水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (82)変わる

2019年05月31日 00時00分00秒 | #小説

 どんなものでも変化をする。変わる訳だ。^^ 茶碗や置物など・・ちっとも変わらんじゃないかっ! とおっしゃる方もおられるだろうが、分子という目に見えないミクロの世界では絶えず変わっているのだ。ただその変わる現象が余りにも微細なため、私達の目には少しも変化していないように映るだけなのである。人だって究極のところ分子の集合体だから周囲の分子の影響を受けて劣化する。劣化しないためには変わることから保守や防備をしなければならない。ペトペト、パタパタと顔へ化粧品を塗りたくることで劣化から保守と防備をされる奥様方や女性の方々。ご苦労なことだと申さざるを得ない。^^ その保たれた美貌(びぼう)で男性陣はメロメロに骨抜きにされ、挙句(あげく)の果てには精力を吸い取られて弱るのだから困ったものだ。ただ、この変わる事態は自業自得(じごうじとく)だろう。^^
 とあるデパートの化粧品売り場である。一人の奥様風の女性が化粧品を買おうとしている。
「こちらなど、いかがでございましょう。お綺麗になられますわよ」
 化粧品売り場の女店員は、『なにつけたってムダよっ!』と心で思いながら、それでも真逆(まぎゃく)の言葉を吐(は)いた。
「あら、そおう? 変わるかしらっ!?」
「ええっ! お変わりになりますよっ!」
 全然、変わらないわよっ! …と思いながら、それでも、また真逆の言葉を女店員は吐いた。
 このように、思っていることすら口に出すと変わるのだから、それでも…と意固地にならない方がいいようだ。^^

                                  


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする