夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マスター 先生が来る!』

2023年01月31日 | 映画(ま行)
『マスター 先生が来る!』(原題:Master)
監督:ローケーシュ・カナガラージ
出演:ヴィジャイ,ヴィジャイ・セードゥパティ,マラヴィカー・モーハナン,アルジュン・ダース他
 
毎年恒例全館停電の日、ちょうどこの冬最大の寒波が到来しました。
朝は一面の雪化粧、家から出られない可能性もありましたが、よく晴れて道路の雪は解ける。
午後、この分なら映画に行けそうだと塚口サンサン劇場へ向かいました。
 
なんばパークスシネマで上映されていたときに観そびれたインド作品。
タミル語映画界のスーパースター、ヴィジャイ主演なのですけれど、
ややこしいのは敵役がヴィジャイ・セードゥパティだということ。
韓国人俳優に同じ名前の人が多いように、インド人俳優もそうなんですかね。
同じ映画のキャストにヴィジャイが何人もおったらややこしいがな。
監督は『囚人ディリ』(2019)のローケーシュ・カナガラージ。
 
名門大学に勤めるJD(ヴィジャイ)は学生から絶大な人気を集める名物教授。
18時以降は酒を飲んでぐでんぐでんに酔っぱらっているが、
昼間は学生のピンチとあらばすぐさま駆けつけ、悪い奴を叩きのめす。
痴漢行為を働きながら権力者である父親の差配で海外へ逃亡を図った学生を引っ捕らえたりも。
 
あるとき、学生の間で会長を決める選挙をおこなう案が出るが、
面倒なことを嫌う学長や一部の教授たちは選挙に反対。
学生の意向を汲んで選挙に賛成するJDは、もしも揉め事が起きれば辞職すると宣言。
 
選挙の結果、僅差で改革派の女子学生が勝利。
ライバルの男子学生側は喧嘩する気満々だったが、女子学生は男子学生に共に会長を務めようと提案。
仲良くお互い手を取り合って行くことになったのに、
男子学生の父親が政治家で、息子の敗北を恥として激怒し、部下に騒動を起こすように指示。
となればJDを辞めさせられると学長は喜ぶ。
 
大学を去ることになったJDは、教師のなり手がないという荒廃しきった少年院に赴くことに。
そこは、冷酷非道なギャングの元締めバワーニ(ヴィジャイ・セードゥパティ)が支配しており、
少年たちにじゅうぶんな食料を与える代わりに酒やドラッグも与え、自分の言うことを聞かせていた。
自らも少年院の出のバワーニは今やじゅうぶんな資金を手にして財界への進出を目論んでいて……。
 
『RRR』と同じく本作も179分の長尺。
前夜というのか当日、92歳にしてスマホデビューする母用のスマホの設定で就寝したのが午前3時。
ゆっくり寝るはずが、大雪で私の通勤を心配した母からの電話で朝7時に起こされてネムネム。
3時間は寝てまうやろと思ったのに、まったく眠くならず。
 
ヴィジャイ演じるJDの強いことと言ったら。無敵です。
酔っぱらって爆睡しているところを学生たちに担ぎ出され、酔拳のごとく戦うのかと思いきや、
泥酔中は全然駄目です。覚醒してからしか戦いませんけれど(笑)。
そしてその強さで大人を叩きのめしても、子どもには絶対手を出さない。
 
ボリウッドらしく踊りのシーンもありますが、むさ苦しい男ばっかり。(^^;
それにヴィジャイの踊りは『RRR』を観た今となってはキレ味イマイチで、
やっぱりラーム・チャランにはどう見ても敵わないのですよねぇ。
顔もどちらかといえばカッコイイというよりはカワイイ顔立ちで、ラーム・チャランが圧倒的に上だし。
 
まだ幼い少年の首が吊られるなど残酷なシーンもあって引きましたが、
それを除けばとても面白くて楽しめる作品です。
映画になぞらえた作り話を得意とするJDが、インド作品のみならず『タイタニック』(1997)の話をしたときは、
私を含めて客席から笑いが起きました。ボリウッド、やっぱり良し。
 
