「そうか…。対策があるんなら、その辺を詳しく訊(き)きたいんだ」
『もちろん、教えますよ。教えますが、ただ、話して分かってもらえるかどうかは疑問なんですが…』
レンちゃんは海老尾を窺(うかが)った。
「馬鹿にしちゃいけない。これでも研究所では所長の片腕と、もっぱら評判の所員なんだぜ」
海老尾は自慢たらしく嘯(うそぶ)いたが、その実、ちっとも評判にならない研究所員だったのである。海老尾としては他人による評価を、年相応につけてもらいたかったということである。
『そうですか。それじゃ分かりやすいようにお教えしましょう。以前お話したと思うんですが、僕の仲間にもいろいろいて、いいのから悪いのまでいる訳です』
「ああ、そうだったね。それで?」
海老尾は催促がましく訊(たず)ねた。
『言わば、幕末の竜馬のような存在、それが僕なんです』
「幕末の竜馬? ああ、坂本竜馬か。偉く歴史的じゃないか」
『ははは…飽くまでもこれは僕自身の趣味的な嗜好(しこう)性なんです』
「歴史的嗜好性とは大きく出たね」
『というか、これは海老尾さん、あなたも同じなんじゃ?』
「ああ、まあそうだが…」
『夢の中ですから当然ですよね』
「そりゃそうだ…」
夢の何だから、当然、海老尾の意識の中の話・・という意味である。
『で、僕も竜馬のように悪いヤツに襲われる危険性がある訳です』
「僕の夢だぜ。それはないだろ?」
『いえ、あるんです。あなた自身知らない、意識の中の悪い存在を…』
レンちゃんは断言した。
続