夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アイム・ソー・エキサイテッド!』

2014年01月30日 | 映画(あ行)
『アイム・ソー・エキサイテッド!』(原題:Los Amantes Pasajeros)
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ハビエル・カマラ,カルロス・アレセス,ラウール・アレバロ,ロラ・ドゥエニャス,
   ウーゴ・シルバ,アントニオ・デ・ラ・トレ,ホセ・ルイス・トリホ,セシリア・ロス他

好きなのに、カタカナの音のつながりがむずかしくて、
なかなか言えない名前の人といえば、ジョン・レグイザモと本作の監督。
前者は「イモではない」と覚えてから言えるようになりましたが、
後者はシュッと言えるまでにまだまだ時間がかかりそうな私です。

そんなスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の新作をテアトル梅田にて。
仕事帰りに車でそのまま梅田へ向かうので、安いコインパーキングを見つけたい。
テアトルで映画を観るときは、徒歩で10分ほど離れた場所に大抵駐めていましたが、
出発前に調べたら、すぐ近くに立体式のタイムズができている。
しかもこの辺りではもっとも安い、最大料金1,200円。うひょっ。

原題は“Los Amantes Pasajeros”で、翻訳サイトでは「束の間の恋人」。
“PASAJEROS”単独で翻訳すると「乗客」の意味もあり、
機上で乱痴気騒ぎとなった乗客らを指している模様。
以下、ネタバレを含みますので、ご覧になる予定の方はご注意ください。

マドリードからメキシコシティへと飛び立ったペニンシュラ航空2549便。
ところが機体のトラブルにより、不時着を余儀なくされる。
管制塔に連絡、受け入れてくれる空港が見つかるまでの間、空中を旋回しつづけるしかない。

そんな事態にみんなが気づいて騒ぎださぬよう、
エコノミーは客どころか客室乗務員までもが薬で眠らされてぐっすり。

ビジネスの客は曲者だらけ、未来を予言するアラフォー処女に、伝説のSMの女王、
不祥事から逃げ出した銀行頭取、落ち目の俳優、派手な新婚カップルなどなど。
しかも客室乗務員のホセラ、ファハス、ウジョアは全員ゲイ、
機長のアレックスはバイセクシュアルで、
副機長のベニートはストレートだと言い張るものの怪しい。

こんな一行を積んだ2549便はどうなるのか。

邦題にもなっているポインター・シスターズの“I'm So Excited”に乗せて
オカマ3人組が踊るシーンが予告編で流れ、これはめちゃめちゃ楽しい。
ペドロ・アルモドバル監督がこんなはっちゃけた作品を撮るなんてと、
公開をとても楽しみにしていました。

結論としては、う~ん、コメディとしてはちょっともっちゃり、テンポ悪し。
もともと好きな監督作品だからあまり退屈せずに観ていられましたが、
これが初アルモドバル監督ならツライかもしれません。
乗客がいい気分になれるようにとカクテルに盛られたメスカリンで、
誰もが発情、そこらじゅうでおっぱじめてしまうのも、
この監督でなければ「なんだこりゃ」と唖然としたことでしょう。

だけど後味は悪くありません。
不時着に失敗して死ぬかもしれないというときに誰かに電話するとしたら。
これだけは伝えたい、あの人には伝えたい、
そんなあれこれが妙に清々しく、ま、よかったと思えるのでした。
旋回する飛行機の図なども、CGを駆使したリアルな映像だらけの昨今、
『サンダーバード』でも観ているかのようなレトロ感が憎めません。

……でも、次回作はやっぱりシリアスなものをお願いします、監督。
前作がこれなんだから、どれだけ振り幅ひろいのよ。

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『大脱出』

2014年01月28日 | 映画(た行)
『大脱出』(原題:Escape Plan)
監督:ミカエル・ハフストローム
出演:シルヴェスター・スタローン,アーノルド・シュワルツェネッガー,ジム・カヴィーゼル,
   カーティス・“50 Cent”・ジャクソン,ヴィニー・ジョーンズ,ヴィンセント・ドノフリオ他

109シネマズ箕面にて、何も割引のない日にポイント鑑賞。
貸切状態になる予感がありましたが、開映直前に他のお客さんが2名到着、
“おひとりさま”ばかり計3名の入場となりました。