罪は自分で償え。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エンドロールのつづき』

2023年01月30日 | 映画(あ行)
『エンドロールのつづき』(原題:Last Film Show)
監督:パン・ナリン
出演:バヴィン・ラバリ,リチャー・ミーナー,バヴェーシュ・シュリマリ,ディペン・ラヴァル,
   キシャン・パルマー,パレッシュ・メタ,アルペシュ・タンク,ナレシュクマル・メタ他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『ヒトラーのための虐殺会議』の次に。
 
インド/フランス作品。
パン・ナリン監督が自らの少年時代の実体験を基に描いた自伝的作品なのだそうです。
ナリン監督はインドの実力派と言われているそうだけど、私は知らないんだなぁ。
ネットで調べてもヒットするのは2本だけ。しかもタイトルが怪しすぎる。
『性の曼荼羅』(2001)と『花の谷 時空のエロス』(2005)って。劇場未公開だし。
 
しかし本作はめちゃめちゃよかった。
インド版『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)といったところかと思いますが、
私はこっちのほうが断然好き。なんとも愛らしく爽やかで切ない。
行ったこともない異国の話なのに、郷愁を感じます。
 
2010年、インド・グジャラート州の田舎町チャララ。
9歳の少年サマイは両親と妹の4人暮らし。
もとはカースト制度の頂点バラモンだった父親は、訳あって今はしがないチャイ売り。
サマイは父親の仕事を手伝い、列車が駅に停まると窓越しに乗客にチャイを売る。
 
ある日、映画嫌いのはずの父親が家族総出で映画を観に行くと言う。
サマイが映画に連れて行ってもらうのは5歳のとき以来で、
映画に連れて行くのは今日が最後だと言う父親。
 
家族で訪れた街の映画館“ギャラクシー座”で映画に魅せられたサマイは、
学校をさぼってギャラクシー座に忍び込むが、従業員に見つかって放り出される。
しょげるサマイに声をかけたのは、ギャラクシー座の映写技師ファザル。
ファザルはサマイが持参した弁当と引き換えに映写室に招き入れてくれて……。
 
少年の名前サマイには「時間」という意味があるのだそうです。
ファザルから「ご両親はどうして君をサマイと名づけたのかな」と問われ、
「お金も仕事もなかったパパとママには時間だけはあって、
そのときに僕が生まれたから」と答えます。すごくいい表情で。
 
そんなママのつくるお弁当は超絶美味しくて、ファザルは毎度舌鼓を打つ。
ママの料理する様子も素晴らしく、立ち上る湯気や具材を炒める音が楽しい。
 
サマイと悪ガキ仲間6人衆が最高。
駅舎の倉庫から盗み出した映画のフィルムをなんとか映し出そうと、
サマイの指示を受けて道具探し。娯楽のない村人たちも大喜び。
ただ、父親だけは映画をいかがわしいものとして喜びません。
怒ってばかりの父親だったからこそ、ラストには胸が熱くなる。
 
サマイが通う小学校の先生の言葉がなるほど。
今のインドには2つの階級しかない。英語を話せる層と英語を話せない層と
田舎の町を出て行くには英語が必須。
 
エンドロールでオマージュを捧げられる日本人映画監督は3人だったかな。
勅使河原宏と小津安二郎黒澤明
廃棄されて装身具に加工されたフィルムは彼らの化身。
 
心洗われる作品でした。すごくよかった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ヒトラーのための虐殺会議』

2023年01月29日 | 映画(は行)
『ヒトラーのための虐殺会議』(原題:Die Wannseekonferenz)
監督:マッティ・ゲショネック
出演:フィリップ・ホフマイヤー,ヨハネス・アルマイヤー,マキシミリアン・ブリュックナー,マティアス・ブントシュー,
   ファビアン・ブッシュ,ヤーコプ・ディール,リリー・フィヒトナー,ゴーデハート・ギーズ,ペーター・ヨルダン,
   アルント・クラヴィッター,フレデリック・リンケマン,トーマス・ロイブル,ザシャ・ナータン,
   マルクス・シュラインツァー,フレデリック・シュミット,ジーモン・シュヴァルツ,ラファエル・シュタホヴィアク他
 
