水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFユーモア医学小説 ウイルス [56]

2023年03月09日 00時00分00秒 | #小説

「神仏じゃなく、僕はただの人だからな…」
『そのお話はいいとして、問題は悪いヤツに付かず離れず、相手の弱点を見つけられるかどうかなんです』
「ひと芝居、打つということだね?」
『ええ。上手(うま)くいくかどうかは別として、とにかくやってみましょう』
「ああ、なんとか宜しく頼むよ」
『分かりました。僕が夢に現れなくなったら、失敗したとお思い下さい』
「縁起でもない…」
『いえ、そういう場合も当然ありますから…』
「うん、分かった…。線香の一本も供(そな)えるよ」
『線香を供えてもらうお墓がありません。完全に消滅してしまう訳ですから…』
「いやだなぁ、冗談だよ、冗談っ!」
『僕はウイルスですから、冗談は分かりません』
「そういうものなんだ…」
『はい、僕はそういう存在なんです』
「で、どれくらい、かかりそうだい?」
『そうですね…。まず、ひと月ふた月は最低でもかかるとお思い下さい』
「ミッションインポッシブルだね…」
「なんですか? そのミッションインポッシブルってのは?」
「まあ、いいじゃないか。相当、難しい・・ってことだよ」
『確かに…』
 そこで夢は途絶え、海老尾はハッ! と目覚めた。置時計が深夜の三時過ぎを指していた。

                   続


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