夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ネコのミヌース』

2006年01月28日 | 映画(な行)
『ネコのミヌース』(原題:Minoes)
監督:フィンセント・バル
出演:カリス・ファン・ハウテン,テオ・マーセン,サラ・バンニール他

2001年のオランダの作品。
日本では昨年公開、今週DVD化されたところ。
オランダでは「タマ」に当たる猫の名前が「ミヌース」だそうな。

新聞記者のティベは猫が好き。
今日も猫ネタを記事にしようとするが、女編集長は苦笑い。
明日までにまともな記事が書けなければクビだと宣告される。

そもそもティベはインタビューが苦手。
事件の当事者に強引に面会するなんて、気弱な彼にはできないのだ。
クビのかかったこの日ですら、通りかかった事故現場を敢えなく退散。

明日は失業と暗い気持ちで帰宅する途中、
犬に吠えられて木の上に逃げている女性を発見。
彼女が下りるのを手伝うが、
「犬を見ると木に登りたくなる」と語ると、彼女はどこかへ走り去る。

その夜、部屋の片隅で物音がする。
テーブルの下を覗いてみると、さっきの女性が魚の骨をかじっていた。
彼女の名前はミヌース。
開いていた窓から勝手に入ってきたらしい。

行くところがないという彼女に、
特ダネを集めてきてくれるなら泊めてもいいとティベは言う。
するとミヌースは、墓地に金貨が眠っていると答える。
牧師の飼い猫から教えてもらったと。
ティベが半信半疑で墓地を訪れると、本当に金貨が出てきて大スクープに。

以後、猫の情報網を駆使したネタに助けられ、ティベは一躍有名記者に。
やがて、町の有力者エレメートが
よからぬ計画を立てていることを知るのだが……。

原作は同名の児童文学。
突然人間に姿を変えてしまったミヌースの、
その仕草がめちゃめちゃ可愛い。

挨拶は鼻をすりすり、好きな人にもすりすり。
ダンボール箱で眠り、揺れるものには目がラリラリ。
こんな彼女をまさか猫だとは思わず、
猫っぽいクセの持ち主だと理解したティベが、
「魚屋さんにスリスリしちゃダメだよ」と言いつけるのも可笑しい。

猫たちは猫たちで、ミヌースが人間の姿に変わったと信じられず、
半端にすごむシーンはその間(ま)も絶妙。
「本当の猫ならもちろん知ってるよな…ニャオニャオの歌」。

観てる間ずっと、幸せでニチャニチャ。
ネコ好き、必見。

余談ですが、ティベ役の俳優のことを
「アントニオ・バンデラスからアクを抜いたみたいな顔してるねん」
とダンナに説明したら一言、「そら普通の顔やろ」。
ごもっともで。

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『彼女を信じないでください』

2006年01月25日 | 映画(か行)
『彼女を信じないでください』(英題:Too Beautiful To Lie)
監督:ペ・ヒョンジュン
出演:キム・ハヌル,カン・ドンウォン,ソン・ジェホ他

ブームになるものには背を向けたくなるタチなもんで、
最近韓国映画は避けていましたが、
他に借りたいものがなくて久々に。

天性の嘘つき、ヨンジュ(松嶋菜々子似)は詐欺罪で服役中。
しかし、刑務官の前でも純真可憐を装って印象を着実にアップ、仮釈放に。

たったひとりの身内である姉の結婚式に出席するため、
彼女は服も気持ちも新たに列車に乗り込む。
うとうとと居眠りをしてふと気づくと、
自分のスカートの下に潜り込んでいる男が。
立ち上がった彼女は「変態!」と叫んで男を叩き倒す。

ようやく落ち着いて男の釈明を聞けば、
彼はヨンガンという町に暮らす薬剤師のヒチョルで、
これから恋人にプロポーズしにいくところらしい。
恋人に贈るつもりの母の形見の指輪が、
列車の揺れたはずみにヨンジュの足元に転がり、
それを拾おうとしていたのだと。

一件落着後、ヒチョルがトイレに行こうと席を立ったとき、
別の男にポケットから指輪をスラれるのをヨンジュは目撃する。
ヒチョルはまったく気づいていない。

指輪を取り返してやりたいと思うヨンジュだが、
仮釈放の身で騒ぎを起こすとまた刑務所に逆戻りだ。
下車した犯人を追いかけると、得意の嘘で気を引き、指輪をスリ返す。

ところが再び彼女が乗り込む前に列車が出発。
カバンは座席に置いたまま。
おそらくヒチョルが預かっていてくれるだろうと、彼女はヨンドンに向かう。

ヨンドンでヒチョルの家を訪ねると、彼は町長の息子だった。
指輪とバッグを交換したいだけなのに、
当のヒチョルは指輪をスラれたことを知らないまま、
恋人に会いに行ったきり。

