夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ディアトロフ・インシデント』

2013年08月31日 | 映画(た行)
『ディアトロフ・インシデント』(原題:The Dyatlov Pass Incident)
監督:レニー・ハーリン
出演:ホリー・ゴス,マット・ストーキー,ルーク・オルブライト,
   ライアン・ホーリー,ジェマ・アトキンソン他

映画を観るときのスケジューリングについてだけは、
“月曜から夜ふかし”の桐谷さん並みだと評価されている私。(^o^)
なのに今回に限ってはしくじってしまいました。

前述の『タイピスト!』と一緒にチケットを購入した本作。
ハシゴする場合、普段ならもちろん1本目の終映時間を確かめるのですが、
なぜかこの日は確かめずに本作のチケットを買ってしまいました。

『タイピスト!』の上映時間は18:15~20:15。
こんなに長い作品だとは思わなかったんです。90分ぐらいの作品かと。
手がこんなふうになってから腕時計もしなくなったので、時間もわからず、
なんとなくずいぶん長い気がする、もしかしてもう20:00過ぎてる?

そう、本作の上映開始時間は20:00。
でも、そんなだったらチケット購入時に言ってくれるんじゃないかと。
暢気にエンドロール終了までゆっくり座り、
出てみると向かいのスクリーン扉前でまるで私の出を待っているかのような係の人。
え~、やっぱりもう始まってる~、けどトイレに行きたいし。

あきらめてトイレを済ませ、20:20に席に着きました。
たぶん本編開始後10分は経っています。
意味がよくわからないけれど、必死のぱっちでついていくことに。
ちなみに、本編開始に間に合わなかったのはこれに次いで2度目。

アメリカ/イギリス/ロシア作品で、
監督は娯楽大作映画の巨匠、フィンランド出身のレニー・ハーリン。

1959年、旧ソ連のウラル山脈で、9人の学生登山グループが謎の死を遂げる。
この事件に興味を持ったアメリカ人学生、ホリー、ジェンセン、JP、アンディ、デニースの5人は、
現地で数日間かけて調査をおこなおうと、極寒のウラル山脈へ向かうのだが……。

おそらく観逃した最初の10分間で、事件の詳細や関係者らの話が紹介されたかと。
私が観はじめたのは、学生5人が現地入りしようというところでした。

「ディアトロフ峠事件」は実在の事件らしいのですが、
ネットで調べても本作のこと以外には日本語の記事がほとんど出てきません。
徹底的に隠されていた機密扱いの事件かと思うと余計に恐ろしく。

序盤は数々のアクション大作を撮ってきた監督と思えないほど地味なモキュメンタリー
学生がカメラ片手に取材を続ける様子が淡々と。
監督が本領を発揮するのは、現地の雪山で学生たちが雪崩に遭うシーンから。
これはさすが『クリフハンガー』(1993)の監督です。

ここから完全ネタバレモードで。

雪山に入る前、登山口までトラックに乗せてくれた男が、
ついでに事件当時の現場目撃者の女性アリアに会わせてくれます。
アリアが言うには、遺体は9人ではなく、11人だったと。
絶対にそれはまちがいないとアリアは主張します。

雪山に入り、テントを張る5人。
ホリーとジェンセンは、夜間に周囲を探索中、雪に埋もれた扉を発見。
夜が明けてからみんなに話して中に入ってみようと決めます。

ところが翌朝雪崩に襲われ、デニースが死亡、アンディが大けが。
救助を求めるため照明弾を打ち上げたところ、誰かがやってきます。
照明弾を見てからにしては到着が早すぎる。
彼らは救助に来てくれたわけではなく、何かを知ってしまったホリーたちを抹殺に来たのでした。

ホリー、ジェンセン、JPは、見つけた扉をなんとか開けて中に。
すると、追ってきた男たちは外側から扉をロックしてしまいます。
この建物は旧ソ連の軍事施設だったらしく、おどろおどろしい雰囲気。

建物内は人型の化け物の巣窟となっていて、これが気味悪いの何のって。
JPはお陀仏、生き延びたホリーとジェンセンが逃げ込んだ部屋には
テレポーテーション(瞬間移動)できる空間が。

外に出て行くことはできないとなれば、ホリーとジェンセンの選択肢は1つのみ。
瞬間移動先として想定するのは最近通った確実にイメージできる場所が良いからと、
2人は雪山の扉のすぐ外を想像して念じます。

