夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ディナーラッシュ』

2003年05月30日 | 映画(た行)
『ディナーラッシュ』(原題:Dinner Rush)
監督:ボブ・ジラルディ
出演:ダニー・アイエロ,エドアルド・バレリーニ,カーク・アセヴェド,
   マーク・マーゴリス,サマー・フェニックス他

いやはや、ひさびさに満足ならぬ満腹!
ごっつぁんです。

ニューヨークのイタリア料理店「ジジーノ」。
店のオーナーはルイス。
その地区の賭けの胴元でもある。

昔ながらの温かい店を望むルイスだが、
その息子でシェフのウードは、批評家ウケする流行りの店へと「ジジーノ」を変貌させる。
店に対するスタンスが父とはちがうとはいえ、料理の腕は確かなウード。
その結果、「ジジーノ」は超人気店となり、夜な夜な大勢の客が押し寄せる。
予約は3か月先までいっぱい。

ある日、ルイスのビジネスパートナー、エンリコが街で殺される。
ギャンブル狂の副シェフ、ダンカンが賭け金を払えずにいるせいらしい。

この映画は「ジジーノ」での一夜を舞台に、
さまざまな群像劇を見せてくれます。

大流行りの店を手に入れたいギャング二人組。
ひとりは食い意地が張っているのもおかしい。
画商のオヤジはひたすら文句ばかり。
ひとりでカウンターでの食事を楽しむビジネスマンらしき男。
客から出題されるクイズにすべて答えて小銭を稼ぐバーテンダー。
雑誌社の料理記事を担当する辛口批評家。
わがままな客たちを相手にするフロア係の女性たち。

厨房は常にあわただしく、フロアも人でごった返しているけれど、
サービス係は決して走らない。
サービス係がドタバタ走るお店って嫌だもん。
批評家の食べ方があんまり美しくなかったりするのも笑える。

店が突然停電になったとき、
騒ぐ客を静めるために、飲み物のサービスを申し出るシェフ。
だけど料理は意地でもタダでは食わさん。
懐中電灯を手に料理を続ける厨房。

『ゴスフォード・パーク』(2001)では主人と従者。
『ディナーラッシュ』では店と客。
特に何かが起こるでもないのだけれど、
こういう群像劇って、いやぁ、楽しめます。

監督は3000本以上のテレビCMを撮った人だそうで、
このテンポの良さに納得。
洒落っ気も旨そうな料理もたっぷりです。

「復讐とうまい料理はあとを引く」。
「後味もね」。
「?」
「後味もいい」。

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ついでに、ラース・フォン・トリアー。

2003年05月27日 | 映画(番外編:映画とこの人)
「観るのに忍耐力を要する監督」と書いたので、
ついでにそのラース・フォン・トリアー監督について。

デンマーク出身のトリアーは、
病院を舞台にしたTVドラマ、『キングダム』で人気を博しました。
本国ではものすごい視聴率だったようです。
スティーヴン・キングも絶賛したこのドラマは
ヨーロッパ版『ツインピークス』と評された気色悪いホラーです。
出演者にウド・キア。この人はトリアー映画の常連さん。
ライオンの歯磨きのCMで、奥菜恵と共演していたDr.ナビックと言えばわかるかも。
歯科医の演技をしていても、
私にはウド・キアの顔はホラー向きに見えて仕方がありません。

トリアーは「ドグマ95」という誓いを打ち立てています。
これはなんぞやと簡単に説明しますと、
「手持ちのカメラonlyで、撮影はロケのみ。セットなどは当然使用しない。
人工的な照明は禁止、CGなどに頼らない」。
ほかにも何箇条かありますが、だいたいこんな感じです。

その誓いを守って撮った作品で
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)よりも前に話題になったのが『奇跡の海』(1996)。
新婚ラブラブの夫婦。
ある日、鉱山で働く夫は事故に遭い、下半身不随になってしまう。
自分の身体の状態を嘆く夫は、妻にほかの男と寝ることを勧める。
ほかの男と寝ることが夫への愛の証だと信じて疑わない妻は
それから村中の男と寝始める。
めちゃめちゃヘヴィーな話でしょ。
夫役のステラン・スカルスゲールドは、
『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』(1997)で
主人公の才能をうらやましく思う数学教師を演じた人。

『イディオッツ』(1998)は
知的障害者のふりをして人々の反応を確かめようとするグループの話。
ひとつまちがえばものすごく悪趣味なのですが、
そこにあえて挑もうというのがこの監督。
いや、本人は挑んでいる気なんてなくて、
タブーをタブー視していないから撮れるのかもしれませんね。
彼の作品のネタを考えると、
タブーには触れずにおこうとしている自分に気づかされます。

観るのにとっても忍耐力を要しそうなネタばかりでしょ。

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暗いようで暗くない。

2003年05月26日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
映画を「明るい」「暗い」で括るわけにはいかないけど、
ものすごく大ざっぱにいくとそんな分け方になるでしょうか。
「明るい」「暗い」の観点も、人によってまったく異なるのがおもしろいです。

前述の『サンタ・サングレ 聖なる血』は、
私は暗い映画だとは思いません。
もう1本、私が断じて「暗い映画」だと思えないのが
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)です。

ビョーク演じる町工場で働く女性は、
先天的な病気で次第に視力を失いつつあります。
自分の血を引く幼い息子もいずれは視力を失うはず。
息子が手術を受けられるように、女性は賢明にお金を貯めます。

