夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『哭声/コクソン』

2017年03月31日 | 映画(か行)
『哭声/コクソン』(英題:The Wailing)
監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン,ファン・ジョンミン,國村隼,チョン・ウヒ,キム・ファニ他

シネ・リーブル神戸で3本ハシゴの3本目。
『わたしは、ダニエル・ブレイク』『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』→これ。

ナ・ホンジン監督は、これを含めてまだ3本しか長編作品を撮っていませんが、
『チェイサー』(2008)、『哀しき獣』(2010)、いずれもめちゃめちゃ面白かった。
ただし、いずれも暗くて重いので、精神的に元気なときでないと観られません。
本作に至っては怖くもありそうで、観ようかどうしようか迷っていました。
しかし國村隼が出演とあっては、やはり観ないと後悔しそう。

どういうなりゆきで國村隼が出演することになったのか、とにかく彼は本作で、
韓国で最も権威ある映画賞“青龍映画賞”の助演男優賞と人気スター賞(って何よ(笑))を受賞。
同映画賞史上初の外国人受賞者で、一躍韓国でも人気者になったようです。
面白かったし、観てよかったけれど、こ、こんな非科学的オチだとは。(^^;

事件など起こりそうにもないのどかな田舎の村コクソン。
警察官のジョング(クァク・ドウォン)は、妻(チャン・ソヨン)と一人娘のヒョジン(キム・ファニ)、義母の四人暮らし。
のほほんと毎日を過ごしていたが、ある日緊急で呼び出される。

どうせたいしたことではなかろうと現場へ向かうと、なんと殺人事件。
毒キノコで精神に異常を来した村人が自分の家族を殺したらしい。
信じられない惨状にジョングも同僚も言葉を失う。

それと前後して、同様の殺人事件が起こっている。
いずれの事件でも犯人は体中に奇妙な湿疹を発症しており、
正気を失った状態で現場に残っているところを病院へ収容され、
しばらくすると酷く苦しみながら死亡してしまうのだ。

村人たちの噂によれば、山中の一軒家に日本人(國村隼)が引っ越してきたころから
このような不吉なことが起こりはじめたという。
事件の目撃者を名乗る白装束の若い女(チョン・ウヒ)が、「あの男は悪霊だ」とも。

あり得ない話だと思いつつ、ジョングが捜査を進めていると、
娘のヒョジンにも湿疹が出ているのを発見。
何かに取り憑かれたような言動が見受けられるヒョジンを救うため、
ジョングは有名な祈祷師イルグァン(ファン・ジョンミン)にお祓いを依頼するのだが……。

悪霊ではと噂される日本人を國村隼が演じているわけですが、ド迫力。
ふんどし一丁で口のまわりを血だらけにして鹿を食らったり、
目を赤く光らせて村人の夢の中に登場したり。
彼も怖いけれど、それ以上に不気味なのが目撃者だという女性。
悪霊は本当に國村隼なのか彼女なのか、惑わされます。

『エクソシスト』(1973)か『震える舌』(1980)ばりに恐ろしい、
ヒョジンを演じる子役の演技も圧巻。
韓国のお祓いはこんなふうになされるのかとなかなか興味深い。

こうして怖くも面白く観ていたのですが、
ゾンビかよと笑ってしまうシーンも。そんなん想像もしてへんかったし!
そしてオチはそう来るのですね。救いがなくて嫌らしさMAX。
もうちょっと科学的に説明のつくラストを期待していました。
ミステリーじゃなくてオカルトホラーのオチに苦笑。
こういうオチならば、腑に落ちないというのかズルイなぁと思うシーンも。

寝られないほど怖くはありません。嫌だなぁというだけで。
全部書きたいぐらいですが、國村隼は観てほしいので、ネタバレは止めておきます。

ちなみにタイトルは、村の名前である「コクソン」に
「泣き叫ぶ」という意味の「哭声」の字を当てたものです。
このタイトルは上手い。

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『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』

2017年03月30日 | 映画(や行)
『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』(原題:The Music of Strangers)
監督:モーガン・ネヴィル
出演:ヨーヨー・マ,キナン・アズメ,ケイハン・カルホール,クリスティーナ・パト,ウー・マン,
   梅崎康二郎,ボビー・マクファーリン,オスバルド・ゴリホフ,タン・ドゥン他

