夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

セ・リーグ開幕戦終了につき。今度は阿部慎之助。

2010年03月29日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
先週の金曜日の昼間、高橋由伸ネタをアップしたら、
晩に由伸がお立ち台に上がっているのを見てビビりました。
しかも、その隣には阿部慎之助の姿。
なんで名前を挙げた2選手が打っとるんだ、
もしや今後、こうして巨人ネタを書くたびに
あっちが勝ったら嫌だなぁと思いつつ、
今日のところはうちが勝ち越して若干の余裕ということで。

『晴れたらポップなボクの生活』(2005)。
原案は、『ナニワ金融道』などでおなじみの漫画家、
青木雄二の短編作品『淀川河川敷』。
吉本興業所属のお笑いコンビ、カラテカの矢部太郎と、
ピーターこと池畑慎之介によるダブル主演です。

会社を辞めた。そうしたら、寮も追い出された。
無職では部屋が借りられない。住所不定だと仕事には就けない。
社会から落ちこぼれるのは意外と簡単。
ボク(矢部太郎)はとうとうホームレスに。

青空の下、河川敷のダンボールハウス。
台湾生まれのヤンさん(板尾創路)。
ヤンさんと同居している美幸(片桐はいり)。
その美幸さんに片想いしている高田さん(温水洋一)。
元自衛隊員でのオカマのマーちゃん(木村祐一)。
そして、みんなとは少し距離を置いて暮らすユウさん(池畑慎之介)。

ユウさんは、決して野球の審判マスクを外さない。
草野球の審判を1試合500円で請け負い、
試合中も試合後も、とにかくマスクを着けたまま。
だから誰もユウさんの素顔を見たことがない。

そんなユウさんが、ある日突然マスクを外す。
旅に出るというユウさんに、ボクは勝手について行くことに。
カメラマンになりたいボクは、
料金未納でいつ使えなくなるやもしれない携帯で、
ユウさんをパシャパシャと撮り始める。

池畑慎之介は、本作が実に37年ぶりの主演。
しかも、ひげ面でよく日に焼けた、れっきとした男性役です。
初めて審判マスクを外したとき、
片桐はいりが「あら、意外とイケメン」と思わず声を上げます。
いや、ほんと、こんな男臭いピーターに逢えるなんて。

矢部太郎と池畑慎之介のコンビぶりはなかなかのもの。
ホームレスが生き抜く方法にほ~っと驚いたり、
そんな手があるのかと笑ったり、考えさせられたり。
青空が美しい、さくっと観られるロードムービーです。

で、どうしてこれが巨人ネタなのかと言いますと。
阿部慎之助って、彼の母親がピーターの大ファンだったために
「しんのすけ」と名付けられたという話、ご存じでしたか。
なお、ピーター本人は阪神ファンです。

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セ・リーグも開幕につき。鍵は高橋由伸。

2010年03月26日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
……って、巨人ネタを振るなんて、縁起でもない話ですが(笑)。

高橋由伸が鍵となって登場するのは、『ルート225』(2005)。
原作は、芥川賞作家、藤野千夜の同名小説です。

『チーム・バチスタの栄光』(2008)、
その続編の『ジェネラル・ルージュの凱旋』(2009)などで、
いまや押しも押されもせぬ人気者となった中村義洋監督の作品。
『フィッシュストーリー』(2009)と同じく、
たべちゃんこと、多部未華子が主演しています。

14歳の女子中学生エリ子は、
なかなか下校して来ない年子の弟ダイゴを探しに出かけます。
公園でブランコに乗るダイゴを見つけ、一緒に家路につきますが、
角を曲がるとそこには知らない海が広がっていました。

生まれてからずっと暮らしている町で道に迷うはずはなく、
見覚えのある建物もあるのに、何かが微妙にちがっています。
それは、現実と少しだけずれたパラレルワールドでした。

エリ子とダイゴは公園へ戻り、公衆電話ボックスへと駆け込みます。
家へ電話をかけると「早く帰って来なさい」と怒る母の声にひと安心。
さっきの角まで来てドキドキしますが、曲がれば見慣れた風景が。
エリ子とダイゴはほっとして家のドアを開けます。

ところが、母が作ったシチューはまだ温かいのに、
家の中には誰もいません。
母の姿は見えず、父も帰って来ないのです。

翌日登校すると、友だちとの会話もなんだかずれています。
そこにいるのは同じ顔ぶれなのに、別の毎日があったかのよう。
エリ子とダイゴは元の世界に戻るべく、
あれやこれやと試してみるのですが……。