スウェーデン出身の監督による、ばりばりハリウッド大作。
スタローンもシュワちゃんもあまりにムキムキすぎて私の好みを通り越し、
オトコを見るなら別の作品を観るという選択肢もありましたが、
同日上映のなかではこれがいちばんスカッとできそうで。

レイ・ブレスリン(シルヴェスター・スタローン)は脱獄のスペシャリスト
自らでっちあげた犯罪で刑務所に潜入しては脱獄を成功させ、
警備の弱点を指摘するセキュリティ・コンサルタントを務めている。

そんな彼のもとに、民間の極秘刑務所への潜入調査依頼がCIAから舞い込む。
その刑務所に関する情報は存在すら非公開で、所在地も教えてもらえない。
これまで脱獄にさいして協力してきた良きパートナー、
アビゲイル(エイミー・ライアン)とハッシュ(カーティス・“50 Cent”・ジャクソン)は不安を感じるが、
セキュリティ会社社長のレスター・クラーク(ヴィンセント・ドノフリオ)は、
高額報酬をみすみす断る手はないと、レイに承諾させる。

荒々しい手段で拉致されて眠らされ、目覚めるとすでに刑務所内。
今回の話は刑務所所長にも通っているはずで、
万が一のときには脱出できるコードをレイは携えていたが、どうも様子がおかしい。
ポルトスという偽名を使うレイに対して、所長のホブス(ジム・カヴィーゼル)は冷酷無比な態度。
しかもホブスはレイの刑務所警備に関する本の精読者で、鉄壁の警備に誇りを持っていた。

外界とは完全に遮断されているとおぼしき“墓場”と呼ばれる刑務所で、
外部の協力者とは連絡手段を断ち切られた状態。
しかも自著に基づいて設計されたこの刑務所から本当に脱出できるのか。

考えあぐねるレイに近づいてきたのは、“墓場”を束ねる囚人、
エミル・ロットマイヤー(アーノルド・シュワルツェネッガー)で……。

いんや~、予想以上におもしろかったです。
なにしろ主演がこんなふたりですし、ともすれば時代遅れな作品になりそう。
けれども、大がかりではあれど脱獄だけに絞ったおかげで、
男臭さ満点の痛快アクションエンターテインメイントに仕上がっています。

ギラギラしたマッチョは苦手なのですが、
スタちゃんもシュワちゃんも65歳を過ぎて、ちょっと枯れた感じがイイかも。
相変わらず強いのは強くて、枯れたオッサンがこうだと格好よく見えます。
脱獄するために刑務所内で観察を重ね、規則性を見出して、
弱点を突く過程も非常におもしろく、感心しました。

ところで私は、主演および脱獄ものだということのみ知って観に行きましたが、それが正解。
鑑賞後にキャッチコピーを見て唖然、ネタバレにもほどがある。
いちばん「おおっ!」と驚ける場面をバラしてしまっているなんて。

イスラム教徒の囚人ジャベド役だったファラン・タヒールがいい味で、
しかも脱いだら実にいいカラダだったことも付け加えます(笑)。
どこにいても神に祈りつづける彼らの姿勢に、ちょっと切なくなりました。

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『ソウルガールズ』

2014年01月26日 | 映画(さ行)
『ソウルガールズ』(原題:The Sapphires)
監督:ウェイン・ブレア
出演:クリス・オダウド,デボラ・メイルマン,ジェシカ・マーボイ,シャリ・セベンズ,
   ミランダ・タプセル,トリー・キトルズ,エカ・ダーヴィル他

さばのゆ大学へ行く前にハシゴした映画の2本目。
梅田ガーデンシネマの1階下、シネリーブル梅田にて。

オーストラリア先住民のアボリジニ。
そのアボリジニ初の女性ボーカルグループ“The Sapphires”をモデルにした実話とのこと。
予告編を観たときから、これは観なくちゃと思っていました。

1960年代、まだまだ白豪主義のオーストラリア。
アボリジニはまるで動植物のような扱いを受け、居住区に押し込まれた生活を送っている。
町へ出向けばあからさまな差別が待ち受け、猿よばわりされる日々。

そんなアボリジニのなかに、歌をこよなく愛する三姉妹がいた。
ゲイル、シンシア、ジュリーは、カントリー音楽が大好き。
コンテストに出場すべく町へと出かけるが、思いっきり出来レース。
実力だけを見れば、彼女たちに敵う者などいないのに。

