイス。
フランクリンに文句を無視され、オールスパイスは相当気が立っている。

トミーもオールスパイスも気づいちゃいないが、
フランクリンの部屋の中には横たわる男。これはいけ好かない大家のアルバート。
数日前、アルバートは家賃を取り立てにフランクリンの部屋へ。
ところがそこで事故が起き、アルバートは死んでしまったのだ。

ない知恵をひねり出すフランクリン。
アルバートのポケットには彼の自宅やら車やらの鍵。
それを携え、死体を夜中に運び出すと、アルバートの自宅へと向かう。
自殺を装えば、自分に疑いはかからないはず。

しかし、銃が暴発、テレピン油に引火などなど、
想定外のことが次々に起こり、自殺とは到底思えない状態に。
それでも満足したフランクリンは、そのまま帰宅する。
死体が半分燃えていたことから、警察の火災担当調査官バートに連絡が入るのだが……。

かなり悪趣味なシーンも多く、あまり気持ちのいいものではありません。
と思って観ていたら、ラストは意外に良い具合。

知的障害を思わせるフランクリンは、いじめられっこでみんなに馬鹿にされ、
大家からも酷い扱いを受けていました。
けれども彼を守ろうとしてくれた唯一の人間が兄のバーナード。
自身が病魔に冒されていると知ったバーナードは、
死後もフランクリンを守ろうとし、守り抜きます。

バーナードの件では、ロバード・デ・ニーロが超能力者を演じた『レッド・ライト』(2012)を思い出しました。
超能力によって、病気ではないとか治癒したとか言われた人がいたとして、
のちに本当は病気だったとわかり、手遅れだったらどうするかという話。
本作ではバーナードを狂人よばわりしたメノックス博士に
フランクリンがサラリと事実を突きつける姿が痛快でした。

悪趣味なはずが、何でしょ、この爽やかさは。

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『ゴースト・フライト407便』

2013年07月29日 | 映画(か行)
『ゴースト・フライト407便』(英題:407 Dark Flight)
監督:イサラー・ナーディー
出演:マーシャ・ワタナパーニット,ピーター・ナイト他

タイ歴代No.1ヒットのホラー映画らしいのですが、
日本での上映劇場は全国で10館に満たず、
関西では3月にシネマート心斎橋などで上映されていました。
ホラー映画は苦手な私ですが、これはなかなか笑えそう。
6月末にDVDレンタル開始となっています。

バンコクからプーケットに向けて飛び立とうとしているサンセット航空407便。
機内にはさまざまな境遇の老若男女。
パイロット志望だがそれを両親に言えずにいる少女ギフト。
ドレッドヘアの青年ウェーブと、知り合ったばかりの香港人女性アン。
空港でアンに言い寄ろうとしていた中年白人男性トニーに、
心疾患を抱える飛行機恐怖症の老婆。
異性との接触は許されていないからと、かたくなに女性を遠ざける坊さんなどなど。

こんな乗客たちを機内でもてなす客室乗務員のひとり、ネウ。
彼女はまだ新人だった10年前、フライト中に幻覚を見たとして、
長期休職を余儀なくされていたが、このたび晴れて復帰。
オカマの客室乗務員、通称王子らとともに乗り込む。

一方、ネウに想いを寄せる整備士のバンクは、
離陸しかけていた407便の下方から発せられた異音に気づき、貨物室へ。
ところが、貨物室を調べている間に突然ハッチが閉まり、
どうすることもできないまま407便は飛び立ってしまう。
与圧制御器を操作して、自分が閉じ込められていることを乗務員に知らせるが、
その頃、地上3万フィートに達した407便では異変が起こり始めていた。

『クエスチョン』は「高度12,000m 史上最狂のクイズ・ショウへようこそ」、
当然のことですが、こちらもだいたい似たような高度、
「空飛ぶお化け屋敷、あなたも乗りませんか?」というキャッチコピーです。

ま~、これがまったく怖くない。
効果音でドッキリを狙っているのに、ハラハラドキドキ感のなさは『クエスチョン』と同程度。
恐怖におびえるどころか、ふきだしたこと数回。

407便は幽霊に取り憑かれていて、乗客の何人かに乗り移ります。
まずはトニーの顔がまるでゾンビに。『エクソシスト』(1973)のように首が360度回転。これでブハッ。
「今の見た?見た?」と不安げに話し合う客室乗務員も可笑しい。

以下、もろにネタバレです。
どうやら空のこの辺りでは死亡事故が頻発しているようで、幽霊がうようよ。
10年前にネウが搭乗していたのが同じ407便で、そのさいも突然乗客らが変に。
ただひとりネウが生き残り、今回はネウに見捨てられたとして復讐を誓う先輩乗務員が取り憑いています。

バンクらがネウにどうして生き延びることができたのかと尋ねると、
「ひたすら目を閉じて、幽霊のなすがままにさせていた」と。
そこでネウにバンク、ギフトの父親やウェーブは、手を握り合うと、
「到着まで目を閉じて、幽霊に好きにさせるのが秘訣」だと考えますが、
目を開けてしまう人がやはりいるんですねぇ。