前述の『わたしは、ダニエル・ブレイク』に続き、
シネ・リーブル神戸で3本ハシゴの2本目。

ヨーヨー・マは好きですし、梅田で観ようと思えば観られる機会が何度かあったのですが、
なんとなく音楽の心地よさに眠ってしまいそうでパスしてきました。
この日は3本ハシゴするにはほかに選択肢がなく。
だけど想像していたドキュメンタリーとはちょっとちがって、とてもアグレッシブ。
睡魔に襲われるひまなんてありませんでした。
私と同年代以上のお客さんで満席。人気を侮っていました。ごめんね、ヨーヨー。

さて、世界的チェリスト、ヨーヨー・マが「音の文化遺産」を世界に発信しようと
1998年に立ち上げた“シルクロード・プロジェクト”。
伝統的な音楽と現代の音楽との関わりを追求すべく、2000年にワークショップを開催。
そこに集った演奏家を中心とするメンバーが、
“シルクロード・アンサンブル”として何十カ国もで演奏会をおこなっています。
そこに至る過程、参加者の想い、演奏の様子を収めたドキュメンタリーで、
監督は『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』(2013)のモーガン・ネヴィルです。

シルクロードに今も息づく民族音楽。
中国琵琶や笙、ケマンチェ、ガイタ(バグパイプ)など、伝統的な楽器の演奏家が、
伝統的な奏法のみにとらわれることなく、創意を加えて。
絶えず紛争が繰り広げられている国に生まれついた演奏家も多く、
親がそこから逃れさせるために音楽を始めさせたというケースも。
自らの国に想いを馳せ、平和を願って奏でられる音楽たち。

しかし、政治に絡められた音楽は続かないという言葉にハッとしました。
ベートーベンの時代の王が誰だったかなんて、世間は気にしないし覚えちゃいないと。

音楽で銃弾は止められない。音楽が空腹を満たすこともできない。
それでも心を豊かにすることはできるかもしれないし、
子どもたちをちょっぴり笑顔にすることはできるかもしれません。

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『わたしは、ダニエル・ブレイク』

2017年03月29日 | 映画(わ行)
『わたしは、ダニエル・ブレイク』(原題:I, Daniel Blake)
監督:ケン・ローチ
出演:デイヴ・ジョーンズ,ヘイリー・スクワイアーズ,ディラン・フィリップ・マキアナン,
   ブリアナ・シャン,ケイト・ラッター,シャロン・パーシー,ケマ・シカズウェ他

先週の金曜日、次年度に繰り越せない有休あと1日を使って休みました。
あと時間休の1時間が残っているのですが、1時間だけでは映画も観られない。
でも流してしまうのはもったいないし、今週どこで何のために使いましょうかね。

時間休のことはいいとして。
今年度は半休の楽しさに目覚めて午後休を取りまくったため、
丸1日休むのは久しぶり。どうしたら有効に使えるか。
晩に神戸元町の大丸へ寄ってから六甲で食事するつもりだったので、
車は六甲駅近くのコインパーキングに駐めて、
電車で六甲から神戸三宮へ向かうことに。

朝4時半ぐらいに起きて、6時半すぎにダンナを箕面駅で送る。
一旦家に帰ってゴミ出しなどしたのち、7時すぎには出発。
名神高速で吹田から西宮、阪神高速神戸線で魚崎まで行こうとしたら、
西宮から魚崎まで渋滞中、35分もかかるとの表示。
それは嫌だなぁと阪神に乗るのを止めて、下道で六甲へ。
高速が混んでいるときは下道もそこそこ混んではいるけれど、
結局西宮を出てから40分後には六甲のパーキングへ入庫完了しましたから、
あのまま高速に乗るよりも下道が早かったようです。

ほぼ想定していたとおりの時間に六甲から阪急電車に乗車。
神戸三宮に9時に着いて、銀行で通帳を更新。
ドトールでコーヒーを飲み、ローソンでレッドブル購入。
元町のシネ・リーブル神戸に向かいました。
シネ・リーブル梅田にはわりとよく行きますが、神戸は久しぶり。
どうやらこのとき以来だから、ほぼ1年4カ月ぶり。

どんだけ長い前置きなのか。いつもすみません。(^^;

ということで、シネ・リーブル神戸で3本ハシゴの1本目。
社会派の名匠ケン・ローチ監督の作品です。
社会的弱者を主人公に描く同監督の作品は、
厳しさの中にもユーモアがちりばめられていることが多いのですが、
本作はユーモアさえも奪われてしまうほどの辛い現実。

