夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『砂と霧の家』

2005年03月28日 | 映画(さ行)
『砂と霧の家』(原題:House of Sand and Fog)
監督:ヴァディム・パールマン
出演:ジェニファー・コネリー,ベン・キングズレー,ロン・エルダード,ショーレ・アグダシュルー他

2年前に家を買いました。
戸建て、マンション、中古、新築問わず、40ばかりの物件を見て、
やっぱりうちの予算じゃ無理やなと
あきらめかけたときに出会ったのが今の家。

これはその頃訪れた、数々の家を思い出させる作品でした。
一軒の家をめぐる、胸を張り裂く物語。

亡父の残した、夕日をのぞむ海辺の家に住むキャシー。
夫は数ヵ月前に家を出たきり。
ひとりっきりのキャシーは毎日涙に暮れるだけ。
遠方の母親にはその事実を告げることができないまま、
幸せなふりをしている。

収入のないキャシーは減税を申請するが、
役所の手違いから、税金滞納でこの家を差し押さえられる。
しかも、家はすでに競売に。

一方、イラン人の元大佐ベラーニは、
国王の取り巻きとして優雅な暮らしを送ってきたが、
革命で祖国を追われてアメリカに亡命。
肉体労働で収入を得ているが、上流階級のプライドは捨てられない。
妻と息子を抱え、渡り鳥のような生活を続けながらも、
親戚や知人には昔と変わらぬ暮らしぶりを装っていた。
このままではいずれ財産が底をつく。

そんな折、ベラーニは新聞で競売の件を知る。
祖国の別荘にも似たこの家を相場の数割で落札し、
しばらく住んでから売却しよう。
そうすれば家族が十分暮らしていけるだけの利益が出るはずだ。
そう考えたベラーニは海辺の家を買い取る。

この物語には悪人は出てきません。
ベラーニは愛する妻と息子のために、なんとか家を手に入れたいと思う。
キャシーも亡父が苦労して建てた家を手放したくないと思う。
あきらめきれずに家の周りをうろつくキャシーが負傷したとき、
献身的な介護をするベラーニの妻と心優しい息子。
キャシーを助けたい一心から暴力的な行動に出る警官。

それぞれの思いから家に固執するさまが胸を打ちます。
みんな、本当に欲しいのは家じゃなくて、家庭なのに。
以前、「家庭がうまくいっていない人ほど
理想の家を手に入れることに懸命になる」と
聞いたことがあります。なるほど。

ちなみにうちは結局、中古の戸建てを。
まず家を見て、私たち夫婦が一目惚れ。
のちに売り主さん一家とお会いしたとき、
「こんなご家族が住んでた家なら、さらにほしい」と思いました。
家って、住んでる人が映るんですよね、たぶん。

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『ソウ』

2005年03月25日 | 映画(さ行)
『ソウ』(原題:Saw)
監督:ジェームズ・ワン
出演:ケアリー・エルウェズ,ダニー・グローヴァー,モニカ・ポッター,
   リー・ワネル,トビン・ベル,ケン・レオン,ディナ・メイヤー他

ソウ=SAW、つまりノコギリなんであります。
関西人で私と同世代以上の方なら、
ノコギリと聞いて思いつくものはただひとつ、
横山ホットブラザーズの「お~ま~え~は~ア~ホ~か~♪」ですね。

しかし、この作品は笑えません。
オーストラリア出身のホラー好きな兄ちゃんコンビが原案を出し、
ハリウッドに売り込んで、自ら脚本・監督までこぎつけた作品。
最初から最後まで、そして後味まで不快度満点。

男がふたり、目覚めると、そこは薄汚いバスルーム。
彼らは対角線上の壁ぎわに、
足首を鎖で配管につながれた状態で監禁されていた。

男のうちのひとりは外科医のゴードン。
もうひとりはゴシップ写真で生計を立てるカメラマン、アダム。
お互い面識はなく、自分たちがなぜそこにいるのかもわからない。
ふたりの間には頭を拳銃でぶち抜いた男性の自殺死体が。

手がかりを求め、辺りを見まわすふたり。
自殺死体が持つレコーダーに気づき、
トイレのタンクに隠されていたマイクロテープをセットしてみると、
ゲームの開始を告げる不気味な男の声が。
「ゴードンは6時間以内にアダムを殺せ。
アダムはゴードンからうまく逃げろ。
できなければふたりとも命はない」。

