夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
真摯に、ときには楽しく投稿

女優の高峰秀子さん、私は天上の女神のような存在で、思い馳せて・・。

2024-05-01 14:34:33 | 喜寿の頃からの思い

小庭の新緑の中で、雨が降るのを眺めたりした・・。

過ぎし4週間前の頃、亡き女優の高峰秀子さんの『生誕100年 大特別展』が、
開催されることをネットで知ったりした。

「高峰秀子生誕100年プロジェクト」公式サイト (takamine-hideko.jp)

そして私は、人出の多い都心は苦手となっているが、
『生誕100年 大特別展』を拝見しょうか、と思い重ねてきた・・。



私は
高峰秀子さんに関しては、知人でもなく、敬愛を重ねてきたひとりであり、
たった一度だけ偶然にお逢いできたことがあった。

私が二十歳の時は、東京オリンピックの開催された1964年〈昭和39年〉の秋、
大学を中退し、映画の脚本家になりたくて、映画青年の真似事をしていた時期で、
オリンピックには眼中なく、京橋の近代美術館に通っていた。

この京橋の近代美術館は、この時は戦前の邦画名作特集が上映されていたので、
数多くの戦前の昭和20年までの名作を観ることが出来た。

この中の作品の中で、山本嘉次郎・監督の『綴方教室』(1938年)、
そして『馬』(1941年)も観て、天才子役、少女と称せられた高峰秀子さんの存在を実感させられたりした。

私はこの当時の1964年に於いては、
少なくとも木下恵介・監督の『二十四の瞳』(1954年)、
成瀬巳喜男・監督の『浮雲』(1955年)、
木下恵介・監督の『喜びも悲しみも幾歳月』(1957年)、
松山善三・監督の『名もなく貧しく美しく』(1961年)等は、当然のように鑑賞していた。

そして封切館で松山善三・監督の『われ一粒の麦なれど』(1964年)で観たばかりの年でもあった。

私は女優の高峰秀子さんの存在は、天上の女神のような存在であり、
『二十四の瞳』と『浮雲』が、ほぼ同時代に演じたこの御方には、ただ群を抜いた女優であった。

子役、少女、そして大人としての女優としての存在は、
私のつたない鑑賞歴に於いて、この御方以外は知らない。

その上、脚本家、ときには監督もされた松山善三さんには、
まぶしいようなあこがれの存在の人であり、秘かに敬意をしていた。


このような過ごしていた間、確か冬の日だったと記憶しているが、
私は成城学園の近くの砧にある東宝の撮影所で、
宣伝部の方と話し合っていた時、
たまたま高峰秀子さんが、こちらに向かって来た時があった。

宣伝部の方が飛び出て、
『この青年・・大学を中退し、この世界に・・』
と話されていた・・。

『こんにちは・・でも・・もったいないわ・・大学をお辞(や)めになるなんて・・
でもねぇ・・大変ょ・・この世界は・・』
と高峰秀子さんは私に言った。

私は、この当時も大女優であった高峰秀子さんとは、
これが出会いであったが、これ以降はお逢いしたことがない。



この後の私は、映画青年の真似事、その後に文学青年の真似事もあえなく敗退し、
やむなく私はサラリーマンに身を投じ、音楽業界のあるレコード会社に35年近く勤めて、
2004〈平成16〉年の秋に定年退職となり、その直後から多々の理由から年金生活を始めたりした。

この間、サラリーマンの現役時代のいつの日が忘れてしまったが、本屋の店頭で、
高峰秀子さんの随筆の本にめぐり逢い、数冊の随筆集を読みはじめ、これ以降は本屋で見かけるたびに、
購読してきた・・。

そして確か2010年の年末に高峰秀子さんの死去を知り、私も落胆したひとりであり、
もとより天上の花のひとつとなった高峰秀子さんにお逢いできるひとがないので、
せめて私は高峰秀子さんが上梓された数多くの随筆を読んだり、再読したり、
或いは出演された名画を鑑賞したりして、愛惜を重ねたりしている。

このように私は高峰秀子さんに思いを馳せたりし、
何かと苦闘の多かった半生後、安息できるハワイの地で定期的に30年ぐらい過ごされ、
ハワイのある一角に永眠された高峰秀子さんに、ご冥福を祈ったりしている。

このようなささやかな想いを秘めている私は、今回の『生誕100年 大特別展』、
拝見するか、やめるか、溜息を重ねている・・。

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漬物は「常温で長期保存」できるのに、なぜ「浅漬けはダメ」なのか?、私は多々教示させられて・・。

