誰しも、その本人に生まれ持って備わった力量(りきりょう)というものがある。その力量には個人差があり、小さい人から大きい人まで千差万別(せんさばんべつ)だ。力量が小さいにもかかわらず、それでもやろうとすれば、出来ないのだから当然、失敗したりダメにしてしまう訳だ。^^
ここは、とある会社の社長室である。室内には創業者である初代社長から先代社長に至る十数人の顔写真入りの額(がく)が所狭(ところせま)しと飾(かざ)られている。その額を見上げながら、社長が弱々しい声でボソッと独(ひと)りごちた。
「皆さん、力量があったんだな…」
社長がそう呟(つぶや)くのも無理からぬ話で、会社は経営の危機に瀕(ひん)していたのである。そのとき、専務がドアをノックした。
「社長! 専務ですっ! 入ってよろしいか?」
その声は、額を見上げる社長にも否応(いやおう)なく聞こえた。
「ああ、どうぞ…」
社長は、自分のことを普通、専務と言うかね? …と、思いながら返した。そして、専務が社長室に入ってきた途端、ふたたび、力量を見損(みそん)じたか…と思った。さらに、専務が軽く頭を下げた途端、会社が傾くのも当然か…と、自分の経営の力量のなさを痛感した。
力量を見損じ、それでも気づかないと、組織は傾いたり危機に瀕するのである。^^
完