元の世界と繋がるための唯一の手段が「高橋由伸」。
公衆電話から電話をかけるさい、テレホンカードを使用するのですが、
これが高橋由伸のテレカでなければ元の世界にかかりません。
度数はもちろん減っていく一方で、
同じテレカを求めてダイゴは金券ショップへと走りますが、
店員からそれはもうないと言われ、「阿部慎之助」を薦められます。
「高橋由伸」じゃないと駄目なんだってば。

可愛いけれど口の悪いエリ子と、ポッチャリ体型で気弱なダイゴ。
このコンビの掛け合いが絶妙です。
ダイゴがひそかに由伸ファンだったということを
テレカとキーホルダーを見たエリ子が知るシーンは、
たべちゃんの表情と一言にめちゃくちゃ笑わされます。

丸くおさまらないエンディングがちょっぴり切なく。
春に観たいファンタジーです。

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『あんにょん由美香』

2010年03月23日 | 映画(あ行)
『あんにょん由美香』
監督:松江哲明
出演:林由美香,ユ・ジンソン,入江浩治,カンパニー松尾,
   いまおかしんじ,平野勝之,柳下毅一郎,中野貴雄他

林由美香。
女性は、初めて聞く名前だという人が多いかもしれません。
男性は、アダルトビデオにはまったく縁がないという人でなければ、
名前ぐらいはご存じなのでは。

私が彼女を知ったきっかけは、愛読雑誌『映画秘宝』
その後、ノンフィクション漫画『職業・AV監督』全5巻を読みました。
これは、AV監督カンパニー松尾の実録というべきもので、
めちゃくちゃ面白い。林由美香が頻繁に登場します。

林由美香は1989年にデビュー。
美少女的ルックスにもかかわらず、ハードプレイを果敢にこなす彼女に、
世の中の男性は圧倒され、AV界のアイドルに。出演本数は200本超。

そんな彼女が、2005年6月、34歳で急逝。
亡くなった折りには『報道ステーション』で特集が組まれたほど。
死を悼む人びとが、『女優 林由美香』として書籍にまとめるうち、
彼女が韓国のAV作品『東京の人妻 純子』に出演していたことが判明。
そこから、彼女を追ったドキュメンタリー企画が持ち上がります。

日本で唯一人、そのVHSテープを所有していたのは、
韓国研究家である北海商科大学の野平俊水教授。
韓国の路上で購入した何本かのテープの中に、
『東京の人妻 純子』が混じっていたそうです。

『あんにょん由美香』は、このテープの上映会の模様からスタート。
社長夫人の純子が欲求不満に陥り、水道局員に色仕掛けという内容ですが、
韓国人俳優が必死で日本語を喋りながら演技をする姿は、
涙ぐましいとともに、抱腹絶倒。

上映会の合間に、関係者へのインタビューが挟み込まれます。
『東京の人妻 純子』の出演者、通訳、カメラマン、監督。
韓国では過去にAVに関わったことがバレれば信用を失うと言って
迷惑顔だった通訳や出演者も、昔話のうちに表情がやわらかく。
俳優陣が出演に至った経緯、出演した結果どうなったかなど興味深く、
特に社長役の俳優の一言は胸に迫るものでした。

葬儀は、彼女と関係のあった男たちが全員で柩を持ったそうな。
いわゆる兄弟(笑)、みんなでというのは異様な光景だったかと思いますが、
彼女のことを語る監督であり恋人であった男たちへのインタビューは、
どれも彼女への想いに溢れ、切なさでいっぱい。

川本真琴が歌う挿入歌『ほんとうのはなし』もぴったりでした。
出色のドキュメンタリーです。

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『ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式』

2010年03月18日 | 映画(は行)
『ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式』(原題:Death at a Funeral)
監督:フランク・オズ
出演:マシュー・マクファディン,キーリー・ホーズ,アンディ・ナイマン,
   ユエン・ブレムナー,デイジー・ドノヴァン,アラン・テュディック他

前述の『エスター』を観たあと、
このままでは夢にエスターが出てきそうだったので、
心地よく寝付けそうな本作を観ることに。

アメリカ/ドイツ/イギリス/オランダの作品。
監督は、『スター・ウォーズ』のヨーダの声優としても有名な人。
原題は“Death at a Funeral”で、直訳すると「葬式での死」。
ブラックユーモア満載で、終始クスクス笑い。

父親の葬儀の朝、喪主の長男ダニエルは、極度の緊張に苛まれている。
葬儀屋が棺桶を運んでくるが、中を確認して唖然。
そこには父親ではなく、他人の遺体が入っていた。
葬儀屋は決まり悪そうに退散、すぐに父親の入った棺桶を持ってくるが、
出だしがこれでは葬儀が思いやられる。

