夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

打倒、手湿疹の巻〈その後のその後〉

2013年04月29日 | ほぼ非映画(アトピー)
脱ステロイドを決意したのが2月の半ばすぎ。
そのときはまさか保湿が悪影響を及ぼしているなんて思いもよらず。
「乾燥ガビガビ療法」の存在を知って目からウロコ、
ワセリンの使用を停止したのがちょうど5週間前でした。

振り返ってみると、脱ステと脱保湿を同時に始めていれば、
あと1カ月ぐらいは快復がはやかったのではないかと思われます。

『患者に学んだ成人型アトピー治療―脱ステロイド・脱保湿療法』を読んで、
私はんなふうに理解しました。
アトピーには何かしら原因があると考えられている場合が多いが、
単にその人の環境に適応する速度がほかの人より遅いだけで、
もう少し待てば適応できたのにということがある。
けれども、適応できるまで待てずに病院へ行き、ステロイドを処方された結果、
ステロイドがなければ治せなくなる。ステロイド依存型の湿疹のできあがり。

私の場合はまさにこれだろうと思います。
そういえば、学生の頃、当時はまだ花粉症という言葉も今ほど聞きませんでしたが、
私はものすごい花粉症でした。通学時に涙ぼろぼろ状態で。
ところが、そのまま放置して何年も経過、就職したらいつのまにか治っていました。
さまざまな塵埃が飛ぶ職場なので、慣れたんだろうと思っていましたが、(^^;
環境に適応できるようになったと考えればしっくり。

脱保湿を始めて数週間は、ちりちりと皮膚に痛みが走って地獄のようでしたが、
保湿しても痒いわ痛いわ、だったら保湿する手間がないほうが楽は楽。
ホンマによくなるんかいなと弱気になり、
脱保湿を断念しそうになったことも一度や二度ではありません。
けれどもここで断念したら悔しすぎる。もう意地です。(^o^;

脱保湿を開始してすぐ、トイレに行きたくなる回数が激減していることに気づきました。
ワセリン等の使用を止めたから、摂取した水分を体が取り込もうとしているために
トイレの回数が減ったのかなとなんとなく思い。
上記の本を読んでみたら、ちゃんと書いてありました。
脱保湿中は「抗利尿ホルモン」っちゅうやつが増えるんだそうです。
そして、快復してきた今、トイレの回数はまったく普通に戻っています。
人間の体って、なんてよくできているのでしょう。

本に書いてある遵守事項のうち、守れなかったこともいくつかあります。
水分摂取は1日1500ccにとどめること。これは無理でした。
確かに水分をたくさん摂ると、その晩は皮膚がじとっとしてしんどくなります。
ただ、気づいたのは、その水分はお酒でもお酒以外でもほぼ同じだということ。
どっちでもしんどくなるならお酒を飲むかと思った(実際に飲んだ)ことも多数。(^O^)

服や手袋など、布地の上から掻くのは厳禁だとも記してありますが、
これはぜ~ったい守らなければいけません。
布の上から掻くと、ずるずるに剥けてドえらいことになります。
掻きたいときには「ナマ掻き」で。
生掻きならば悲惨なことにはならないのが面白いですねぇ。

今はお風呂上がりに発狂しそうになることもなくなり、わりと平穏です。
まだまだ汚くて、自分の手から腕にかけてを見るたびに「キショ!」と憂鬱になりますが、
赤みが消えて肌色を取り戻しつつある部分も出てきました。
体が自分でなんとかしようとしているのがわかります。

先は長し。でも地獄だった頃がちょっと昔に思えるほどになっています。

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『舟を編む』

2013年04月27日 | 映画(は行)
『舟を編む』
監督:石井裕也
出演:松田龍平,宮崎あおい,オダギリジョー,黒木華,渡辺美佐子,池脇千鶴,
   鶴見辰吾,宇野祥平,伊佐山ひろ子,八千草薫,小林薫,加藤剛他

これもTOHOシネマズ伊丹にて。

『ワンドゥギ』(2011)を観たときに、『舟を編む』の原作について触れました。
何度も思い出してはクスッと笑ってしまうほど、恋文の一節が好きでした。
映画の予告編では「なんで筆で書いちゃったの。戦国武将じゃないんだから」にウケ、
とてもとても楽しみにしていた1本です。

満島ひかりの旦那様、石井裕也監督。
『ハラがコレなんで』(2011)は空振り気味でしたが、基本的には好きな監督です。
特に『川の底からこんにちは』(2009)はこの先何年か経ってからも観たい作品。
そんな監督がこれだけの顔ぶれを揃えて撮った作品ですから、
観る前に期待が高まりすぎでしたが、その期待をおおむね外すことなく。

