「それはそうとして、この話、五十話以降も続くんだろうか? 君、どう思う?」
「そんなこと、書かれてる筆者にしか分かりませんよ。訊(たず)ねてみりゃいかがです?」
二人は[49]話を執筆中の筆者に窺(うかが)うように、ピントの合わない辺(あた)りの空間を見回した。
「訊(き)いても、詮無(せんな)いことだが…」
「筆者にも続くかどうか分からないんじゃないですか?」
「ははは…まさしくこの話、成るように成る・・だな」
このとき海老尾は、ふと、夢に出てくるレンちゃんを思い浮かべた。そして、レンちゃんに訊いてみよう…と思った。
「冗談はこれくらいにして、第三相が承認されれば、モレアは製薬会社ですぐ製造が開始されるんでしょうか?」
「そこまでは分からん。私はただの研究者だからな。君だってそうだろ?」
「ええ、まあ…」
「総務部長の波崎君なら、その辺の事情は詳しいんじゃないか?」
「波崎さんですか…。研究所予算が増額されず、すっかり落ち込んでおられましたからねぇ~」
「そんなに?」
「ええ、かなり…。この前、食堂でバッタリ会ったんですが、カレーライスのスプーンを反対に持って食べておられましたから…」
「ははは…。カレーライスのスプーンを反対に? そりゃ、食べにくいだろっ!?」
「途中で気づかれたのか、すぐ持ち変えられましたけどね…」
「かなり参ってるんだな…」
「と、思います」
「よしっ! 今度で会ったとき、モレアの進捗状況もかねてそれとなく慰めておこう」
「ええ、是非そうして下さい。増額にならなかったのは、なにも波崎さんの所為(せい)じゃありませんからね」
「ああ。今年度より減額された訳じゃないんだから」
「ええ…」
ワクチン研究にかかわる研究所予算が減額されなかっただけでも、よしとしなければならない…と、二人は思うでなく思った。
続
※ 筆者の私にも分かりません。^^