水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

それでもユーモア短編集 (73)面白(おもしろ)い

2019年05月22日 00時00分00秒 | #小説

 笑えることを、人は面白(おもしろ)いと表現する。なぜ面(おも)が白いと面白いのか? は知らないが、とにかくそう言う。逆に面黒いと言わないのも不思議で、面白くない場合は、面黒(おもくろ)いっ! と言ってもよさそうに思える。^^ 面白いことを言おう! とか、面白い劇や映画を観せよう! とスタッフや出演者が意気込めば意気込むほど面黒いのは皮肉(ひにく)な話だ。^^ 観客はそれでも笑わねばならないから、「ははは…」と上辺(うわべ)で小さく笑わされることになる。まあ、そんなに面白くないなら観なければいい訳だが、それでも観るのは惰性(だせい)としか言いようがない。^^
 とある公園で洗い場にある水道の蛇口を弄(いじ)っている男がいる。妙なもので三つ並ぶ蛇口の真ん中だけ水が出ないのが不思議なのか、男は小一時間も腕組みをして考えては蛇口を捻(ひね)り、捻っては腕組みをして考える動作を繰り返している。手を洗うだけならあとの二つのどちらかで洗って済ませればいい訳だが、男は何を考えているのか、その動作を続けている。その男の動作が面白いのか、いつの間にか、その洗い場を通行人が取り囲むようになり、大きな人の輪が出来つつあった。
「何かあったんですか?」
 人の輪の後ろを通りかかった男が立ち止まり、最後尾で見物し始めた男に訊(たず)ねた。
「いや、私も知らないんですがね。なにやら面白い見世物だそうですよ」
「そうなんですか…」
 人の輪から自然と笑い声が広がり、次第に大きくなっていった。
 このように、面白いことは自然に発生する妙にあり、それでも! と無理に作り出すものではない・・ということだろう。^^

                                  


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