コンテストの司会者を務めていた飲んだくれのミュージシャン、デイヴは、
彼女たちの声に聞き惚れるが、そのせいで会場責任者から解雇される。
ちょうど戦火のベトナムでは、米軍基地の慰問シンガーを募集中。
オーディションをぜひとも受けたい三姉妹は、デイヴに段取りを頼む。

デイヴは引き受ける条件として、カントリーでなくソウルを歌えと要求。
その理由をあまりに熱く語るデイヴにおされ、三姉妹は承諾。
家族らを説得し、メルボルンに暮らすいとこのケイも加え、いざオーディションへ。
合格を果たすと“The Sapphires(ザ・サファイアズ)”として戦地に乗り込むのだが……。

アボリジニの歴史をちっとも知りませんでした。
政府がアボリジニの数を意図的に減らそうと、
色の白いアボリジニ、すなわち白人に見える子どもが生まれると、
白人として育てるために無理やり親から引き離し、白人家庭や施設で養育したそうです。
これを「盗まれた世代」と呼び、ケイはまさにその盗まれた子ども。
『裸足の1500マイル』(2002)はそんな子どもを描いた作品なのですが、
まったく覚えがないということは、私は観ていないのかなぁ。

さまざまな壁にぶち当たりながらも、彼女たちは超ポジティブ。
アボリジニならではの悩みもあれば、恋に傷ついて暴れることも。
圧倒的な歌唱力、特にジュリーの声は素晴らしい。
『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』にもまったく引けを取りません。

彼女たちが国際的シンガーになればそれもまた良かったのでしょうが、
それぞれがアボリジニのために活動したという後記も良かったです。

そうそう、デイヴ曰く、カントリーとソウルはどちらも「喪失」がテーマ。
だけどカントリーはそれをぐちぐちと嘆く音楽で、
ソウルは取り戻そうと発奮する音楽なのだそうです。

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『さよなら、アドルフ』

2014年01月24日 | 映画(さ行)
『さよなら、アドルフ』(原題:Lore)
監督:ケイト・ショートランド
出演:ザスキア・ローゼンダール,カイ・マリーナ,ネーレ・トゥレプス,
   ウルシーナ・ラルディ,ハンス=ヨヘン・ヴァークナー他

さばのゆ大学へ行く前にハシゴした映画の1本目。
来月いっぱいで閉館となる梅田ガーデンシネマにて、退会手続きをしがてら。
おそらく梅田で最も満員率の高い劇場ではないかと思うのですが、
劇場の経営にはそれだけではやっていけない事情がいろいろあるのでしょうね。

オーストラリア/ドイツ/イギリス作品で、
オーストラリアの女流監督によるブッカー賞最終候補作『暗闇のなかで』の映画化。
原題は“Lore”、主人公の名前です。
あいかわらず年齢層高めのガーデンシネマ、本作も満員でした。

1945年の春。ナチス親衛隊の高官を父に持つ14歳の少女ローレ。
ナチスドイツの勝利を信じて疑わなかった彼女は、
総統ヒトラーが亡くなったと母から聞かされ、ショックを受ける。
父は戻って来ず、母も出頭を余儀なくされ、ローレと幼い弟妹は取り残されてしまう。

もしものときには祖母を訪ねるようにと言われていたローレは、
妹のリーゼル、双子の弟ギュンターとユルゲン、
まだ授乳を必要としている赤ん坊のペーターを連れて、
はるか900km離れた祖母の家を目指して歩き始めるのだが……。

終戦直前、父親は田舎の一軒家へ家族を移しますが、
敗戦と同時に世間のナチスへの風向きは一変。
一軒家を提供してくれた家族も手のひらを返したように冷たくなり、
ひもじさに耐えられないギュンターが牛乳を盗んでとうとう追い出されます。

わずか14歳の少女が幼い弟妹を連れて歩こうとも、
出会う人びとは自分のことで手いっぱい。
優しく応対してもらえることはまずありません。
唯一気にかけてくれたのがユダヤ人だという青年トーマスでしたが、
誇り高いローレにとっては、ユダヤ人に助けられるなんてあり得ないこと。