こうして2人は移動は果たしたものの、扉の前で遺体に。
これがアリアの目撃した10人目と11人目の遺体だったわけですね。
2人の身元がわからないから、9人の遺体とは分けられて、
こっそり軍事施設の中へと運び込まれます。
瞬間移動中に変異してしまった2人(♀と♂)は、一室で怪物となって息を吹き返し、繁殖していく……。

と、私は理解しましたが、合っているのかどうか不明。(^^;
ホリーが異様にこの事件に惹かれると話していたのも、帰巣本能ゆえだったかと。

実際にあった事件が基ではあるものの、
化け物まで出てきたくだりでは、監督の暴走ぶりにワロてしまいました。
こんなのを観たら寝つけなくなるかなぁと心配でしたが、
あまりの暴走に怖さは吹っ飛んで笑い、逆にしっかり眠れました。

好きだなぁ、こういう無茶ぶり。

〈追記〉本作公開後、ずいぶん経ってから再び調べてみたら、
    ウィキペディアに「ディアトロフ峠事件」について載っているではありませぬか。
    公開時にはなかったはず。ボリュームたっぷりの記事をUPした人、お疲れさま!

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『タイピスト!』

2013年08月29日 | 映画(た行)
『タイピスト!』(原題:Populaire)
監督:レジス・ロワンサル
出演:ロマン・デュリス,デボラ・フランソワ,ベレニス・ベジョ,ショーン・ベンソン,
   ミュウ=ミュウ,メラニー・ベルニエ,ニコラ・ブドス,エディ・ミッチェル他

金曜日の帰りは、たいていどこぞのパン屋に寄ります。
通勤経路から離れずに済む北摂のパン屋に寄ることがほとんどですが、
先週の金曜日は翌日がダンナの帰国日で、映画三昧最後のチャンス。
ならば梅田まで行ってパンを買うついでに映画を観ようと。
いや、映画を観るついでにパンを買うというほうが正しいのか。(^^;

17:15の終業後、18:15上映開始の映画に間に合うかはビミョー。
千里中央へ同僚2人を送り(なぜ急いでいるのに送るのかって、この時刻の新御堂筋はダダ混みで、
中央環状線本線から新御に入るよりも、手前でいったん中環を離れ、
千里阪急ホテルの前で同僚を下ろしてから新御に合流するほうが早いんです)、いざ梅田へ。

合流した新御はいつもどおり混んではいましたがマシなほう、間に合いそう。
結局18:05に梅田スカイビル近くのタイムズに駐め、
ウェスティンホテル大阪内のペストリーショップ“コンディ”へ。
シネ・リーブル梅田に到着すると、予告編が始まったところ。セーフ。

1950年代のフランス。
田舎町で雑貨店を営む父親のもとを離れる決意をした娘、ローズ・パンフィル。
町一番の富裕な男性との縁談話が持ち上がっていたのに、
どうしても都会で仕事に就きたいと言うのだ。
どうせすぐに帰ってくるに決まっていると、父親は冷ややかなそぶり。

そんなわけで、都会に出てきたローズは、ある保険会社の秘書に応募。
秘書の仕事といえば女性の憧れの的、面接を待つのは「出来る女」を自負する人ばかり。

やがてローズの順番が回ってくるが、何をやっても駄目っぽい。
雇い主のルイ・エシャールが面接を早々と打ち切ろうとしたところ、
ローズは唯一の特技であるタイプライターを打ち始める。しかも指1本で。
そのスピードにルイは仰天、ローズを採用する。

案の定、タイプ以外は酷いありさま。空気も読めず、ミス連発。
1週間の試用を経て、解雇されて当然の秘書の出来だったが、
もしもタイプライターの早打ち世界大会に出場するならば
本採用してもいいとルイから言い渡されて……。

ルイ役を演じるロマン・デュリス、昔は本当に美形だったのに、
どんどん崩れてきて、なんでこうなっちゃったのと思います。
けれども口元が野卑になればなるほど、こうしたコメディが合うように。
しかもどこか色っぽくて、切ない心を抱えた男性を演じるのがとても上手い。

ルイがかつて想いを寄せていた、今は親友の妻であるマリー役には、
『アーティスト』(2011)のヒロイン、ベレニス・ベジョ。
その言動がめちゃくちゃ男前で、惚れてしまいそうです。
『譜めくりの女』(2006)ではゾッとさせられたデボラ・フランソワは、一転キュートなローズ。