1995年、東京の大手出版社、玄武書房。
辞書編集部では「いまを生きる新しい辞書」、『大渡海』の編纂に取り組み中。
ベテラン編集者である荒木(小林薫)は、病床の妻のそばにいてやりたいと退職を決意。
先行きを懸念する監修者の松本(加藤剛)に、必ず自分の後任を務められる者を見つけると約束する。
局長の村越(鶴見辰吾)からは誰でも好きな奴を辞書編集部へ引き抜いていいと言われるが、
辞書編集向きの者がなかなか見つからない。

そんな折、同じく辞書編集部の若手、西岡(オダギリジョー)からの情報が。
営業部に言語学専攻の真面目すぎる奴、その名も馬締(松田龍平)という社員がいる。
まるで営業には向いておらず、浮きまくっているらしい。
荒木がこれまであちこちでくり返してきた質問、
「『右』という言葉をどうやって説明するか」に対して、
初めて当を得た答えを寄越したのが馬締だった。

辞書編集部に異動となった馬締は、相変わらず変な奴。
西岡は付き合い方に苦労するが、実は馬締のほうでも悩んでいた。
下宿先の大家(渡辺美佐子)からアドバイスを受けた馬締は、
以後、積極的に西岡と会話しようとする。

ある日、馬締が下宿へ帰ると、大家の孫で板前修行中の香具矢(宮凬あおい)と遭遇。
高齢の大家の面倒を見るため、同居することになったと言う。
香具矢に一目惚れした馬締は、気持ちを伝えられずに苦悶するのだが……。

大家であるタケばあさんのアドバイスが良いです。
馬締が「僕の気持ちが人にはわからないし、人の気持ちが僕にはわからない」とこぼすと、
タケばあさんは「当たり前だ」と言います。人のことなんて誰もわからない。
だから言葉がある。言葉で心をつなげばいいんだと。
「若いんだから吐くまで飲みな」っちゅうのも良かったですね。(^O^)

日活ロマンポルノの女優、伊佐山ひろ子がパートの粋なおばちゃんだったり、
『草原の椅子』で佐藤浩市の娘役だった黒木華が最初はふてくされた新入りだったり、
石井監督作品の常連、森岡龍がアルバイト学生役で出演していたり。
そうそう、『どんずまり便器』の理科教師、宇野祥平は、
「ぬめり感」にこだわる製紙会社の社員役で出演しています。
ジャージ姿よりもスーツ姿のほうが良さそう。

「ら抜き」は嫌いだけれども誤用との注釈を付けてでも辞書に載せたいという松本先生。
松本と馬締には美しい日本語をしゃべらせて、
イマドキの青年、西岡や学生バイトには「ら抜き」を使わせていました。
これはきっと監督のこだわりだと思いたい。
そういえば、前述の『DRAGON BALL Z 神と神』も、
龍の神様には「連れてこられない」と言わせ、ほかは「ら抜き」。
言葉へのこだわりが見られる作品は、どれも楽しい。
……こだわりじゃなくて適当だったらどうしよう。(^^;

余談ですが、そこそこの年齢になると、言葉の誤りを指摘するのは難しいですね。
「ら抜き」はもうどうでもいいとして、「さ入れ」は断じて許せないし、
「うる覚え」とか「こうつけがたい」などとメールに書いてくる友人に、
それは間違いだよとはなかなか言いづらい。
たまたま書き間違えたんだろうと思いたいのですが、
何度もそれが出てくると、う~ん、指摘したほうがいいのか?と悩みます。
私自身にそんなことがあれば、絶対指摘してほしいと思うのですけれども。

ちなみに、私の愛用辞書は『新明解国語辞典』です。
赤瀬川原平の『新解さんの謎』と併せて愛読書。

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『DRAGON BALL Z 神と神』

2013年04月25日 | 映画(た行)
『DRAGON BALL Z 神と神』
監督:細田雅弘
声の出演:野沢雅子,山寺宏一,森田成一,佐藤正治,鶴ひろみ,
     田中真弓,堀川りょう,古川登志夫,八奈見乗児他

しばしば“女子会”でご一緒するお姉様から、ある日こんなメールが。
「昨日は孫悟空に会いにいってきました」。

「孫悟空」って何?
ゴダイゴの主題歌が懐かしい“西遊記”シリーズは観ていたけれど、
孫悟空といえばそれしかわからない。
どこかの劇団が“西遊記”の公演中とか?

