「景気か経済成長か」で頭を整理しよう【手取り足取り経済講座(2)】
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11766
ありがたくも反響を頂きました、「手取り足取り経済講座」の第二回目です。
前回は、「経済ニュースが分かるようになる近道」と題してお送りしました。
( http://the-liberty.com/article.php?item_id=11729 )
少しおさらいしますと、
・バラバラにニュースや用語を学ぶより、いったん経済学の全体像を押さえる方が理解が早い。
・まずGDPを理解するのが近道。金融、為替、国債だの様々な用語は「GDPを増やす手段」として頭で整理できるから。
ということでした。
◎GDPが増える仕組みをイメージする
今回は、そのGDPの「増やし方」について、踏み込んで考えてみます。ずばり、「景気回復と経済成長って何が違うの?」。
どちらもGDPが増えることなので、区別せずに使われることが多いです。あまりこの区別を厳密に指摘しだすと、嫌な人だと思われます(笑)。
ただ、この二つの違いを見ていくと、「経済ってこうやって大きくなるんだ」というイメージがしやすくなるんです。そのイメージを元に、さまざまな知識も整理しやすくなります。
◎景気は「売れる」、経済成長は「つくれる」
ものすごく単純化して、ひと言でいいます。
・「たくさんものが売れるようになる」のが景気回復です。
・「たくさん、いいものがつくれるようになる」のが経済成長です。
企業で例えてみます。
・社長が「最近、注文が多くて、調子いいね」と言っている状態が、景気回復です。
・社長が「そろそろ工場の生産ライン増やそうか」と言ったら、経済成長です。
お堅く言うと、
・その国の「需要」の短期的変動が景気です。
・その国の「生産能力」の長期的な変化が、経済成長です。
◎景気がよくなる要因-個人の消費
では、その前者である景気は、どのようによくなるのか。これも前回学んだ、GDPを構成する要素、「個人の消費」「企業の設備投資」「政府の支出」「海外への輸出」で考えられます。
一つはおなじみ、「個人の消費」が増えた時です。
きっかけは、お給料が増えること。そして、オリンピックが開催されたりiPhoneが誕生したりして、買いたいものが増えること。それに、消費税などの税金が減ること。人々の気持ちが明るく、買い物したくなること。さまざまな理由があります。
ニュースの指標としては、「『家計消費支出』が改善を見せ……」なんて言っている時は、「ちょっと景気が上向いた」と思ってください。
◎景気がよくなる要因-企業の設備投資
消費が増えると、企業も積極的になります。「景気がいい間に儲けなきゃ」。こう思って、新しい工場を建て、機械を買う。これが、「企業の設備投資」でしたね。
これで、企業向けに商売している企業が儲かります。一回の買い物で、数百から数億円単位が動くので、景気に与える影響の大きさは馬鹿になりません。
ここで一つ注意点。
この「設備投資」は、もちろん景気をよくしますが、同時に「経済成長」にもつながります。先ほどの社長の例で言えば、「工場の生産ラインを増やそうか」と言ったとき、第一段階として、工場の生産ラインをつくるメーカーが儲かります。これは景気を良くします。
そして第二段階として、その会社の生産能力が上がる。つまり、同じ人数の作業員に対して、2倍の量の製品を作れるようになるかもしれません。これは、経済成長につながります。
この「設備投資」には、2重の効果があることを、頭の片隅に置いてください。
ちなみに、企業が設備投資をするためにお金を貸すのが銀行、つまり「金融」の仕事です。「金融」も、景気や経済成長にとって大事なんです。
◎景気がよくなる要因-財政出動・輸入
景気を良くするために、政府がガバッと仕事を発注することもあります。これが「財政出動」です。
「輸出」の増加がきっかけになることもあります。悪い例だと、朝鮮戦争による「朝鮮特需」なんかも。
◎景気は波を打つ
お気づきかもしれませんが、消費・投資・財政出動・輸入は、お互いに影響を与え合います。
消費が増えれば、企業は設備投資を増やします。設備投資が増えて、ある企業が儲かれば、そこの給料が増えます。するとまた、消費が増えます。「好循環」が起きるのです。
一方、消費が減ったときは、企業は設備投資もしないので、「悪循環」が起きます。
つまり、いい時はとことんよくなり、悪い時はとことん悪くなるのが景気。だから、GDPの動きを見ると、波のように上がったり下がったりしているのです。
そうは言っても長い目で見れば、技術力が増すなどして、経済全体の生産力は上がっていきます。だからGDPも、波を打ちながらも、全体のトレンドとして少しずつ上がっている。これが「経済成長」です。
次回は、「経済成長の仕組み」について踏み込んでいきます。
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2016年7月31日付本欄 経済ニュースが分かるようになる近道とは?【手取り足取り経済講座】
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11729