勝ち馬に乗る・・という例(たと)えがある。勝った人に付き従った方が利がある・・という単純な判断で人が勝者に靡(なび)くことを指す。冷静に考えてみれば、おおよそ人は勝ち馬に乗りやすく、負け馬は蹴飛(けと)ばすくらいで見向きもしないものだ。^^ 良し悪し・・ということではないが、残念ながらそれが人の本性(ほんしょう)のようである。負けた側や人にそれでも付き従う人は心からその人を信奉(しんぽう)する人で、いわば精鋭である。単純に靡く人は烏合(うごう)の衆(しゅう)と呼ばれ、まったく当てにはならない。
とある競馬場で出走前のパドック[競争馬が一般観衆に、どうよっ! とばかりに歩く姿を見せるための場所]で、競走馬がパカポコ…と歩き回っている。その姿を大勢の観客が見守る。
「あのハゲワシホープ、なかなか調子がよさそうですなっ!」
「いやいや、私ゃ二頭後ろのコンドルスカイと見てるんですがねっ!」
「いやいやいや、そうじゃないでしょ! 尻尾(しっぽ)の振り具合からしてその後ろのインカっ! これで決まりですっ!」
ダメを出された二人は、尻尾の振り具合で見るんかいっ! とは思ったが、思うに留め、愛想笑いで流した。
しばらくして重賞レース、チチカカ特別が恒例のファンファーレとともに幕を開け、尻尾の振り具合が良かったインカの完全制覇で終結した。
「ははは…実は私もそうなんじゃないか…と思っとったんですよっ!」
「そうそう! 私もですっ!」
二人は絶対、来ないっ! とは思っていたが、それでも1枚だけインカの馬券を買い、スゥ~っと、いつの間にか勝ち馬に乗っていた。
このように、勝ち馬に乗るのは、それでも…と保険をかける弱含みな心の人に多いようだ。^^
完