幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第八十一回
「ああ、ゴーステンの幽霊のお方ですか?」
「はい、中位相マヨネーズを渡した、死んだ私の部下です」
上山は、話を続ける都合上、素直に応答した。
「それで…」
「はい、実は私がその平林という部下の姿が見えるって云ってましたよね」
「ええ…。それで、中位相処理のマヨネーズでしたよね。効果があり過ぎたようですが…」
「そうです。それが、今は、もう見えなくなってるんですよ。声はまだ聞こえるんですが…」
「って、どういうことですか?」
「実は、この話は滑川(なめかわ)教授にもお話ししたんですが、霊界トップの意志らしいんです」
「えっ? 益々、分からないですが…」
「いやあ、私達の活動成果が認められた結果なんですが…」
「そうそう! 上山さんの話は滑川教授とも話してたんですが、すごいじゃないですか!」
「有難うございます。一応の成果というか、そんなのはあったようなんですが…。まあ、すべてが如意の筆の力なんですがね、ははは…」
上山は笑って暈(ぼか)そうとした。
「いやいや、大したもんです。まさか、世界が平穏になるなどとは思いもしてませんでしたから。それに、武器輸出禁止条約も、すごかったですよね。ノーベル平和賞ものですよ、表立てば…」
「そんな…。私らの正義の味方活動の一環ですから…」
「それが霊界に認められた、ってことですね? 興味ありますね、この話は。私も一応、霊動学の研究者ですから」
「そりゃ、そうでしょう。で、今日の話は、私が孰(いず)れ、その平林の記憶を完全に忘れるようなんです。今のところ、いつか迄は分からないそうですか…。で、佃(つくだ)教授に記憶があるうちにそのことを云っておこうと思いまして…」