体力の衰えを感じつつ、スタートダッシュをかけるべく新年も観まくるつもりでした。
ところが、仕事帰りに寄りやすい箕面、エキスポシティ、茨木ではもう観るものがない。
前週は水~土曜日まで1本も観なかったので、この週は月曜日から遠出。
なんばパークスシネマへと向かいました。パークス駐車場は平日の最大料金1,000円というのがありがたい。
 
キャストの誰を省いたらいいのかわからないので(笑)、全員挙げてみました。
1942年1月20日にドイツ・ヴァン湖畔で開かれたヴァンゼー会議の様子を描いています。
ヴァンゼー湖という湖なのかと思ったら、ドイツ語で「湖」は「ゼー」というのですね。
ベルリンの高級住宅地、ヴァン湖畔にあるナチスドイツが所有する邸宅で開かれたのがヴァンゼー会議。
まったく、どういう思考でこんなことになるのか仰天するのみ。
 
議長は国家保安本部(ゲシュタポ)長官ラインハルト・ハイドリヒ。
「ユダヤ人問題」の「最終的解決」について議論するために招集されたのは、
ハインリヒ・ミュラー、アドルフ・アイヒマンなど、本部に所属する親衛隊や、
ポーランドやラトビアにいる親衛隊の面々と、各省のお役人たち。
 
「ユダヤ人問題」っていったい何なのよ。聞いた瞬間に不快感が募る。
こんな問題のために高官たちが首を揃えて話し合うって、何かもう前提が変。
ユダヤ人がこんなことしましたあんなことしましたという話ではなくて、
ユダヤ人をとにかく絶滅させましょうという話。
「最終的解決」なんて言葉を使って直接的表現を避けているけれど、つまりは殺す。
銃殺には時間がかかるからもっと手っ取り早く大人数を殺す方法はないか、そういうことです。
 
ハイドリヒに楯突いてみせるお役人もいますが、虐殺に反対しているわけではありません。
自分を無視して話を進められるのが気にくわないだけ。
殺すのは時間がかかるし、騒動も起きるかもしれないから、断種のほうがいいとか。
女子供まで殺めるのはどうなんだという意見も出ますが、
どっちみち男親は殺すんだから、親がいなくなった子供を生かしておくほうが可哀想とか。
 
無茶苦茶な討議をしているのに、殺戮前提の話については誰も変だと思っていない。
「2分の1ユダヤ人や4分の1ユダヤ人をどうするか」なんて話を真顔でされたら唖然とするしかありません。
少しでも多くのユダヤ人を殺した親衛隊が褒められてドヤ顔をする。
 
会議に出席していた皆さん、80年が経過した今、どうですか。
何百万人というユダヤ人を殺したけれど、殺し損ねたユダヤ人がいることを後悔しているんですか。
どう思っていますか。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『REVOLUTION+1』

2023年01月28日 | 映画(ら行)
『REVOLUTION+1』
監督:足立正生
出演:タモト清嵐,岩崎聡子,高橋雄祐,紫木風太,前迫莉亜,森山みつき,イザベル矢野,木村知貴他
 
安倍晋三元総理が近鉄奈良西大寺駅前で選挙の応援演説中に撃たれたのは2022年7月8日のことでした。
それから3カ月も経たないうちに公開に至った本作。
なんとなく嫌な印象を受けて、観に行く気は起こらず今まで来ました。
しかし近所のシネコンでは観るものがなくなり、観なきゃ文句も言えないからナナゲイへ。
 
監督は元日本赤軍のメンバー、足立正生。観に行く気になれなかった理由はここにもあります。
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)を観て「総括」という言葉が大嫌いになった私は、
連合赤軍リニューアルメンバーだった監督が撮った映画を好きになれるとは思えない。
……という下げ下げ状態からの鑑賞です。
 
主人公は銃撃事件の犯人・山上徹也をモデルとした川上達也(タモト清嵐)。
母親(岩崎聡子)の実家の建築業を継いだ父親(高橋雄祐)は自殺。
逹也の兄(紫木風太)は小児がんに罹って失明。
母親が統一教会にのめり込み、多額の献金をおこない続けるせいで極貧生活に。
達也の妹は日々の貧相な食事に耐えきれず、「せめて週1でハンバーグを食べたい」と訴えるが駄目。
 
