「神仏じゃなく、僕はただの人だからな…」
『そのお話はいいとして、問題は悪いヤツに付かず離れず、相手の弱点を見つけられるかどうかなんです』
「ひと芝居、打つということだね?」
『ええ。上手(うま)くいくかどうかは別として、とにかくやってみましょう』
「ああ、なんとか宜しく頼むよ」
『分かりました。僕が夢に現れなくなったら、失敗したとお思い下さい』
「縁起でもない…」
『いえ、そういう場合も当然ありますから…』
「うん、分かった…。線香の一本も供(そな)えるよ」
『線香を供えてもらうお墓がありません。完全に消滅してしまう訳ですから…』
「いやだなぁ、冗談だよ、冗談っ!」
『僕はウイルスですから、冗談は分かりません』
「そういうものなんだ…」
『はい、僕はそういう存在なんです』
「で、どれくらい、かかりそうだい?」
『そうですね…。まず、ひと月ふた月は最低でもかかるとお思い下さい』
「ミッションインポッシブルだね…」
「なんですか? そのミッションインポッシブルってのは?」
「まあ、いいじゃないか。相当、難しい・・ってことだよ」
『確かに…』
そこで夢は途絶え、海老尾はハッ! と目覚めた。置時計が深夜の三時過ぎを指していた。
続