で、お姉様に返信しました。
「すみません、孫悟空って何ですか。何かの公演?」って。
そうしたら、“ドラゴンボール”のことだったというわけです。
子どもさんが小さいときに一緒に観ていたとかで、
“ドラゴンボール”にはものすごく思い入れがあるんだそうな。

“ドラゴンボール”が話に出てくるとは夢にもよらず。
子どもが対象だと思っているアニメで私の選択肢にあるのは“クレヨンしんちゃん”ぐらい。
上映スケジュールを見るとき、“ドラえもん”や“名探偵コナン”と同じく、
“ドラゴンボール”にはまったく目が行きませんでした。
だけど、お姉様の話を聞いてから上映スケジュールを眺めてみたら、
“ドラえもん”などのアニメは最終回の上映開始時間が16時前後、
“名探偵コナン”はレイトショーながら20時開始がいいところなのに対して、
“ドラゴンボール”は21時半開始の回まであるじゃないですか!

ホントに観に行くかどうかはかなり迷ったのですが、物は試し、
行ってみようじゃないかと。もちろんこれもひとりで。(^o^)

宇宙一強いと言われる破壊神ビルスは、39年の「昼寝」から目覚める。
昼寝中のことを付き人のウイスに尋ねると、
宇宙の帝王と恐れられていたフリーザがサイヤ人に倒されたと言う。

結構強かったはずのフリーザを倒したサイヤ人。
興味を惹かれたビルスはそのサイヤ人、孫悟空に会いたくてたまらなくなる。
ちょうど界王星で修行中だった孫悟空の前にウイスと共に姿を現すビルス。

ウワサのビルスに会えた孫悟空は有頂天。
界王が止めるのも聞かず、ちょっとだけ相手をしてほしいとビルスにお願い。
しかし、ビルスの力は孫悟空の想像の遥かに上、一瞬にして敗北を喫する。
清々した表情でそれを認める孫悟空。

地球には超(スーパー)サイヤ人ゴッドなる伝説の戦士がいるらしい。
ウイスからそうとも聞かされていたビルスは孫悟空に尋ねるが、
孫悟空はそんな話は聞いたことがないと言う。

ビルスは真偽のほどを確かめるため、地球へ。
地球を破壊されぬよう、孫悟空と仲間たちは立ち上がるのだが……。

とにかく名前が「孫悟空」だということも知らなかったぐらいですから、
私が理解できたのはこの程度。
同じ髪型のおっきいのやらちっちゃいのやらがいっぱいいて、頭が混乱。
名札でも付けておいてもらわないことにはわかりません。
“相棒”シリーズと同じく、キャラもよくわからなければ、
出自不明ですから、何故に自分のことを「おら」と呼ぶのか、
なんでこんなに訛ってしゃべらせるのかなど、疑問点はいろいろ。

けれどもこの程度わかればじゅうぶん楽しい。
主人公がいて、仲間がいて、一致団結して悪役に立ち向かう。
ヒーローものの定番ですが、この悪役がなかなか可愛くて。
ビルスは実に愛嬌があり、ただ悪意に満ちた破壊をくり返すわけではありません。
ちゃんと「話のわかる奴」であるところがとてもイイ。
付き人のウイスもビルスをしっかりコントロールし、
そんなウイスにビルスがきっちり敬意を払っています。

もぎりのお兄さんから「入場者プレゼントを切らしていますので、
後日お渡しできるよう、整理券をお配りしています」と言われ、
恥ずかしくて辞退したのですが、もらっておけばよかったかなぁ。

これからはしっかり選択肢に入れます、“ドラゴンボール”。

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『ライジング・ドラゴン』

2013年04月23日 | 映画(ら行)
『ライジング・ドラゴン』(原題:十二生肖)
監督:ジャッキー・チェン
出演:ジャッキー・チェン,クォン・サンウ,ジャン・ランシン,ヤオ・シントン,
   リャオ・ファン,ローラ・ワイスベッカー,アラー・サフィ,オリヴァー・プラット他

TOHOシネマズ伊丹にて。

考えてみると、ジャッキー・チェンの作品を劇場で観るのは初めてです。
劇場でどころか、TVやDVDでもほとんど観たことがないかも。
好きなんですけれども、“007”シリーズなどと同じく、観るなら1本目から観たい、
でも本数が多すぎる、まぁそのうち……てな感じで今まで来てしまいました。
体を張ったアクションは本作限りで引退するそうなので、
最後の1本ぐらいちゃんと観ておこうかと思い。

19世紀の新王朝時代に、各国の中国侵攻があったせいで、
国外に持ち出されてしまった数々の国宝が世界中に散逸。
これらは発見されればオークションに出品され、高値で取り引きされる。