タイプの練習風景も面白い。
指1本のまま臨むのかと思いきや、やはりそれでは駄目だと、指10本の特訓。
世界大会ともなるとほとんどスポーツで、持久力も問われます。
ルイがローズに課す練習も、タイプの前のみならず、ジョギングもピアノも。
最初は滑稽な走り方だったローズが、次第にさまになった走り方に。

オープニングの色彩から楽しくて、もちろんハッピーエンド。
レトロなフランスの雰囲気が楽しめます。

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『ワールド・ウォーZ』

2013年08月27日 | 映画(わ行)
『ワールド・ウォーZ』(原題:World War Z)
監督:マーク・フォースター
出演:ブラッド・ピット,ミレイユ・イーノス,ジェームズ・バッジ・デール,
   ダニエラ・ケルテス,デヴィッド・モース,ルディ・ボーケン他

TOHOシネマズなんばにて、2本ハシゴの2本目。

ドイツ出身のマーク・フォースター監督。
いったいどの路線がお気に入りなのかわからないほど、いろんなタイプの作品を撮っています。
『チョコレート』(2001)、『ネバーランド』(2004)、『ステイ』(2005)、『主人公は僕だった』(2006)、
そして私が心を射抜かれた『君のためなら千回でも』(2007)。

これだけいろいろ撮っている監督だとわかっていても、
まさかゾンビ映画を持ってくるとは予想していませんでした。
いずれにしても私はこの監督がかなり好きみたい。(^o^)

訳あって国連を辞めた元捜査官のジェリー。
ある日、家族とともに車で出かけるが、なぜだか道路は大渋滞。
立ち往生していたところ、ゾンビが押し寄せてくる。

上司だった国連事務次長ティエリーからの電話によれば、世界中に謎のウイルスが蔓延。
感染すると凶暴なゾンビと化し、増殖しつづけているらしい。
かつて伝染病の調査や紛争地域での調停で成果をあげたジェリーに、復帰してほしいと言う。
即座に断ろうとするジェリーだったが、これを引き受ければ家族の安全を保障すると言われ、
やむを得ず了承、調査に同行することに。

感染の源と手がかりを求め、米軍機に乗り込むジェリー。
世界各地の感染地域へと向かうのだが……。

子どもが観たら泣いてまうやろと思う怖さ。(^^;
昔はゾンビと言えば走らないものでしたが、この辺りからゾンビが走りますからね。
怒濤の勢いで向かってくるゾンビの怖いのなんのって。

有効なワクチンをふと思いついたジェリーが、
イスラエル国防軍の女兵士サガンとWHO(世界保健機関)にたどり着き、
決死の覚悟でゾンビうようよの中に飛び込みます。
みごとワクチンのもとを奪取したときにはウルッ。

WHOの職員役で出演していたピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、
どこで見たんだっけと思っていたら『セントアンナの奇跡』(2008)でした。
ついでながら、これ、オススメです。

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『スター・トレック イントゥ・ダークネス』

2013年08月26日 | 映画(さ行)
『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(原題:Star Trek Into Darkness)
監督:J・J・エイブラムス
出演:クリス・パイン,ザカリー・クイント,ゾーイ・サルダナ,ベネディクト・カンバーバッチ,
   ジョン・チョー,サイモン・ペッグ,カール・アーバン,ピーター・ウェラー,アリス・イヴ他

お盆休み中の先行上映を観たので、10日経過してからのUPです。
TOHOシネマズなんばにて、2本ハシゴの1本目。

ちなみに、“スタートレック”シリーズ、TV版も劇場版も全然知りません。
ブログに書くときに「・(中黒)」の位置にも一応注意を払っている私としては、
どうして劇場版の10作目までは中黒なしで、
11作目から中黒ありになったのかも気になります。
ま、それはどうでもいいとして、シリーズ1本も観ていなくても楽しめました。

舞台は西暦2259年(=前作の1年後という設定らしい)。
これぐらい先だと、2020年が舞台の『パシフィック・リム』よりはありそうかと。
二百数十年後の世界っていったいどうなっているのでしょうかね。

USSエンタープライズ号の艦長を務めるジェームズ・T・カークは、
クルーたちとともにとある惑星へ。
未開種族を絶滅の危機から救ったまではよかったが、
脱出時に危険な状態に陥った副艦長のスポックを助けようとして、
決して人に見られてはならないとされているエンタープライズ号を現地人の目にさらしてしまう。
地球に帰還したカークはその責任を問われ、艦長を解任、降格人事を受ける。