突然やってきたヨンジュのことを不審がる家族に説明するには複雑すぎ、
指輪泥棒と間違われても困るヨンジュは、自分は彼の婚約者だと嘘をつく。
やがて彼女はヒチョルに捨てられ妊娠中の身と、話はあらぬ展開に。

しばらく離れていた韓国映画ですが、
やっぱりこういうラブコメはうまいです。
普通に楽しんで適度に泣ける1本。

韓国の田舎の慣習もなんとなくわかるほか、
町対抗の「Mr.唐辛子コンテスト」などの行事も愉快。
それに大家族の様子が伝わってきます。
おばちゃんが3人寄れば、どんな話もご近所さんに筒抜けなのは何処も同じ?

悪意のない嘘はいつかホントになってもいいですね。

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『ホテル・ルワンダ』とドン・チードル

2006年01月19日 | 映画(は行)
『映画秘宝』ではずいぶん前から紹介されていたにもかかわらず、
観客動員がまったく見込めないので、
日本では公開が危ぶまれてた『ホテル・ルワンダ』。

1994年にアフリカのルワンダで実際に起こった、
フツ族によるツチ族の大量虐殺事件を描いた作品です。
人口850万人足らずの小国ルワンダは、
1962年に独立するまではベルギーの統治下にありました。
ベルギー人は、多数派のフツ族よりも少数派のツチ族のほうを上とみなし、
さまざまな面でツチ族を優遇したそうです。
不満の募るフツ族は、独立すると同時に政権を握ります。

そして1994年、フツ族の大統領を乗せた飛行機が
何者かによって撃墜されたことをきっかけに、フツ族はツチ族の虐殺を開始。
人口の10分の1である約80万人が殺害されたのです。

『ホテル・ルワンダ』は、そんな虐殺の渦中、
ホテルの副支配人でフツ族のポールが、
駆け込んでくるツチ族の人びとを匿うという、
まさに『シンドラーのリスト』(1993)のオスカー・シンドラー、
はたまた『ビザと美徳』(1997)の杉原千畝。

日本で公開が見送られてきたのは、
主演のドン・チードルが知名度イマイチのせいです。
配給会社としては、主演にデンゼル・ワシントンか
ウェズリー・スナイプスあたりを起用したかったらしいのですが、
監督が「絶対、ドン・チードル」と譲らなかったために
公開しないことが決定的に。

ところが、公開を求める署名運動が起こりました。
それが実って先週末から東京で公開。
来月以降、関西でも公開されることに。

知名度が低いと言われたドン・チードルですが、
『オーシャンズ12』(2004)では重要なメンバーとして活躍。
『16歳の合衆国』(2002)や『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』(2004)でも
印象に残る脇役を務めています。
基本は優しくてちょっと情けない顔の似合う善人役。
カントリー音楽好きの黒人(一般的に黒人はカントリー嫌い)を演じた
『ブギーナイツ』(1997)が笑かしてくれます。

『ホテル・ルワンダ』の共演者には、
知名度のあるわりに客を呼べないと言われているニック・ノルティ。
おなじみのジャン・レノやホアキン・フェニックスなど。
公開しないと決めたおかげで一気に話題作になった『ホテル・ルワンダ』。
めっちゃ楽しみです。

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『スケルトン・キー』

2006年01月16日 | 映画(さ行)
『スケルトン・キー』(原題:The Skeleton Key)
監督:イアン・ソフトリー
出演:ケイト・ハドソン,ジーナ・ローランズ,ジョン・ハート他

意を決して借りた、劇場未公開のオカルト・ホラー。

ルイジアナ州、ニューオーリンズが舞台。
ハリケーン“カトリーナ”に直撃されたこの地は、
ジャズ発祥の地として活気溢れるイメージがある一方、
湿地帯が多く、そのじめじめした暗い雰囲気が
かねてからホラーやミステリーに使われ易いようです。

『エンゼル・ハート』(1987)と同じく、
本作もブードゥー教がおどろおどろしさの基本。
ブードゥー教とはカリブ海周辺の黒人奴隷の間で広まった信仰で、
ニューオーリンズにもたくさんの信者がいるそうです。
本作に登場するのは「ブードゥー」ではなく「フードゥー」で、
ブードゥーは宗教、フードゥーは呪術であると説明されています。

