水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (58)スケジュール

2019年05月07日 00時00分00秒 | #小説

 物事をする場合、すぐやるタイプと、算段して…と、スケジュールを立てて行動するタイプの二通りに分かれる。すぐやるタイプは、そのまま放っておけない人によく見られるが、放っておけない性格が災(わざわ)いして、出来ないとそれでも続ける・・という状況に至(いた)ってしまう。出来ないものは出来ないのだから一端(いったん)やめて、スケジュールを組んだ後日、やればいい訳だが、それが出来ないのだ。こんな点から見ると、スケジュールは食物をよく咀嚼(そしゃく)[嚙(か)み砕(くだ)く]作業に似ていなくもない。よく噛めば、消化にも良く、栄養がスムースに体内へ吸収される。スケジュールを立てた後の実行は、よく嚙み砕くことと同じなのだ。^^
 とある原っぱで二チームに分かれて草サッカーが行われている。草野球があるのだから、当然、草サッカーもある訳だ。^^ 正式なサッカー大会に向けた練習試合ということもあり、草サッカーながら本格的に熱が入っている。監督、コーチはスケジュールどおりチームの強化を計ってきたが、今日の試合がその集大成である。
「監督、どうなんですかね?」
「? なにが?」
「これで勝てますかね?」
「そらまあ、スケジュールどおり強化してきたんだから勝てるさ、ははは…」
 自信なさげに監督がコーチに返す。
「なら、いいんですが…」
「スケジュールどおりなら祝勝会だな」
「はあ、まあ。スケジュールどおり勝てばっ! の話ですが…」
「負けた場合はっ?」
「負けた場合は負けた場合で、お疲れ会のスケジュールとなっております」
「勝ち負けはスケジュールどおりにはならんが、それでも勝ってもらいたいものだな、コーチ」
「はあ、それはもう…」
 二人は試合の様子を見ながら、自分に言い聞かせるように頷(うなず訳だ)いた。
 このように、スケジュールは安心面から言えば、それでも! と、立てておくに越したことはない訳だ。^^

                                  


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