その頃、ロンドンで大規模なテロが起き、犯人はジョン・ハリソン中佐と目される。
彼の追跡について協議するため、カークを含む士官たちがサンフランシスコ本部に招集されるが、
そこをハリソンに狙い襲われて、本部は惨状となる。

敬愛する上官パイクが犠牲となり、復讐を誓うカーク。
提督マーカスより再びエンタープライズ号の艦長を言い渡され、
ハリソンが隠れているとおぼしき惑星クロノスへと乗り込む。

クロノスはクリンゴン人が支配している。
クリンゴン人と穏便に交渉してハリソンを引き渡してもらおうと目論んでいたが、
カークらは敵と見なされ、攻撃を受ける。

窮地に追い込まれたカークらを救ったのが、どこからともなく現れたハリソン。
彼は信じられない強さで、たったひとりでクリンゴン人をなぎ倒す。
その後、ハリソンはなぜかあっけなくカークに降伏、エンタープライズ号に収監される。

ところが、ハリソンはこれらが陰謀であると話しはじめ、
事実を知れば気持ちも変わるだろうとカークに言う。
信じられるわけがないと思いつつ、ハリソンの話を聞いたカークは……。

カンバーバッチですよ~。半年ほどにウチの職場でブームとなった。(^O^)
悪者と見せかけて実は味方、いや、やっぱり悪者かと、行ったり来たり。
ほぼ無敵の強さであの声、満喫しました。

シリーズ未見だと、それぞれのキャラ設定がわからないので、
従来の“スタートレック”ファンが観るとどうなのか不明ですが、
理解しやすいストーリーと派手な攻防、普通に満足です。

エンドロールのものすごい長さ、ここは寝ました。(^^;

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『少年H』

2013年08月25日 | 映画(さ行)
『少年H』
監督:降旗康男
出演:水谷豊,伊藤蘭,吉岡竜輝,花田優里音,小栗旬,早乙女太一,
   原田泰造,佐々木蔵之介,國村隼,岸部一徳他

TOHOシネマズ伊丹にて。

降旗康男監督は、『あなたへ』(2012)と言い、本作と言い、
誰も嫌な気持ちにはさせない作品を撮る人だと思います。
無難な良さとも言えますが、これって、凄いこと。

昭和初期の異国情緒あふれる神戸。
“H”のイニシャルが大きく刺繍されたセーターを着ていることから
友だちから「H」と呼ばれる少年、妹尾肇。
洋服の仕立て屋を営む父親の盛夫と母親の敏子、2歳下の妹、好子と、
4人のクリスチャン家庭で、楽しく元気に暮らしている。

盛夫の仕事柄、居留地の外国人とのつきあいも多く、
妹尾家には外国人に対する偏見が皆無。
肇は「自分の目で見て、自分で考えること」の大切さを盛夫から教えられる。

しかし、軍国化が進み、外国人とつきあうことが問題視されるように。
盛夫はスパイではないかと噂され、警察の取り調べを受ける。
肇のことも学校で陰口をたたく者が現れて……。

原作は大ベストセラーですが、非難もあったようで。
体験談だなんて嘘っぱち、結論ありきの作品だとの説に、
そうなんだとびっくりしました。

だけど、『終戦のエンペラー』同様、映画に関してはこれでいいと思います。
映画なんて所詮つくりごとの世界ですから、
実話だから感動できるというのはそもそもおかしいし、
事実かどうかが大事なのではないよなぁって。

いろいろと心に留めておきたいシーンがあります。

学校でスパイ扱いされた肇が、言いふらしたのはアイツに違いないと憤るシーン。
アメリカから届いた絵葉書を見せたのはイッちゃんだけ。
イッちゃんが言いふらしたからこんなことになったんだと、
殴りに行く勢いだった肇に盛夫は言います。
「絵葉書を見せたのはアンタや。アメリカから届いたって。
イッちゃんも同じちゃうか。他の子らにそう言うただけとちゃうか。
こんなことになっていちばん困ってるのはイッちゃんとちゃうか」。

殴られることも覚悟していたであろうイッちゃんに肇が会いに行き、
「ずっと友だちやで」と交わす約束はやはりいいもの。

「戦争が終わったときに、恥ずかしい人間になっとったらいかん」。
それはいつの時代にも言えることで、でもむずかしい。

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