水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (65)ノルマ

2019年05月14日 00時00分00秒 | #小説

 ノルマ・・この言葉も、もはや日常、よく使われる日本語となっている。ロシア語で、意味は労働基準量を指(さ)すらしい。体力的に限界が近いにもかかわらず、それでも働かなければならないのが私達、人の世なのである。ノルマを熟(こな)して働かないと、「あんた! もう来なくていいよっ!」などと言われて仕事を失うことになる。それこそ、ぅぅぅ…と泣けるような演歌の世界になる訳だ。^^
 すでに夜の九時近くになった、とある会社ビルである。
「もう、いいんじゃないですかっ! 先輩!!」
「君は先に帰っていいぞっ! あとは俺がやっとくからっ!」
「だって、この残業、もう三日続きですよっ!」
「ああ、分かってる。今日までにしとくから、ははは…そう言うなっ!」
「そうですか? それじゃ、お先に…。早く帰ってくださいよっ!」
 後輩が帰ったあと、先輩サラリーマンは仕事を終え、あの世に旅立った。…などとなればド偉い話になるが、幸い、次の日が休みの二人は、疲れを溜(た)めながら、それでも飲めや歌えのドンチャン騒ぎを行きつけの店でしていた・・と、まあ、話はこうなる。
 疲れていながら、それでもノルマが果たされると、達成感が湧(わ)く・・という利点[メリット]もある訳だ。めでたし、めでたし…。^^
 
                                  


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