ほかに見つけたものは弾丸1発とタバコ、
着信専用の携帯電話。そしてノコギリ。
必死で鎖を切ろうとするうち、ゴードンが気づく。
「このノコギリは鎖を切るためにあるんじゃない。
足首を切り落とすために用意されたものだ」。

ゴードンが思い当たるのは、
刑事が追っていたジグソウと呼ばれる連続殺人鬼。
ターゲットを監禁、サバイバルゲームを課し、
その一部始終をどこかから覗いて楽しんでいるらしい。
生き残るためにはこのゲームをクリアするしかない。

脚本を書いたリー・ワネルがアダム役。
思いっきり不快な作品だけど、
兄ちゃんコンビのインタビュー記事を読むと、
観客を不快にさせるのが目的のようなので思惑どおり。

‘SAW’という単語には、ほかにもいろいろ
引っかけられていると思われます。
seeの過去形、格言の意味もあり、ジグソウの綴りはjigsaw。

でね、ネタバレですけど、
最終的にはノコギリでギコギコ切っちゃうんです、足首。
ここ数日、寝ようと思って目を閉じると
その場面が目に浮かぶ。助けて。(T_T)

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『サイドウェイ』

2005年03月22日 | 映画(さ行)
『サイドウェイ』(原題:Sideways)
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ,トーマス・ヘイデン・チャーチ,
   ヴァージニア・マドセン,サンドラ・オー他

ロードショーにて。
夫婦だった監督とステファニー役のサンドラ・オー、
先日離婚したと聞いて驚いた!

バツイチの英語教師マイルスは、小説家になる夢を捨てきれず、
書きあげた小説をエージェントに持ち込むが、
担当者からはなかなか返事が来ない。

マイルスの親友でTV俳優のジャックは、1週間後に結婚を控えている。
ジャックの独身最後の週にいい思い出を作ろうと、
マイルスはワイナリーめぐりの旅にジャックを連れだす。

ワインおたくのマイルスがワインで気を紛らわせたいのに対し、
ジャックは結婚前にハメを外したいだけ。
宿泊先近くのマイルス行きつけの店、
「ヒッチング・ポスト」に出かけたふたりは、ウェイトレスのマヤと出会う。
ジャックは、マヤを誘うようにマイルスにけしかけるが
意気地のないマイルスはきっかけがつかめない。

翌日出かけたワイナリーでは、マヤの友だちだというステファニーが働いていた。
ステファニーと意気投合したジャックは、
マヤを含む4人で食事する約束を取りつける。

こうして、女を見るやナンパせずにはいられないジャックのせいで
いろんなトラブルに巻き込まれるマイルス。
やがて旅は、人生のピークを過ぎた男の、自分を見つめなおす旅になって……。

キャッチコピーは、
「カリフォルニア、ワインロード。
人生が熟成していく贅沢な寄り道」。

ワインがあれこれ出てくるわりに
食べ物があまり映像に出てこないのが物足りないけど、
それでも熟成感じゅうぶんな作品。

マイルスとジャックのキャラクターは実に対照的で、
原作者はそれを葡萄の種類に例えています。
繊細で生産がむずかしく、期待外れなことも多いピノ。
そのピノよりも耐久性に優れ、気楽に楽しめるカベルネ。
マイルスはまるでピノ、ジャックはカベルネ。

「ピークを迎えたワインは素晴らしい。
でも、ピークを過ぎて、坂を下るワインも味わい深い」という言葉に、
人生を照らし合わせたくなります。

ものすごくいい作品なのに、映画館にはひと言。
いまどきのシネコンは、満員でもなきゃ、席はひとつずつ空けて、
前後も頭がじゃまにならないように席を売ってくれるもんだろうがぁ。
ガラガラやのに、なんで真ん中2列だけスシ詰め状態にして発券するねん!

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『CODE46』

2005年03月17日 | 映画(か行)
『CODE46』(原題:Code 46)
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:サマンサ・モートン,ティム・ロビンス他

監督や俳優の名前をまだよく知らなかったころは、
タイトルだけで直感的に観るものを決めていました。
なのに、レンタルしてきたビデオを確かめてみると
「なぜかいつも借りてしまう監督」がいます。
それがマイケル・ウィンターボトム監督。

この監督は、驚くほど毎回ちがう趣の作品を撮ります。
シリアスな人間ドラマ、軽いタッチの恋愛もの、
80年代のマンチェスター・ムーヴメントに焦点を当てた音楽もの。
パキスタンの難民少年のロードムービー。
そして本作は、「愛した女性が母親のクローン人間だったら?」というSF。

