昨年の5月連休に家族で信州の安曇野を訪れた。
初めて熱気球に乗って、地上から100m近くまで上昇して、安曇野の地を眺めることができた。
人生最初で最後の経験も良いものだと思ったものです。
その安曇野で一番の観光スポットは「大王わさび農園」でしたので、そこを訪ねることにしました。「大王わさび農園」は、北アルプスからの湧き水を利用した、安曇野わさび田湧水群の日本最大規模のわさび園です。およそ年間120万人もの観光客が訪れる安曇野随一の観光スポットとなっています。
安曇野がある松本盆地の地下には、日本有数の規模、そして良質な地下水を有する地下水盆があるとされています。 なかでも中央部に位置する安曇野市域の、犀川、高瀬川、穂高川合流付近では、古くから豊かな地下水・湧水を利用したわさび栽培や養魚場等の産業が営まれ、また、北アルプスの雄大な山並みと清らかな水の流れが織りなす風景を求め、多くの観光客が訪れているのです。
この湧水は、北アルプスの雪解け水が地下水となって安曇野に湧きだしたもので、およそ15年の歳月をかけて運ばれてくることが水質を分析してわかっています。
「大王わさび農場」は、この北アルプスからの湧き水を利用しており、湧き水は日量で12万トン(23万人が1日に使用する量)と言われており、東京ドーム11個分のわさび畑から年間130トンのわさびを収穫しています。
日本の代表的な香辛料「わさび」は、長野県と静岡県が名産で、日本のわさびの2大産地として、全国9割以上のわさびを生産しています。
わさびの葉は葵(あおい)に似ているため、「山葵」と書きます。捨てる部分がなく、葉から白根の先まで利用できるとのことです。
わさびは植え付けから収穫まで、おおよそ2年の歳月がかかります。そのため、「大王わさび農場」では植え付けの周期をずらし1年を通じて収穫が出来るよう、わさびの植え付けを行っているとのことでした。
わさびには優れた抗菌性があり、昔からその毒消し作用はよく知られており、将軍や貴人の食卓に欠かせない食材でした。現代では、食中毒の原因菌として恐れられるO-157などに対しての優れた抗菌性が立証され、天然素材の食品添加物として新たな用途に利用されています。また脳血栓や心筋梗塞を防ぐ作用や、制ガン作用など医学的効能も見逃せないと言われているのです。
今、海外で人気がある日本の加工品のなかで、ワサビは醤油、味噌につづく人気商品です。海外でも練りワサビはよく使われており、名前は、そのままwasabiと発音されています。
草を総称してハーブと呼びますが、わさびはオリエンタルハーブの代表と言っても過言ではありません。原産国は日本。学名は『wasabi a japonica』鼻腔にツーンとくるあの刺激は他のハーブには見られないわさび特有の物です。
日本の主要な産地は静岡県、長野県、東京都(奥多摩)、島根県、山梨県、岩手県、奈良県等ですが、なかでも、匹見ワサビ(島根県益田市)、安曇野ワサビ(長野県安曇野市)、有東木ワサビ(静岡市)は日本三大ワサビと呼ばれています。
わさびは水質や水温に厳しいデリケートな植物です。
わさびを育てる条件として、水温が16度以上になると水中に溶けている酸素量が欠乏し育成障害を起こし、20℃ 3時間以上で根の腐敗が始まるとされています。
安曇野の湧水は、真夏で外気温が最高31℃のときでも、水温は14.5℃と生育条件である16℃以下をクリアーしているのです。真冬で最低気温が-10℃のときでも、水温は13℃とあまり変わりません。また、わさびはにごりを嫌います。にごりの主成分である粘土分が根に広がりわさびの根が酸素不足によって障害を起こすためです。
湧き水は清水でアルプスの雪が溶けて流れる時、腐葉土(落ち葉が朽ち、蓄積したもの)の中を通過してN・P・Kなどの天然の養分を含んでいるのです。
蛇足ですが、
缶入りの粉わさびやチューブ入りあるいはパック入り(主に刺身用)の練りわさびが市販され、一般家庭ではこちらが広く使われています。原料にはセイヨウワサビが使用されていることが多いのですが、本わさびの入ったものもあります。 根茎は高価なため、それ以外の根や茎の部分が使用されています。日本加工わさび協会の基準においては原料わさびのうち本わさびの使用量が50%未満の場合は「本わさび入り」、50%以上の場合は「本わさび使用」を表記してよいとしています。
さて、日本の特有の、日本原産の香辛料として、わさびは和食人気の上昇とともに、海外でも広く認知されてきました。 しかし、近年北アルプスの雪を分析した結果、中国からの大気汚染の影響が出始めているという報告が出されています。この雪解け水が安曇野の湧水として出現する15年後も素晴らしいわさびが育つことを強く願っています。
---owari---
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