妙だな…と、蓼科(たてしな)は思った。いつも使っているパソコンの調子が怪(おか)しく、立ち上がらないのだ。いつぞや、同じような症状で数万ほども出費した苦(にが)い経験があったから、蓼科は氷柱(ひょうちゅう)になった。まあ、ここは一つ、コーヒーでも啜(すす)り、考えようか…と蓼科は焦(あせ)らないことにした。これも前回の苦い経験から得た教訓で、前回は焦って弄(いじ)くり回した挙句(あげく)、パソコンの状態をより悪くしてしまったのだ。その後の結果は明白で、店への修理依頼となった訳である。そんなことで、今回はコーヒーを啜ったのだが、しばらくしてパソコンの電源をふたたび入れると、妙なものでスンナリと立ち上がった。故障でもない…とすれば、原因は何なんだ? 謎(なぞ)は謎を呼ぶことになった。故障ではないから原因は不明で、同じような症状が出たときの対応が出来ないことになる。故障でもない・・は困るっ! と蓼科は一人、怒れる相手もなく憤激したまま夕方を迎えた。
「ああ、それ…。いろいろ電波が飛び交ってるからな…」
帰ってきた息子のひと言である。
「…」
蓼科は返す言葉を持たなかった。
完