病院に勤務する看護師のキャロラインは、
身寄りのない老人が亡くなると、ビジネスライクにさっさと病床を片づけることに嫌気がさす。
余命わずかな老人の住み込み介護の求人を新聞広告で見つけ、さっそく応募する。

面接に訪れたのは沼地にたたずむ屋敷。
脳梗塞で倒れて寝たきりのベンと、その妻のヴァイオレットが暮らす。
夫妻の資産管理を担当する弁護士のルークがキャロラインに応対する。
ヴァイオレットはキャロラインを気に入らない様子で、
「彼女にはこの家を理解できない」と不可解なことを口走る。
辞退しようとするキャロラインにルークが懇願。

こうして住み込むことになったキャロラインは、
ヴァイオレットから屋敷を案内され、
施錠された30もの部屋を1本で開けられるというマスターキーを受け取る。

ある日、マスターキーでも開かない部屋が
屋根裏にあることにキャロラインは気づく。
ピンで鍵穴をこじ開けて入ってみると、
そこにはフードゥーに関する本やレコード、
ホルマリンの瓶、布で覆われた無数の鏡が。
やがてキャロラインはこの屋敷の秘密を知り……。

凝った映像は何もないのに、、役者がみんな巧くて怖いんです。
観終わったときは平気だったのですが、寝る前になったら思い出してゾワ~ッ。
塩盛りを思わせるレンガくずや、
土地の人が食べる生牡蠣も不気味さを煽ります。
両脚を骨折しても這い続けるヴァイオレットの姿は
『運命を分けたザイル』(2003)の登山家より凄絶。

信じる者は救われると言うけれど、
信じる者は呪われる。

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『チーム★アメリカ ワールドポリス』

2006年01月13日 | 映画(た行)
『チーム★アメリカ ワールドポリス』(原題:Team America: World Police)
監督:トレイ・パーカー
声の出演:トレイ・パーカー,マット・ストーン,クリステン・ミラー他

操り人形の映画なのにR-18の成人映画ってどういうことよ。
アメリカのタブーを知ることができて私は貴重だと思っている悪名高きアニメ、
『サウスパーク』の作者コンビが、『サンダーバード』に敬意を表して。

まるでサンダーバードな組織、チームアメリカは、
多発するテロを弾圧するために結成された国際警備部隊。
パリでテロが計画されているとの情報をキャッチし、チームアメリカが駆けつける。
頭にターバンを巻いた不審者を次々と射殺。
テロリストを一掃したかと思われたとき、
隊員のカーソンが同僚のリサにプロポーズする。
が、まだ生き残っていたテロリストがカーソンを襲撃。
気づいた隊員が逆襲するが、カーソンは命を落とす。
悲しみに暮れる隊員たち。

カーソンの穴を埋めるため、
チームアメリカの総司令官スポッツウッドがスカウトしたのは、
舞台俳優のゲイリー。
演技の達人ならば囮捜査にうってつけだと見込まれたからだ。
最初は乗り気でなかったゲイリーだが、
いつのまにか愛国心が芽生え、なんとなく引き受けてしまう。

一方、世界平和のためだと言いつつ破壊行為を続けるチームアメリカを
ハリウッドの俳優たちは批判する。
そんな俳優たちを支援する素振りを見せながら
強力な兵器を世界へ送り込もうと目論む人物、その人物こそテロの首謀者。
北朝鮮の将軍様、金正日(キム・ジョンイル)だった。
さて、将軍様の陰謀を暴いて世界を救えるのか!?

と、こんなストーリーです。
チームアメリカはテロリストを追いつつ、
名所という名所をぶっ壊します。
ルーヴル美術館はミサイルでこっぱみじん、
エッフェル塔やピラミッドも大破、パナマ運河の決壊はド迫力。

18禁映画に認定された所以は、史上初、ポルノ顔負けの操り人形同士の絡み。
もらいゲロしてしまいそうな嘔吐シーンは
「汚い~」と言いつつ、ワロてしまいます。
将軍様が“I'm So Lonely”を訛った英語で熱唱。
ショーン・ペン、スーザン・サランドンなど、
名だたる俳優たちもぶった切られる始末。
ブッシュの国ってこうなのよと言いたげでありながら、
それに反対を唱える人たちもどうなのよ?と言いたげで、
ここまで無茶苦茶できるのはアホでしょう。脱帽。

ミニチュアの風景は凝りまくりなので必見。
パリの石畳はクロワッサン!

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