イギリス北東部、ニューカッスル
59歳のダニエル・ブレイクは、大工の道40年の大ベテラン。
実直な人柄、しかし偏屈ではない。
妻に先立たれた後もきちんとした生活を送ってきた。

ところが心臓を患っていることがわかり、
足場から落ちかけたことからドクターストップがかかる。
仕方なく国の支援を受けようと手続きに出向くが、
支援の受給資格があるかどうかの調査では、
心臓とはまったく関係ないとおぼしきことばかり聞かれる。
文句を言おうとすると態度が悪いと諌められ、
結果、受給の資格なしとの通知が届く。
納得がいかずに電話をかけると、再申請の手続きをせよとの返答。

再申請するとして、しばらく収入ゼロの状態が続くのは困る。
ならばと今度は求職センターへ出向くダニエル。
求職の申請をすれば、就職できるまで手当を受けることができるからだ。
用紙をくれと言うと、オンラインで申請するようにと言われる。

何もかもが理不尽で途方に暮れ、憤る気持ちを抑えていると、
二人の子どもを連れた若い女性ケイティが職員と押し問答しているのを見かける。
あまりに心ない職員の対応に、他人事ながらぶち切れたダニエルは、
ケイティ親子ともどもセンターから追い出されてしまうのだが……。

真面目にこつこつ働いて、きっちり税金を納めてきた。
贅沢を言っているわけでも、楽して儲けようとしているわけでもない。
当然の権利を主張しているだけなのに。
パソコンなど触ったことがないから役所まで出向いているのに、
何の説明も受けられず、サイトを見るようにと言われるだけ。
病気で働けない間の支援を求めて却下されたから、
仕方なく求職センターへ行けば、求職活動の証拠が必要と言われ、
履歴書を作成してあちこち回るはめに。
その履歴書を見た雇い主から採用の連絡があったけれど、
就職できない旨を伝えれば、雇い主が「バカにしているのか」と怒る。

官僚的システムの犠牲となったダニエルは人のことなどかまっている場合ではないのに、
ケイティとその娘デイジー、息子ディランに手を貸さずにはいられません。

希望はあると思いたい。でも見事に打ち砕かれます。
いくらダニエルの行動を称えてくれる人がいても、システムは変わらない。
ケン・ローチ監督の最近の作品では、いちばん辛かったかも。
それでも観るべき1本です。

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『ひるね姫 知らないワタシの物語』

2017年03月27日 | 映画(は行)
『ひるね姫 知らないワタシの物語』
監督:神山健治
声の出演:高畑充希,満島真之介,古田新太,釘宮理恵,高木渉,
     前野朋哉,清水理沙,高橋英樹,江口洋介他

TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『SING/シング』とハシゴ。

タイムスリップがここ数年の流行なのかと思ったら、
『君の名は。』(2016)みたいな夢と現実がつながっているのも流行なのでしょうか。
「ひるね姫」で検索をかけると、推測変換で「パクリ」と出る。
似た設定ではありますが、観てみれば混同するほど似てはおらず。
クリエイティブな人が考えることは時に似てしまっても仕方ありません。
いずれにしても凡人にはおよそ考えつかない設定です(笑)。

岡山県倉敷市に暮らす女子高生の森川ココネ。
母親の記憶はほとんどなく、父親のモモタローと二人暮らし。
モモタローは無口で無愛想だが、二人はとても仲の良い親子。
ココネの特技は昼寝で、授業中もしょっちゅう居眠り。
そんな彼女は最近ふしぎな夢をくりかえし見ている。

2020年、東京オリンピックを3日後に控えた日。
突然警察がやってきて、何の容疑かモモタローを東京へ連れて行く。
日本でトップシェアを誇る志島自動車会社からモモタローがタブレットを盗んだと、
志島の幹部である渡辺一郎が警察に訴えているらしい。

お父さんは元ヤンだけど、盗みなど働くわけがない。
ココネは真実を知りたいと、幼なじみのモリオに助けを求める。
東京の大学にかようモリオはたまたま夏休みで帰省中。
タブレットを携えたココネは、モモタローが改造したサイドカーに乗り、
モリオの運転で東京へと向かう。

その途中、自分がくりかえし見ているあの夢の中に
事件解決への糸口があることに気づくのだが……。

夢と現実とを行きつ戻りつするロードムービー。
夢の中ならば魔法が使えるココネは、困ると昼寝。
夢の中で上手く立ち回れたなら、現実でもそうなっているとは都合がいい(笑)。

