幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第七十回
『そうですよねえ…』
幽霊平林は同調して腕を組んだ。上山は、おやっ? と、幽霊平林の、いつもは、しない態度を不思議がった。上山が腕組みして幽霊平林が追随するパターンが、今までのケースだったのだが、どういう訳か、今日は幽霊平林が妙に自主的なのだ。要は、自分の意志で腕組みした、と上山には感じられたのだ。
「君、今、腕組みしたよな」
『えっ? ええ…。それがなにか?』
「いつもは私より先に、そんなこと、しないぜ」
『あっ! そうですよね。僕、どうしたんだろ?』
幽霊平林は自分の姿を見て、そう云った。
「姿の方は、もう見えてるのかい? この前、半分方、見えるようになったって云ってたが…」
『わあ! 元に戻りました。足先まで全部、見えます。…むろん、僕に足は、ありませんが…』
「ははは…、妙なところで笑わせるなよ」
『いや、そんなつもりはなかったんですが…』
幽霊平林が今度は右手で首筋をボリボリと掻いた。
「君さあ~、今の態度といい、ほんとに人間的になったぜ。これって、怪(おか)しかないか?」
『まあねえ…。僕には、よく分からないんですが…』
「これも霊界トップが、やってることなら、何ぞあるのかも知れないぜ」
『そう驚かさないで下さいよ、課長』
「別に驚かしてる訳じゃないんだが…」
上山にも、この微妙な幽霊平林の変化の訳は分からない。
『今回の世界を変化させている地球語効果のポイントが入ったんでしょうか?』
「んっ? ああ、それもアリだな」
上山も、そう思えて、幽霊平林に同調して頷(うなず)いた。