“十二生肖”と呼ばれる十二支の動物頭部をかたどったブロンズ像もそのひとつ。
アンティークディーラーのマックス・プロフィット社は、
是が非でも12体すべてを手に入れたいと、その方法を検討する。

その結果、“アジアの鷹”の異名を持つトレジャーハンター、JCのもとへ依頼が。
高額の報酬に惹かれたJCはすぐさま受諾。
信頼のおける精鋭メンバーを引き連れて“十二生肖”を探しはじめるのだが……。

文句なく楽しいです。あれこれ言わんでいいでしょう。
パリのみならず、世界各地を巡る旅、お金もかかっていそうです。
変な日本語が飛ぶのは違和感がありますが、ご愛敬ということで。

トム・クルーズの50歳にも驚きますが、
ジャッキー・チェン、59歳。来年は還暦なのにこれですか。
毎度おなじみのエンドロールのNG集に笑いつつ、
痛そうなシーンは気の毒すぎて。

善人顔だか悪人顔だかビミョーなオリヴァー・プラットが悪徳ディーラーの社長。
精鋭メンバーの一人に『痛み』(2011)の主演男優、クォン・サンウ。
『美少年の恋』(1998)のダニエル・ウーとスー・チーがカメオ出演。
そんな顔ぶれも楽しめました。

自ら体を張るのをやめるだけだそうですから、
これからはご自分の怪我の心配なく、楽しい作品を撮ってくださいね。
しかし、現場では自分よりも他人が怪我をすることのほうが心配では?

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『天使の分け前』

2013年04月21日 | 映画(た行)
『天使の分け前』(原題:The Angels' Share)
監督:ケン・ローチ
出演:ポール・ブラニガン,ジョン・ヘンショウ,ガリー・メイトランド,ウィリアム・ルアン,
   ジャスミン・リギンズ,ロジャー・アラム,シヴォーン・ライリー他

前述の『ホーリー・モーターズ』の後、シネ・リーブル梅田にて。
公開前からとっても楽しみにしていた作品です。

イギリスの労働者階級に熱のこもった眼差しを注ぎつづけるケン・ローチ監督。
本作は同監督にしてはいくぶん軽めのタッチですが、その姿勢は変わりません。

不況が長引くスコットランドの中心都市グラスゴー。
階級差は著しく、ろくに教育も受けられずに育った若者たちは、
仕事にありつくこともできずにならず者への一途をたどる。

青年ロビー(演じるポール・ブラニガンはロビーによく似た境遇のもともと素人)もそのうちの一人。
親の代から互いに敵対意識を持つ男たちに怪我を負わせて裁判沙汰に。
しかし、恋人のレオニーが妊娠中である事情を鑑みて服役は免れ、
300時間の社会奉仕活動を命じられる。

社会奉仕活動に従事中のロビーのもとへ、レオニーが産気づいたとの報せが。
指導官の中年男ハリーはロビーの退出を許可し、車で病院へと送っていくが、
ロビーは病室までハリーに付き添ってほしいと言う。
生傷の絶えなかったロビーはその風体で病院から門前払いを喰らいそうだから。
了承したハリーだったが、ロビーはレオニーの親戚から認められず、袋だたきにされる。

落ち込むロビーを家に招くハリー。
ロビーとレオニーの息子の誕生を祝おうと、とっておきのウイスキー、スプリングバンク32年ものを出す。
初めて飲んだウイスキーの味は旨いとは思えなかったが、
親身に接してくれるハリーのもと、ロビーは次第にウイスキーに興味を持つように。
やがてロビーのテイスティングの才能が開花するのだが……。

タイトルの「天使の分け前」とは、英語でもそのまま、“The Angels' Share”。
ウイスキーが樽の中で熟成中、毎年蒸発してしまう約2%のことをそう呼びます。
なんともしゃれた言い回しで、ロビーがハマるきっかけもその言葉。

ウイスキーが重要な役目を果たしてはいるものの、
ロビーがテイスティングの才能を発揮していく過程などはわりとサラリ。
お酒の映画だと思って観ると物足りないでしょう。
それもそのはず、監督一同、別にウイスキー好きというわけではないそうです。(^^;
だからこそ、ほかに描きたかったことが生きてきます。

ならず者が更生するんだと思っていたら、結局そんなことしちゃうの?
という考えが頭をよぎったのも事実です。
けれどもこれ以上にない粋なラストに、
観終わってから数日経つ今もニッコリせずにはいられません。

わずか2%の分け前、それでじゅうぶん、人は前向きに生きていける。

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