この手の話はやっぱりところどころ難しく、
自分が話にちゃんとついていけているのかどうかすらわかりません。
わからなくてもなんとなく面白いのですけれど。

モモタローがタイプ。それだけで個人的にはOKです(笑)。
江口洋介の声と合っていて、モモタローが出てくるだけでウキウキしました。
それに自動運転で勝手に着いた先が道頓堀。その風景が嬉しい。

東京オリンピックは楽しみだけど、
車の運転が嫌いじゃない者としては、全自動運転の車は嫌だなぁ。

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『SING/シング』

2017年03月26日 | 映画(さ行)
『SING/シング』(原題:Sing)
監督:ガース・ジェニングス
声の出演:マシュー・マコノヒー,リース・ウィザースプーン,セス・マクファーレン,
     スカーレット・ヨハンソン,ジョン・C・ライリー,タロン・エジャトン他

春分の日、サッカーに行くダンナを吹田方面へ車で送ったあと、
TOHOシネマズ伊丹で映画を2本観ることに。
オンライン予約で座席は押さえ済み。
上映開始まではずいぶん時間があるので、一旦帰宅しようかと思ったけれど、
どこかで優雅にお茶でも飲みながら本を読みたい。
いつも通り過ぎるだけだったヒロコーヒー伊丹いながわ店へ行ってみよう。

常に大にぎわいの同店に9:30頃到着。すでに第1駐車場は満車。
愛想のいい警備員さんから第2駐車場へ案内されて入店。
大勢待っている人がいたけれど、私は一人なので5分ほどで席に。
モーニングのトーストにコーヒーのポットサービスとサラダも付けていただく。
持参した本は西尾維新の『クビキリサイクル』が佳境に入ったところで楽しい。

映画は11:00から。ヒロからイオンモール伊丹までは5分もあれば行ける距離。
10:40にヒロを出たのですけれど、甘かった。何このモール渋滞。
信号が変わってもまったく進まず、永遠に着かないかと思うほど。
本編が始まる11:10すぎに着くのも無理そうで凹む。
無駄な抵抗と思いつつ、いつもとちがう交差点で曲がってみたらちょっとは進み、
なんとか11:20に劇場入り。永遠に着かないと思ったほどは遅くならなくてホッ。

『モアナと伝説の海』と同じく、これも字幕版を観ました。

コアラのバスター・ムーンは、亡き父から受け継いだ劇場の支配人。
しかし、かつてのにぎわいはどこへやら、劇場は潰れかけ。
なんとか元の活気を取り戻そうと、バスターは歌のコンテストを企画。
出演者を募るオーディション開催を決め、チラシの作成をミス・クローリーに指示する。

ところが、バスターの秘書で高齢のイグアナ、ミス・クローリーは、
優勝賞金額として千ドルと記載するはずが10万ドルと書いてしまう。
そんなこととはつゆ知らず、バスターは劇場に殺到した応募者に大喜び。

やってきたのは25匹の子どもを育てるブタの夫人、ロジータ。
同じくブタで、いささかノリのよすぎるグンター。
自信過剰のネズミ、マイク。あがり症のゾウの少女、ミーナ。
ロックを愛するヤマアラシの少女、アッシュ。
ギャング団のボスを父親に持つゴリラの青年、ジョニーなどなど。

こうして盛大に始まったオーディション。
途中、バスターはミス・クローリーのとんでもない書き間違いに気づくが、
親友でヒツジのエディが止めるのも聞かず、
なんとかなるさと賞金額の誤りを訂正することもなく続行して……。

次々と繰り出されるヒット曲が楽しい。
特に、自信を失ったロジータがスーパーでかかるジプシー・キングスの曲に
思わず歌って踊り出すシーンがサイコー。
マシュー・マコノヒーが声を担当するバスターは歌いませんが、
俳優陣がみんなものすごく歌が上手くて圧巻です。
ミーナ役のトリー・ケリーは歌手だから上手いのは当然として、
ロジータ役のリース・ウィザースプーン、ジョニー役のタロン・エジャトン、
ギターをかき鳴らして歌うアッシュ役のスカーレット・ヨハンソン
そろいもそろって素晴らしい。

歌い出せばなんとかなる。
これは吹替版も観てみたいです。

ちなみに監督のガース・ジェニングスはミス・クローリー役の声で出演。
こんな声を自分に当てるなんて、楽しい演出だと思います。

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