最初は武田製薬の社員が今後、路頭に迷うことがあるかないか、それに
武田製薬の約7兆円という今までのM&Aとは桁違いの投資の意味するものを
少しでも考えみたいというで書き始めました。
※
(1)武田製薬 シャイアー 2018年 6兆8000億円
(2)ソフトバンク アーム 2016年 3兆3324億円
(3)JT キャラハー 2006年 2兆2530億円
(4)ソフトバンク ボーダフォン 2006年 1兆9172億円
はっきり言って「群盲ゾウをなでる」という状況で、問題点や疑問点を
アナリストも整理している段階で成否の判断を出せる状況にはないと思いま
す。
そこで、今、基本的なデータを収集、蓄積しています。
その過程で見えてきたものは、次のようなことです。
① 武田製薬に限らず日本の製薬会社は、このままでは世界的なプレイヤー
には絶対になれないということ。
2016年医薬品売上高ランキング百万ドル
16順15順メーカー名国2016年前期比R&D費2015年
1 1 ファイザー米48,259 8.3% 7,872 44,547
2 2 ノバルティススイス42,706 -1.6% 8,523 43,415
3 3 ロシュスイス41,626 4.0% 10,299 41,071
4 5 メルク米35,151 1.1% 7,194 34,782
5 4 サノフィ仏34,692 0.0% 5,718 34,804
6 7 ジョンソン&ジョンソン米33,464 6.5% 6,967 31,430
7 6 ギリアド・サイエンシズ米30,390 -6.9% 5,098 32,639
8 8 グラクソ・スミスクライン英28,629 16.2% 3,852 27,754
9 10 アッヴィ米25,638 12.2% 4,366 22,859
10 9 アストラゼネカ英23,002 -6.9% 5,890 24,708
11 11 アムジェン米22,991 6.1% 3,840 21,662
12 14 ブリストル・マイヤーズスクイブ米19,427 17.3% 4,940 16,560
13 12 テバ製薬工業イスラエル19,303 7.9% 2,111 17,884
14 16 バイエル独18,154 14.4% 3,081 15,925
15 13 イーライ・リリー米18,064 7.7% 5,244 16,778
16 15 ノボ・ノルディスクデンマーク16,611 3.6% 2,164 16,049
17 17 武田薬品工業 1703 日14,415 -4.8% 2,869 13,681
18 18 ベーリンガー・インゲルハイム独14,165 7.5% 3,441 13,227
19 20 アラガンアイルランド13,239 19.5% 2,576 11,080
20 19 アステラス製薬 1703 日12,052 -4.4% 1,912 11,391
21 21 バイオジェン米11,449 6.4% 1,973 10,764
22 28 シャイアーアイルランド11,397 78.1% 1,440 6,400
23 23 セルジーン米11,229 21.3% 4,470 9,256
24 22 マイラン オランダ11,077 17.5% 827 9,429
25 25 第一三共 1703 日8,163 -4.8% 1,969 7,742
26 24 大塚ホールディングス日6,919 -27.4% 1,551 8,612
27 30 CSL(CSLベーリング)1612 オーストラリア6,655 18.6% 614 5,611
28 27 メルクKGaA ヘルスケア独6,628 -0.6% 1,654 6,689
29 26 ヴァレアント製薬Int'l カナダ6,437 -12.2% 421 7,328
30 37 リジェネロン製薬米4,860 18.4% 2,052 4,104
31 35 エーザイ 1703 日4,696 -0.5% 1,310 4,263
32 34 UCB ベルギー4,619 7.8% 1,128 4,300
33 31 フレゼニウス・カービ独4,541 3.0% 390 4,426
34 32 サン製薬工業 1703 インド4,540 8.5% 347 4,351
35 36 中外製薬 日4,519 -1.4% 781 4,139
36 33 セルヴィエ(概数公表値) 仏4,422 2.6% 1,061 4,327
37 43 エンドー・インターナショナルアイルランド4,010 22.7% 183 3,269
38 39 メナリーニ伊3,899 6.0% 不明3,690
39 40 田辺三菱製薬 1703 日3,864 -1.7% 594 3,551
40 38 アボット・ラボラトリーズ(GE) 米3,859 3.7% 1,422 3,720
42 44 大日本住友製薬 1703 日3,381 1.9% 742 2,996
45 46 塩野義製薬 1703 日2,894 4.3% 458 2,507
48 50 協和発酵キリン日2,412 -6.0% 464 2,317
53 68 小野薬品工業 1703 日2,249 52.7% 528 1,330
100億ドル以上メーカー小計557,129 10.8% 106,668 503,010
研ファーマ・ブレーン 永江研太郎の調査による© K.Nagae/KEN Pharma Brain
② 大きいことは良い事だという法則が、この製薬業界には厳としてある
ということ。端的に言えば、現在の大型新薬の開発は中規模の製薬会社
一社では担いきれないということ。
開発研究の長期化は避けられない課題になっている。
③ 今回の武田製薬の狙いは、ほぼ正しいということ。
つまり武田製薬の商品群とシャイアー社の希少疾患との重複はないことと
巨大な米国製薬市場における武田製薬のシェアとプレゼンスは高まるという
戦略的な方向性は間違っていないということ。
武田 消化器系疾患、がん、中枢神経系疾患、ワクチン
シャイアー 希少疾患
④ 逆に問題となるのは、資金調達で武田製薬の負担が非常に重いという
こと。
買収資金 米JPモルガン・チェース、三井住友、三菱UFjの三行と
借入限度額、約3.3兆円のつなぎ融資契約
⑤ これは私見ですが、M&Aで巨大な企業がどうコミュニケーションを
とり、ベクトルを合わせられるかが大きな課題になります。
第一三共のインド企業とのM&Aで巨額の損失を発生させた重要な
原因と考えています。
今回について言えば、武田製薬がリーダーシップをどうとって
いけるかがカギになります。
⑥ 後はこのM&Aが、それぞれの株主にどう受け止められ、どのような
反応があるかです。
武田
【株主】 [単]247,632名<17.9> 万株
日本生命保険
5,076 (6.4)
日本マスター信託口
4,692 (5.9)
日本トラスティ信託口
3,722 (4.7)
JPモルガン・チェース・バンク380055
3,555 (4.4)
公益財団法人武田科学振興財団
1,791 (2.2)
日本トラスティ信託口5
1,390 (1.7)
ステートストリートBウエストトリーティ505234
1,355 (1.7)
バークレイズ証券
1,210 (1.5)
日本TS信託口1
1,080 (1.3)
日本TS信託口2
1,059 (1.3)
<外国>
32.2%<浮動株>
15.2%
<投信>
8.3%<特定株>
31.5%
【役員】
(社長)C.ウェバー
(取締)岩崎 真人
(取締)J.キーホー
(取締)A.プランプ
(取締)坂根 正弘*
(取締)藤森 義明*
(取締)東 恵美子*
(取締)M.オーシンガー*
(取締)志賀 俊之*
(取締監査)山中 康彦
(取締監査)国谷 史朗*
(取締監査)J.L.ブテル*
(取締監査)初川 浩司*
ざっと問題点を洗い出しただけですが、自分には勉強になりました。
もう少し分析を続けたいと思います。