ゆえに目を閉じたままでやりすごすという方法は実りません。
そして幽霊以上に恐ろしいのがギフトの母親フェン。
見るものすべてが幽霊に見えるようになってしまった彼女は、
生き残った乗客を血祭りにあげてゆきます。
機内食などを乗せたカートが床を滑り、カトラリーが飛び出してフェンに突き刺さるシーンは圧巻(?)、爆笑。
それで絶命したかと思いきや、また起き上がるんだもん。アンタは不死身か。

最後はギフトが操縦して生還だろうと思っていたら、
ギフトはビビって操縦できず、バンクがヒーローに。
バンク、ネウ、ギフトとその父親がなんとか生き延びますが、
ネウは機内から3人を見送り、そのままサヨナラ。
自分がいるかぎり幽霊からは解放されないと思ったのか。
407便の後方窓に映るネウの顔に、ホラーの余韻を残そうとした努力の跡が。

こんな怖くないホラーならまた観ちゃいます。
『キャビン』ぐらいぶっ飛んでくれないと、高評価とはいかないですけれど。

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『モンスターズ・ユニバーシティ』

2013年07月27日 | 映画(ま行)
『モンスターズ・ユニバーシティ』(原題:Monsters University)
監督:ダン・スカンロン
声の出演:ビリー・クリスタル,ジョン・グッドマン,ヘレン・ミレン,ジョエル・マーレイ,
     ピーター・ソーン,チャーリー・デイ,ジュリア・スウィーニー他

前述の『アンコール!!』のあと、友人とランチ。
昼間からしこたま飲んでお茶とケーキで締め、友人とともに再びTOHOシネマズ梅田へ。
その友人は、単身赴任先のご主人から「『モンスターズ・ユニバーシティ』、一緒に観る?」と
先日メールが来たそうなのですが、
「そっちでひとりで観れば?」と返信したんだそうな。
そんな本作を私と一緒に観に行っていいのか!?

涙の洪水になりそうだったアニメ、『モンスターズ・インク』(2001)。
その前日譚ということで、観に行かないわけにはいきません。
家の近所では吹替版しか上映していませんが、梅田まで出れば字幕版を観られて嬉し

およそ恐ろしいとは言えない風貌のモンスター、マイク。
そんな彼の夢はモンスター界一の“怖がらせ屋”になること。
努力の甲斐あって、超難関のモンスターズ・ユニバーシティの“怖がらせ学部”への入学を果たす。

怖がらせるための知識と理論だけならば誰にも負けないが、如何せん見た目が可愛すぎる。
そんな彼の目の前に現れたのは、怖がらせ屋の名門一族に生まれたエリート、サリー。
サリーから馬鹿にされて腹を立て、ある日、大喧嘩に。
派手に物品もぶっ壊し、ハードスクラブル学長の怒りを買う。
学長は「ふたりとも怖がらせ屋に向いていない」とバッサリ、怖がらせ学部から追放を言い渡す。

意気消沈するマイクだったが、「怖がらせ大会」が催されることを思い出す。
優勝すれば怖がらせ学部に復帰、優勝できなければ永久追放。
そんな賭けを学長と交わすマイク。

しかし、大会に出場するには6人でチームを結成しなければならない。
“ウーズマ・カッパ”なる落ちこぼれの寮生4人はスカウトしたものの、あと1人足りない。
そこへサリーが参加を表明、マイクは渋々受け入れて……。

『モンスターズ・インク』のように泣けることを期待していたのですが、
これは涙は出ず、普通に楽しい作品でした。

怖がらせるという点では風貌も風格も対照的なマイクとサリーが、
最初はいがみ合っていたのに次第に心を通わせる過程が○。
マイクが考え、サリーが実行、そんな方法で学長もビックリのシーンにニッコリ。
こんな学生2名の声をあんなオッサン2人が担当しているということにもしんみり。
だからなのか、そこここに人生における苦労や切なさを感じるのでした。

最後の最後、エンドロール終了後もお見逃しなく。

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『アンコール!!』

2013年07月25日 | 映画(あ行)
『アンコール!!』(原題:Song for Marion)
監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演:テレンス・スタンプ,ヴァネッサ・レッドグレーヴ,ジェマ・アータートン,
   クリストファー・エクルストン,アン・リード,ジャメイン・ハンター他

休みを取って、高校時代の友人とのランチ前にTOHOシネマズ梅田にて。

平日の初回、私がいちばん若いんじゃないかと思うほど客の年齢層高し。
毎度思うことですが、この年齢層はやはり共感能力が豊かで、
笑い声も涙もごくごく素直に出るようです。
しかもこの日の客は『インポッシブル』のときのように
「泣きすぎやろ!」とツッコミたくなるほどでもなくて、
隣席の他人につられて普段以上に泣いてしまった箇所もいっぱい。
おかげで腫れぼったいまぶたのままランチに向かうはめになりました。

