「寝てしまったか…。そういや、腹が減ったな」
海老尾は玄関のフロアを上がり部屋へ入ると、冷蔵庫をガサゴソと物色し始めた。
『鍋焼きうどんが残っていたか…。もう春だから、食べておこう』
そう思いながらインスタント的なレトルトうどんをIH台で調理し始めた。IHだから調理は瞬く間に出来る。液体出汁の過熱速度が早いからだ。
海老尾は出来上がった熱めの鍋焼きうどんを美味(うま)そうにフゥ~フゥ~しながら食べ始めた。口が熱くなれば冷えた缶ビールを流し込む。約15分で間食した。すると、また睡魔が海老尾を襲ってきた。三日三晩の徹夜は、身体へのダメージを、かなり与えているようだった。
『海老尾さん、海老尾さんっ!!』
すでに海老尾は夢を見ていた。場所はキッチンで、食べた鍋焼きうどんの器(うつわ)と箸(はし)があり、海老尾が食事を終えたそのときの状況だった。ただし、それは夢の中の話である。現れたレンちゃんが必死に海老尾の耳元で囁(ささや)いている。
「んっ!? ああ、眠ってしまったか…。レンちゃんがいるということは、これは夢の中だな…」
『そうですっ! 夢の中です』
「どこまで話したんだったか…? そうそう! 次に会うときは状況が好転しているはずです・・とかなんとか言ってたよね」
『つい今しがたですよっ! そんなにはやく好転する訳がないじゃないですか、ははは…』
レンちゃんは回転しながら声をあげて笑った。
「君も笑うんだな…」
『そりゃ僕だって面白けりゃ笑いますよっ!』
「いやいや、茶化すつもりはなかったんだ、悪い悪いっ!」
『しや、そんなことはどうでもいいんですよ。つい今し方、一ついい情報が入りましてね。極悪ウイルスのアジトが判明したんですよ』
「アジト? アジトというと、潜伏先の場所のアジトかいっ!」
『ええ、そのアジトです。あとはヤツらの弱点が分かれば…』
「老ウイルスさんの手配のお蔭か…。なんとか早く頼むよっ! 僕と所長で犠牲者を食い止める最低ラインの製剤がなんとか完成しただけだから…」
『はいっ! 出来る限り、やってみます…』
レンちゃんがやる訳ではない。老ウイルスがやる訳でもない。老ウイルスが手配させる配下のウイルス達がやる訳である。^^
続