近未来。環境破壊が進み、地球は砂漠化している。
人びとは徹底管理のもと、安全を保障された都市部に暮らす。
都市間を行き来するには、パペルと呼ばれる通行・滞在許可証が必要。
犯罪歴や病歴によりパペルを入手できない者は、砂漠のスラム街で生活する。

シアトルに住むエリート調査員のウィリアムは、
偽造パペルの調査のため、上海へ出向く。
上海のスフィンクス社では、パペルの審査・発行を一手に引き受けているが、
その印刷過程で誰かが偽造しているらしい。

話し手の感情を読み取る能力を持つウィリアムは
すべての工場労働者と面接し、マリアが犯人であることを見破る。
しかし、彼女に興味を持ったウィリアムは、
スフィンクス社の幹部に別人を犯人だと報告する。

その夜、ウィリアムとマリアは食事に出かける。
ふたりは恋に落ちるが、それは男女間の生殖を管理する法規、
「コード46」に抵触する愛だった。

毎回異なるテーマでありながら、
この監督の作品を観るといつも凹みます。
夕暮れの砂漠にひとり放り出されたような気分。

同一遺伝子を持つ者との肉体関係は禁止され、
発覚した場合はその相手との出会い、行為がすべて
記憶から削除されてしまいます。
もし、出会ったことを後悔して、出会わなければよかったと思ったとしても、
それは出会ったときの記憶が、思い出があるから。
そこに存在した愛がすべて消されてしまうなんて。

近未来の都市として、ドバイや上海が巧く使われています。
その街並みとエレクトロニックなサウンドが
余計に私を寂しい気持ちにさせました。
毎回こんな気分にさせられるのに、
やはり借りてしまうマイケル・ウィンターボトムなのでした。

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『セイブ・ザ・ワールド』

2005年03月14日 | 映画(さ行)
『セイブ・ザ・ワールド』(原題:The In-Laws)
監督:アンドリュー・フレミング
出演:マイケル・ダグラス,アルバート・ブルックス,ロビン・タニー,
   ライアン・レイノルズ,リンゼイ・スローン,デヴィッド・スーシェ他

1年数ヵ月ぶりに風邪をひきました。
病院に行ってないもんで、これが流感なのかどうかわかりませんが、
ずっと高熱でボワワ~ンとした状態。

こんなときには頭を使わずに観ることのできるB級映画に限ります。
というわけで、もうすぐ新作の棚から落ちそうな『セイブ・ザ・ワールド』。

スティーブはCIAの潜入捜査官。
武器密輸組織を摘発するため、囮捜査で世界を飛びまわっている。

そんな彼の一人息子マークが、かねてから交際していたメリッサと結婚を決める。
メリッサの両親との顔合わせの日に、
密輸組織との取引も進めなければならなくなったスティーブは、
やむをえず、顔合わせと取引を同じ店で設定する。

トイレで取引を済ませようと席を立つスティーブ。
たまたまその後にトイレに入ったのがメリッサの父親ジェリー。
不穏な空気を感じ取ったジェリーはすぐさま逃げだそうとするが、
取引の現場を目撃されたからにはジェリーを逃がすわけにはいかない。
娘たちの婚約をなかったことにしたいジェリーに対し、
スティーブは自分がCIAであることを打ち明け、
ジェリーをも自分の任務に巻き込んでしまうことに。

以後、スティーブがCIAだとは知らないFBIは
スティーブと行動をともにするジェリーにまで目をつけ、
ジェリーの悪夢のような日々が始まる。

タイトルからして超B級ですが、原題は“The In-Laws”。
つまりは婚姻によって生じた親戚関係。
息子と娘の結婚により、親戚になることになってしまった
マイケル・ダグラス演じるスティーブと、
アルバート・ブルックス演じるジェリー。
こんなベテラン俳優がなぜにこんなB級作品に?

でも、これはなかなかの拾いもの。
足専門の医者のジェリーがめちゃめちゃお茶目。
危ないことには一切関わりたくないと思っているのに
どんどん巻き込まれて、結局スティーブの立派な相棒になります。
ウエストバッグの七つ道具もいざというときには役に立ち、
組織のボスの足を見て彼の弱点を発見、
そこに蹴りを入れるところなど、抱腹絶倒。

B級にはお決まりの爽やかなエンディングも○。
あくまでもばかばかしく、でも幸せなのがB級の良いとこ。

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