水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (66)夢物語

2019年05月15日 00時00分00秒 | #小説

 人々は夢物語に憧(あこが)れる。「ははは…そうなりゃいいがなっ! 夢物語さっ!」などと現実にはほとんど不可能だと諦(あきら)める。それでも心の奥底では、『いや! なるかも知れんっ!』と、一抹(いちまつ)の期待を捨てきれないでいる。それが人なのである。芸能界の美人タレントや女優を見て、『ホニャララか…あんなのと結婚出来たらいいがな…』と夢物語なのを分かってはいてもファンクラブに入会したりする可愛いお馬鹿が私達、人だ。^^
 とある採掘(さいくつ)現場である。私財を投げ売ってお宝を探す男が叫ぶ。
「必ず、ありますっ! もう一時間お願いしますっ!」
「分かりましたっ!」
 ショベルカーに乗った男が、『いや、ないだろ…』と思いつつも、そう返す。
「今回の可能性は絶対ですっ!!」
 男の横に立つ現場監督が『懲(こ)りない人だっ! ある訳(わき)ゃないだろっ!』と思いつつも、お得意様・・ということもあり、そう述(の)べる。
「そうかい、監督っ!?」
「ええ、出ますともっ!!」
 現場監督は被(かぶ)ったヘルメットの頭をツルツルと片手で撫(な)でながら、『夢物語さっ!』と思いつつ、慰(なぐさ)めの言葉を吐(は)く。
「ああ! 出るさ…出る出る。きっと出るっ!」
 男は夢物語だな…と半(なか)ば諦(あきら)めながらも、自分を鼓舞(こぶ)するかのように喚(わめ)く。
 このように夢物語は、それでも! と人を陶酔(とうすい)させる憧(あこが)れの魔力を秘めているのだ。^^

 
                                  


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