妻ジェーンは、悲嘆する姑を気遣うが、
事あるごとに辛辣な言葉を浴びせられ、
葬儀が終わったら絶対に姑とは別居してやると決めている。
すでに新居として目星をつけた物件があり、
その敷金の支払いをダニエルにせっつく。

さて、葬儀に集まりつつある参列者たち。

ダニエルの弟で、NYから飛んできた人気作家ロバート。
敷金の工面が気がかりなダニエルは、
ロバートに葬儀代の折半を申し入れるが、
ロバートは今は無理だと突っぱねる。

ダニエルの従妹マーサは、婚約者のサイモンを同伴。
親族の集いに動揺を隠せないサイモンに、
マーサの弟トロイの部屋にあった安定剤らしき薬を飲ませたところ、
それが違法なドラッグであることがわかる。

ダニエルの友人ハワードは、ダニエルに頼まれて、
叔父アルフィーを迎えに老人ホームへ立ち寄るが、
この叔父がとんでもない気むずかし屋。
文句も言えずにアルフィーの車椅子を押すハワード。

さらには、面識のない小人症の男が1人。
彼はピーターと名乗り、父親の愛人だったとダニエルに打ち明ける。
証拠写真をばらまかれたくなければ金を払えと言い出し……。

最高に可笑しいです。
どの登場人物も愛すべき人柄ですが、抜きんでた存在はサイモン。
幻覚作用でラリった彼は放っておけません。

いたってシンプルなストーリーに、笑いに撤した演出。
ラストは長男の弔辞にホロリ。
そのあとの兄弟の会話にまたジワ~ン。

笑って、笑って、最後は心温まる、優しいドラマです。

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『エスター』

2010年03月15日 | 映画(あ行)
『エスター』(原題:Orphan)
監督:ジャウマ・コレット=セラ
出演:ヴェラ・ファーミガ,ピーター・サースガード,イザベル・ファーマン,
   ジミー・ベネット,アリアーナ・エンジニア他

マジでホラーは苦手なので、
40数年生きてきて、観たホラー映画は数えるほど。
本作は久々にどうしても観たくなったホラーです。
怖かった。でも、大傑作。

ケイトは3人目となるはずだった子どもを死産して悲嘆に暮れている。
夫のジョンは養子を取ることを提案。
夫婦で地元の修道院併設の孤児院を訪れる。
明るく駆け回る子どもたちを見て、心を和ませるジョンとケイトは、
そんな子どもたちとは離れた部屋で、独り、歌を口ずさみながら
絵筆を走らせる9歳の少女エスターに惹きつけられる。

シスターの話によれば、エスターはロシア出身の孤児。
火事で家族を失ってここへ来たらしい。
驚くべき速さで英語を修得し、美術にも才能を発揮。
首と手首に巻きつけたリボンを絶対に外そうとせず、
古くさいお姫様風の服装を好むが、聡明で行儀も良い。
ジョンとケイトは早速エスターを養女として迎えるのだが……。

チラシのエスターの顔があまりに怖いので、
なんで彼女に惹かれたのかと疑問でしたが、
映画を観れば頷かずにはいられません。
夫婦、特に夫の心をグッと掴む知的な美少女。
ジョンはエスターにたちまちメロメロになってしまいます。

数日のうちに、ケイトはエスターの異常性に気づき、
また、実子である息子のダニエルと娘のマックスも、
エスターのふるまいを見て、彼女の残虐性を察知しますが、
ジョンは子どもたちの訴えに聞く耳を持たず。
また、マックスには聴覚障害があり、エスターに巧みに脅されて、
ケイトに真実を伝えることができません。

マックスの可愛さと健気さは涙もの。
なのにジョンはいつまで経ってもエスターを庇護し、
ケイトの過去の酒癖を持ち出して、
エスターを非難するなら離婚だとまで叫ぶ始末。
オッサン、はよ気づけよ~。

実に丁寧に作り込まれています。
その見事に張り巡らされた伏線のおかげで、
いささか強引と言えるオチにも納得させられます。

エスター役のイザベル・ファーマンの演技力は恐ろしいほど。
しかし、こんな役を10歳やそこらで演じて大丈夫なんでしょうか。
イメージを払拭することも大変なのではないかと。
『エクソシスト』(1973)のリンダ・ブレアみたいになりませんように。

怖すぎて笑いながら観ました。オススメ。

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