この映画はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞して、
日本でもロングランになりました。
あらすじだけ書くと感動のドラマだし、
アイスランドの歌姫ビョーク主演の異色のミュージカルということもあり、
映画館に足を運ばれた方も多いのでは。

公開当時、私は観にいきませんでした。
監督がラース・フォン・トリアーという人で、
この人の映画は、観るのにかなり忍耐力を要するからです。(^^;
マスコミなどでは感動モノとして取りあげていたけれど、
この監督が一筋縄ではいくものか!と思っていました。
案の定、感動モノと思って観にいった知人からは、
「めっちゃ暗くて残酷」「観にいかなければよかった」などの感想。
私が観たのはビデオ化されて数か月も経ったころ。
「今日はがんばって観てみよう」と万全の態勢で臨みました。

で、私の感想は「この映画は暗くない」。
主人公はせっせと貯めたお金を隣人に盗まれ、
半狂乱になって隣人を殺してしまいます。
結果、絞首刑になるのです。
拘留中、工場の友人が息子の手術の段取りを進めてくれるのですが、
自分の刑のことよりも、息子のことが心配でならない主人公。

刑が執行される日、絞首台を前に震える主人公のもとへ、何かが届けられます。
視力を失っているために、手でそれが何かを確かめる主人公。
それは息子の眼鏡でした。
息子にもう眼鏡が必要ないことを知ったときの、主人公の満ち足りた表情。

刑が執行されるシーンの生なましさよりも、あの満ち足りた表情。
幸せいっぱいの映画だと言うと「どこがや~!」と言われそうですが、
私にとっては「全然暗くない」。
見よ、あの表情を!と思った映画でした。

ちょうど今日、今年のカンヌ受賞作品が発表されたようです。

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『サンタ・サングレ 聖なる血』

2003年05月22日 | 映画(さ行)
『サンタ・サングレ 聖なる血』(原題:Santa Sangre)
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:アクセル・ホドロフスキー,ブランカ・グエッラ,サブリナ・デニスン他

「メキシコが好き」と言ったまま、
『シカゴ』(2002)やら『ハリポタ』やらにうつつを抜かしてしまいました。
これは、チリ生まれの監督がメキシコを舞台に製作したイタリア映画。
1989年の作品です。

少年フェニックスの父はサーカス団の団長。
ある晩、父が団員の女性と浮気。
その現場を目撃したフェニックスの母は、父のイチモツに硫酸をかける。
激怒した父は母の両腕を切り落とし、みずからも喉を掻き切って自殺。
その様子を一部始終見ていたフェニックスはトラウマを抱え、
口もきけなくなり、精神病院に収容される。

数年後、精神病院の彼のもとへ母がやってくる。
母は彼を連れだす。
両腕をなくしたの母の腕となるフェニックス。
自分の意志とは関係なく、母の思いのままに事が運ばれていくようになる。

父の浮気相手をはじめとして、
フェニックスに近づく女性に激しい憎悪の念を抱く母。
母はフェニックスの手と腕を使い、女性たちを次々と殺してゆく。

フェニックスと母のまさに二人羽織。
全編暗くておどろおどろしく、これはホラー、
なおかつ私の苦手なスプラッタ・ムービーに分類されるでしょう。
でもなぜか大丈夫でした。

ここから思いっきりネタばれですが、
これは暗くて怖いだけの映画じゃない、と私は思う。
よき理解者を得たフェニックスが、最後は母を殺してしまいます。
壮絶な殺戮の繰り広げられた屋敷をあとにした彼が
大勢の警官に取り囲まれ、「武器を捨てて手を挙げろ!」と言われます。
おとなしく、静かに手を挙げる彼。
そして「自分の手だ!」と叫びます。

自分の意志で母を殺し、自分の意志で手を挙げる。
切なさと、喜びと、自信と、
その「自分の手だ!」のひと言に、いろんな思いを感じました。

10年以上前に観たにもかかわらず、これまた忘れられない作品です。

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『ハリー・ポッター』脇役陣、この人を観るなら(その3)

2003年05月16日 | 映画(番外編:映画とこの人)
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の出演者で、
もうひとり、忘れてはいけないのが、ほとんど首なしニック役のジョン・クリース。
彼はイギリスのお笑い軍団「モンティ・パイソン」の一員。
『バンデットQ』(1981)や『未来世紀ブラジル』(1985)、
『12モンキーズ』(1995)などの監督であるテリー・ギリアムも
同じくモンティ・パイソンのメンバーです。

メンバーのひとりのグレアム・チャップマンは
15年ほど前にエイズで死亡しましたが、
モンティ・パイソンの結成30周年記念パーティーにはお骨で登場し、
テリー・ギリアムが遺灰をぶちまけてしまうという場面も。
彼らのギャグはスゴイです。

ジョン・クリースなら『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)。
ワンダをはじめとする4人は宝石泥棒をはたらく。
強奪したダイヤをそれぞれが独り占めしようとあの手この手を考えます。
クリースはこの映画で脚本も担当。非凡なオッサンです。

この作品と出演者はほぼ同じ、
やはりクリースが脚本も担当した『危険な動物たち』(1997)も侮れず。
ロンドンのとある動物園が業績不良のため、アメリカの企業に買収される。
新社長は獰猛な動物ばかりを買い取って、
スリルあふれる動物園へのイメージチェンジをもくろむ。
処分されることになる小動物たちを救済したい飼育係たち。
新社長側と元の動物園側で対立がはじまり、事態はスゴイことに。
これもおバカでしょ。

ほとんど首なしニックが登場するたんびに
「オヤジ~、がんばっとるなぁ!」と声援を送りたくなる私です。

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