2024-05-01 12:18:20 | 喜寿の頃からの思い

実は科学の視点から、現代の技術で解析を進めるにつれて、
そのさまざまな製造工程が、いかに理にかなったものであるか、次々に明らかになっている。

発酵食品を生み出した人々の英知に改めて畏敬の念を覚えつつ、
このような発酵食品について、科学的な側面から可能な限り簡明に解説していく。

今回は、発酵食品を製造するために必須な「4つの条件」について解説します。

発酵 科学 ブルーバックス

*本記事は、『日本の伝統 発酵の科学 微生物が生み出す「旨さ」の秘密』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

 
 

☆発酵食品の安全性とは?

一般の人々は、微生物の存在を意識することなく、発酵食品を生産・消費している。
納豆やヨーグルトは、微生物の働きで作られることは知識として知っていても、
実際に微生物を目にしたことのある人は、あまりいないのではないだろうか。

発酵食品は、食材を微生物の作用により、加工して製造した食品であり、
納豆、漬け物、鰹節など風味を改良した食品、または保存食として作られる。

さらに、醤油、味噌、食酢などの発酵調味料やビール、清酒などの嗜好品としての酒類も、
れっきとした発酵食品である。
海外でも、パン、ヨーグルト、チーズ、キムチ、ピクルスなど
さまざまな発酵食品が製造され賞味されている。

発酵食品は、微生物の存在が認知される以前から、
試行錯誤により伝統的な製造法が編み出され、連綿と伝えられてきたものである。

一般に、発酵食品の生産は、非常に手間暇のかかるものであり、
注意と忍耐を要求される工程が多い。


ビールやワイン、日本酒など酒類も、れっきとした発酵食品。 photo by monkeybusinessimages@iStock


人間は、食いだめも冬眠もできないので、毎日食料を確保しなければならないが、
食料は一気に大量に手に入るときもあれば、冬期などめったに手に入らない時期もある。

太古の人々は、飢えと闘うために、食料をどうやって保存したらよいか、必死に考えたことだろう。
飢えに耐えかねて、異臭を発するようになった食料に、手を出した人もいたはずだ。

必ずしも勝率の良い賭けとは言えず、食中毒を起こして、無念の死をとげた人も多かったことだろう。
初期の発酵食品は、このような命がけの試行錯誤から生まれたと思われる。

いかにして食料の腐敗を防ぐか。
腐敗は、食中毒の原因となる雑菌(腐敗菌)の繁殖であるから、
このような腐敗菌が生育しないようにすればよい。

微生物の繁殖には、栄養分と適度な〈温度〉、〈水分〉、〈塩分〉、
〈pH(酸性・塩基性の度合い)〉などの条件が必要であるから、
食料を安全に保存するためには、腐敗菌の繁殖に必要な条件のどれかを除くのが合理的である。

☆腐敗菌を防ぐ条件1:温度

スーパーの鮮魚売り場では、同じ種類の魚介でも、
生牡蠣などには「生食用」と「加熱用」の区別がある。

刺身として食べるには少々不安でも、火を通せば大丈夫。
加熱すれば、微生物は死滅するので、腸内で病原菌が繁殖する心配はなくなる。

火を発見した古代の人々は、少々傷んだ獲物の肉でも、焼けば食べられることを覚えたのだろう。

一方、温度を低く保てば、腐敗を遅らせることができる。
冷蔵庫や冷凍庫は、腐敗菌の繁殖に必要な温度よりも、低温に保つためにある。

文明の利器が利用できなかった時代でも、
食料を氷室(ひむろ)や穴蔵に貯蔵して長持ちさせていた。


金沢・湯涌温泉に復元された氷室。 photo by dssama@Getty Images
 
 

☆腐敗菌を防ぐ条件2:水分

食料の保存法として、最初に編み出された方法は、乾燥だろう。

古代人は、たくさん獲れた魚を天日に干して乾燥させ、
狩りで倒した獲物の肉を燻(いぶ)して、水分を抜くことにより、後日の食料を確保した。

ブドウのように粒の小さな果物は、乾燥して保存できる。
水分含量の少ない穀類は、そのまま保存食品として重宝したことだろう。

発酵食品にも、鰹節や干し納豆など、乾燥させることにより、
食品の保存性を確保しているものがいくつもある。


乾燥後、表面に鰹節カビ(アスペルギルス・グラウカス)をつけ発酵を繰り返して熟成を進める本枯節。水分は14%程度。photo by Promo_Link@Getty Images


