幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第五十八回
「ええ、まあそうですが…」
幽霊平林は、上山の周到さに恐れ入った。
「なにか具合が悪いか?」
『いえ、そんなことはないですよ。結果と反省は大事なことです。それに場合によっちゃ、課長の命にもかかわりますからね』
「そこなんだよ、君。どうして私だけがそんな苦を受けにゃならんのだ。理不尽だよ。私が何か悪いことでもしたというのかい?」
『そ、そんなことは、ないですよ。しかし、それについては、随分前に結論が出ていたじゃないですか。課長は何らかの異常体質で、霊界と人間界の狭間(はざま)へ迷い込んだんだと…』
「ああ、それはそうなんだが…。ただ、どうして私だけがそんな体質なんだ? えっ、君?!」
『そんなこと、僕に訊(き)かれたって…。霊界司様なら、その辺りのところは、よくご存知なんでしょうけど…』
「そうそう、それを訊いておいてくれ。どうも、モヤモヤが晴れんからな。…そんなこたぁ~今、どうだっていいんだよ。また話が逸(そ)れるところだった。それ゛しゃ、世界語の念を纏(まと)めよう」
『世界の国々の言語学者に、そう思わせるのが①ですね。で、立ち上げさせるのが②です』
「だな…。国連のユネスコが舞台になるだろう」
『③として、特別部会を作る気にさせると…』
『ですね。あとは、彼等がなんとかするでしょう。武器輸出禁止条約のように』
「よし! それでいいだろう」
上山はボールペンを小ノートへ走らせながら、少し元気づいて云った。
『じゃあ、そういうことで…』
「この効果は、いつ頃、現れるかなあ?」
『前のようにいけば、効果としては数日中にマスコミが騒ぎたてる事態になりますが…、具体的な成果となりますと…』
「しばらく、かかりそうか?」