ロンドンに暮らす気むずかしい老人、アーサー。
対照的に明るく社交的な妻のマリオンを心から愛しているが、
それを口に出して表現することは到底できない。
息子のジェームズに対してもやはり同様で、
まだ幼い孫娘のジェニファーは、そんな祖父と父の関係がちょっぴり心配。

アーサーの介助もあって、普通に暮らすマリオンだが、実は余命わずか。
彼女の楽しみは歌うことで、地元のシニア合唱団“年金ズ”のメンバーだ。
練習場所への送迎はアーサーの役目。
歌の指導に当たるエリザベスやメンバーは、アーサーも加わればいいのにと思うが、
アーサーは建物内に入ることを頑なに拒否、外でマリオンを待ちつづける。

あるとき、“年金ズ”がコンクールに参加することに。
審査員がこちらに出向いて参加希望団体をチェック、それをクリアすれば本選に出場できる。
“年金ズ”は無料コンサートを開催、そこへ審査員を招待する。
地元の住民たちもたくさん訪れて、コンサートは大成功、本選出場が決まるのだが……。

その昔、ナナゲイで観た『私家版』(1996)が懐かしい名優テレンス・スタンプ
『ジュリエットからの手紙』(2010)の粋な婆さま、ヴァネッサ・レッドグレーヴ。
冒頭、「キスして。明日はもう目覚めないかもしれないから」というマリオンの言葉が、
暗さのかけらもない言い方で余計に切なくなります。

音楽教師のエリザベスが“年金ズ”のために選ぶ曲は、ポップス、ロック、ヒップホップ。
彼女が「もっとモーターヘッドに」などという台詞も笑えます。
マリオンが歌うシンディ・ローパーの“トゥルー・カラーズ”は心に染み、
原題の“Song for Marion”どおり、アーサーが歌う曲にはボロ泣き。
人の胸を打つ歌ってこういうことなんだぁとジワ~ン。
『言の葉の庭』といい、本作といい、返歌にやられました。

アメリカではエンディング曲と同じ、“Unfinishd Song”というタイトルで公開。
人生はいつも、未完成の歌。まだまだこれから。

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『25年目の弦楽四重奏』

2013年07月23日 | 映画(な行)
『25年目の弦楽四重奏』(原題:A Late Quartet)
監督:ヤーロン・ジルバーマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン,キャサリン・キーナー,クリストファー・ウォーケン,
   マーク・イヴァニール,イモージェン・プーツ,リラズ・シャルヒ他

梅田ガーデンシネマで3本ハシゴの3本目。
ちなみに、9:30の開場時に3本ともチケットを購入したので、すべて整理番号1番。
1本目2本目の間は30分ほどあったのですが、2本目と3本目の間は5分。
2本目のエンドロールが回っている途中に3本目の入場開始で、
3本目はこの日のどの作品よりも客入りが良さそうだったため、
映画が完全に終わるまでは絶対に席を立たない私もさすがに途中で退場。
入場が開始されていた向かいの劇場に1番の整理券を持って飛び込みました。

国際的な人気を誇る弦楽四重奏団“フーガ”は結成25周年を迎える。
記念の年の演奏会に彼らが選んだ曲は“ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番”。
この曲は定型の4楽章ではなく、7楽章で構成される。
しかも全楽章を“アタッカ”と呼ばれる奏法で途切れぬ演奏を求められる、演奏家泣かせの難曲。

ヴァイオリンのロバートとダニエル、ロバートの妻でヴィオラのジュリエット、
そしてチェロのピーターという4人は、リハーサルを開始。
ところが、その直後、ピーターがパーキンソン病に冒されていることが判明。
リーダー格のピーターは今季限りで引退すると宣言し、残る3人は激しく動揺する。

……こんな感じで、演奏会当日までの様子が描かれます。

第2ヴァイオリンのロバートは、これを機に第1ヴァイオリンを弾きたいと言いだし、
ジュリエットからはアナタにそんな資質はないと否定されます。
第2ヴァイオリンがいるからこその第1ヴァイオリンだと言うダニエルも、
情熱を解き放って暗譜で演奏しようというロバートの意見を却下。
それゆえなのか魔が差したのか、ロバートはフラメンコダンサーと浮気。
浮気相手はすっかりその気に、しかもその浮気が即バレてジュリエットは激怒。

ダニエルはダニエルで、ロバートとジュリエットの娘である大学生アレクサンドラの指導を始めるも、
アレクサンドラに言い寄られてコロリ、逆にぞっこんになってしまいます。
その状況もジュリエットにバレ、ロバートまでも知る場面はちょっとお笑い。

演奏をもっと聴きたかったような気もしますが、
病に冒されていちばん辛い思いをしているはずのピーターが、
3人のドタバタに巻き込まれてゲンナリしている様子が可笑しく、
演じるクリストファー・ウォーケンにお疲れさま。

“ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番”の実際の演奏を担当したのはブレンターノ弦楽四重奏団。
ピーターの後任役として実名で登場するのが現役の同団員ニナ・リー。
チェロを演奏する彼女の顔は役者とはちがって見え、まさしく本物でした。

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