いくら拒絶されようともトーマスはローレたちについて来ます。
これは別に彼女たちのことが心配だからではなく、
一緒にいれば、困った状況を切り抜けられるかもしれないから。
たとえば赤ん坊がいれば食糧を多めにもらえるし、
逆にトーマスの身分証明書によってローレたちが救われることも。
利害の一致を見出すと、険悪な雰囲気を漂わせながらも同行を認めるように。
だからと言って、お互いに感謝の意などは示しません。

ようやくたどり着いた祖母宅。
張りつめていた糸が切れるかのようなローレの振る舞いにはなんとなく納得。
おそらく彼女が精神的に解放されることはないのではないかと。
ずっと心に暗闇を抱えたまま生きて行ったでしょう。

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さばのゆ大学に行く。

2014年01月22日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
この間の日曜日、アラ還のお姉様にお誘いいただき、
「さばのゆ大学」なるものへ。

東京・世田谷区にある「お湯かふぇ さばのゆ」
銭湯のようなゆる~いカフェで、日々いろんなイベントがおこなわれているそうです。

その支部としてオープンしたのが大阪・福島区の「さばのゆ温泉」。
そしてそこに開校したのが「さばのゆ大学」です。

日曜日に開講されたのは坂本頼光(さかもとらいこう)さんの活弁ライブ。
坂本さんは活動弁士、つまり無声映画の弁士です。
日本でただひとつの常設無声映画館「東京キネマ倶楽部」も、
HPを見ると無声映画館というよりはイベントホールになってしまった様子。
弁士付きで楽しめる機会はそうそうなく、これは行ってみなくちゃと。

当日、梅田スカイビルで映画を2本ハシゴ。
それについては後日UPするとして、福島まで徒歩にてテクテクと。
道中、宝くじ売場を通過、戻ってロト6を10回分購入したりして。

さばの湯温泉は建物の2階、1階はカレー屋さん“パンニャ”
受講者は予約時に「カレー食べます」と書き添えておけば
塩麹ドレッシングサラダを付けてもらえるということで、
お姉様が予約を入れておいてくださいました。

現地集合は17:00。と、ところが、パンニャの開店時間は18:00。
活弁ライブも18:00開始。え~、ライブ前に食べられへんやないの。
ならばそうと予約時に言うてよとみんなでちょっぴりブーたれながら、
近所の“大衆下町酒場しもたや”で串数本と地酒をかっ食らい、
開場時間の17:30を超えたころ、さばの湯温泉へと戻ります。

2階へ上がると受付が。
ここで本日の参加費2,300円を払い、冷蔵庫から好きなドリンクをいただきます。
しもたやでグラスになみなみ注がれた地酒を2杯飲んでいますから、
もう相当できあがっているのですが、ここはやはりお酒、缶チューハイを。
各自座布団を敷いてすわるのは、昔よくかよった岡町寄席を思い出して懐かしい。
しかし、岡町寄席よりさばのゆ温泉はずいぶんとせせこましく、
空間度低し、演者との距離がものすごく近くて熱気が感じられます。

さて、活弁ライブが始まります。
主たる演目は決まっているようですが、それ以外はその日次第。

先月の開催時にはプロジェクターの不調で途切れてしまった演目があるそうで、
今月はすべて最後まで上映できるかどうか。ドキドキ。(^o^)
いずれも頼光さんの軽快で迫真に満ち満ちたしゃべりがくっついてサイコー。

めちゃめちゃ可笑しかったのは、ロシアのアニメ『昆虫カメラマンの復讐』。
100年以上前に製作された無声アニメらしいのですが、
カブトムシ夫とトンボ(バイセクシュアル?)が不倫、
トンボと良い仲になりかけていたカメラマンのクワガタが復讐を決意。
カブトムシ夫とトンボがホテルへとしけ込むところを激写。
一方、カブトムシ妻はキリギリスと不倫中。
カブトムシ夫婦が仲直りするも、出かけた劇場でクワガタ撮影のフィルムが流れる。
……凄くないですか。大笑いしました。

この日がネタおろしとなったのは、昭和初期のアニメーション『結核予防』。
結核予防知識を広めるために真面目につくられたアニメなのでしょうけれども……傑作です。
その他、岡本綺堂作の戯曲『鳥辺山心中』なども。
ゲスト出演は桂九雀さん、落語まで堪能させてもらいました。

みんなが笑うぞ~と思って臨んでいる場っていいですね。
ひよこ豆と羊肉のカレーを食べそこねたので、次回はリベンジ。

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