☆腐敗菌を防ぐ条件3:塩分

海水の塩分濃度は約3.5%だが、塩分が8%程度になると、
繁殖できる微生物が限られるようになり、15%を超えるとほとんどの微生物は生育できない。
浸透圧により、細胞内の水分を吸い出されてしまうためである。

人類は、古来より腐敗しやすい魚、獣肉、野菜などの食品を、塩漬けにして保存してきた。
現代でも魚介類は塩辛、獣肉はハムやコーンビーフなどに加工して保存されている。

じつは、高濃度の塩分存在下で、生育できる好塩性細菌も存在するが、
このような微生物は、生育が遅いうえに、高濃度の塩分がないと生育できないので、
病原性を発揮することはまずない。

発酵食品にも、醤油や味噌などのように、
高い塩分濃度により、保存性を確保しているものは数多い。

 

☆腐敗菌を防ぐ条件4:pH

白菜などの野菜を放置しておくと、ドロドロに腐ってしまうが、
壺に入れて、糠(ぬか)に漬けておくと、いつの間にか酸味が出て長持ちする。
このように糖分を含む食品を通気を制限して保存すると、たいていは乳酸菌が繁殖する。

乳酸菌は、大量の乳酸を生成して、pHを低下させる、つまり酸性にすることにより、
中性付近のpHを好む雑菌を死滅させて、自分たちに都合の良い環境を作り上げる。

ほとんどの腐敗菌や病原菌は、中性からやや塩基性の環境を好むため、
乳酸菌が生育してpHが4.3程度まで下がると、健康被害をもたらす微生物はほとんど生育できない。

発酵食品の製造現場では、乳酸菌の出番が非常に多い。
漬け物やヨーグルトは、主役として働く乳酸菌がイメージしやすいが、
チーズ、清酒、味噌、醤油、赤ワインなどの製造にも、乳酸菌が重要な役割を果たしている。

このように食品のpHを低下させることにより、
雑菌の繁殖を抑え食品の保存性をよくすることが発酵食品の第一の意義である。


pHは0〜14のうち7が中性、それより小さい値になるほど酸性度が強まる。
穀物酢はpH2.6程度。


野菜や果物には、糖分が多く含まれている。
穀物の主成分であるデンプンも、分解されると糖分になる。

デンプンや糖分は、炭素(元素記号C)と水素(H)と酸素(O)により構成され、
それぞれが1:2:1の割合で含まれている。

つまり、炭素(C)が水(H₂O)と結合した形となっているので、炭水化物とよばれる。
糖分は、微生物に分解されると、乳酸や酢酸などの有機酸を生成してpHが低下する。
甘酸っぱい匂いを放つようになり、酸味の強い味わいとなる。

一方、魚、獣肉、牛乳などには、タンパク質が多く含まれている。
タンパク質には、炭素と水素と酸素の他に窒素(N)と硫黄(S)が含まれているため、
微生物に分解されると、窒素を含むアミンやアンモニアが発生してpHが上昇する。

窒素や硫黄を含む化合物が生成するため、猛烈に臭くなるうえに、
pHが中性から塩基性に傾くため、腐敗菌や病原菌が繁殖しやすくなり、非常に危険である。
このような発酵食品では、多量の塩分を加えることにより、病原菌の生育を防ぐことが多い。

漬け物は、野菜を長期保存するために有効な手段だが、
腐敗を防ぐために大量の食塩を加えるか、十分に乳酸菌を繁殖させて、pH4程度の酸性にする。
このようにして造られる塩辛い漬け物や酸っぱい漬け物は、常温で長期保存できる。

一方、浅漬けなどは、この条件を満たさないので腐敗しやすい。
浅漬けは、漬け物なのに冷蔵保存が必要であり、早く食べなければならないことにはこのような理由がある。

※本記事は、『日本の伝統 発酵の科学』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

 
 
日本の伝統 発酵の科学 微生物が生み出す「旨さ」の秘密
発酵 科学 ブルーバックス
味噌、醤油、納豆、清酒、酢、漬物、鰹節──。
微生物を巧みに使いこなし、豊かな発酵文化を築いてきた日本。

室町時代には、すでに麹菌を造る「種麹屋」が存在し、
発酵の技術は、古来から職人技として受け継がれてきました。

多様な発酵食品の歴史をたどりながら、現代科学の視点からも理にかなった伝統の技を紹介、
和食文化を支える世界に類を見ない多彩な発酵食品、その奥深い世界へと読者を誘います。・・》

注)記事の原文に、あえて改行など多くした。



 
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