貧乏ゆえに大学進学もあきらめざるをえなかった逹也は母を恨み、
これは母が信じる統一教会と、教会と深い関係にある安倍元総理のせいだと考え、
安倍元総理を殺害すべく機会を探り、爆弾づくりを始める。
 
モノローグ形式で、舞台演劇っぽい。
先入観があるからでしょうが、台詞、仕草、表情、音、何もかも好きになれません。
そもそも事件が起きてから映画が撮られるまで時間がなかったから、取材不足は否めず、
「話題になりそうな題材で素早く撮りました感」があるのです。
 
安倍元総理のことは大嫌いでしたけど、だからって犯人に肩入れした本作を好きになれるわけじゃない。
主人公の妹の「民主主義の敵だった安倍さんを殺したお兄ちゃんを尊敬する」みたいな台詞がありますが、
安倍さんって、「民主主義の敵」というほどの人でしたかね。
 
あ~、政治的な作品の話をするのはやっぱり苦手です。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『そして僕は途方に暮れる』

2023年01月27日 | 映画(さ行)
『そして僕は途方に暮れる』
監督:三浦大輔
出演:藤ヶ谷太輔,前田敦子,中尾明慶,毎熊克哉,野村周平,香里奈,原田美枝子,豊川悦司他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『ひみつのなっちゃん。』の後に。
 
やっぱり言わずにはいられない、ハマの番長と同姓同名の監督、三浦大輔
原作は、劇作家でもある三浦監督自身のヒット舞台。
舞台版と同じく藤ヶ谷太輔(Kis-My-Ft2)を主演に起用して映画化。
 
フリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は鈴木里美(前田敦子)と5年間同棲中。
毎日真面目に出勤する里美を横目に自堕落な生活を続けていたある日、浮気がバレる。
里美は話し合いたいと言っているのに、すかさず逃げ出す裕一。
 
頼った先は、同郷北海道出身の親友・今井伸二(中尾明慶)。
快く迎え入れてくれた伸二だったが、転がり込んできた分際で態度がデカすぎる裕一にイラッ。
ついに我慢できずに裕一を非難すると、またしても裕一はすぐに逃げ出す。
 
次に訪ねたのはバイト先の先輩・田村修(毎熊克哉)。
里美に言われたことを参考に家事一般を引き受けたところ、修は大喜び。
しかし酔っぱらった修と一悶着あって怒鳴りつけられた裕一はまたまた飛び出す。
 
次は誰に泊めてもらおうか。
学生時代の後輩・加藤勇(野村周平)を面白い話があると言って呼びつける。
映画の助監督を務める勇は、裕一の話を映画のネタになると受け止める。
喜んで聴いてはくれたものの、裕一が「次はおまえの家に泊めてくれ」と言おうとした矢先に
「次はどうするんですか」と勇から勢い込んで言われ、言い出せなくなってしまう。
 
恋人、友人、先輩、後輩と渡り歩いて頼る人がいなくなった裕一は、
ついに今まで避けていた姉・菅原香(香里奈)に連絡をするのだが……。
 
初めの頃の裕一はとんでもないクズ。
里美といるときも伸二の家に転がり込んだときも、自分は居候の身でゴロゴロしているだけなのに、
「トイレの電球切れてたよ。買って付け替えといて」とか「出かけるとき、音を立てないでくれるかな、
俺、起きちゃうから」とか、「俺の布団敷いといて」とか。アホぼけカス。
 
まったく好きになれなかった彼が逃げ出すたびに、少しずつ可哀想になってきます。
彼の振る舞いは何も考えていないゆえのことで、マウント取ったり嫌がらせをしたりしているのではない。
それが人にどんな思いをさせているのか、まったくわかっていません。
指摘されれば悪いことだったのだと気づく。変わろうと思うけど変われない人。
 
郷里の母親(原田美枝子)はリウマチを患っているというのに父親(豊川悦司)に捨てられ、
その父親もこの親にしてこの子、逆もまた然りというようなクズ。
でもなんというのか、憎めないんですよねぇ、トヨエツ演じるクズ男は。
 
大晦日、団らんとも言えない団らんの様子にちょっぴりホロリ。いいよトヨエツ。
ホロリときたところでそのオチって。
アンマリだと思ったけれど、「面白くなってきたじゃねえか」。そう感じられたら前に進めるかも。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする