http://the-liberty.com/article.php?item_id=12077 幸福の科学出版
アメリカ大統領選挙の報道を見ると、主流メディアのワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙などは、どこも、「民主党のクリントン氏の支持」を表明しています。
一方、トランプ氏については、女性蔑視発言を連日取り上げ、「人格的に問題がある」などとネガティブに報じています。
また世論調査でも、「クリントン優勢」という報道が目立ってきており、「マスコミが選挙結果を決めている」ような状況になりつつあります。
トランプ氏は「クリントン氏とニューヨーク・タイムズなどのメディアは結託して悪意ある攻撃をしている」(13日フロリダの集会での発言)と不満をぶちまけています。
トランプ氏の躍進など、異例続きの今回の大統領選からは、アメリカの主流メディアの問題点が見えてきます。
◎有権者の多くは「主流メディアの偏向」を知っている
アメリカの主流メディアは、どれぐらいクリントン氏寄りなのでしょうか。
ある日のワシントン・ポスト紙の社説では、「クリントン氏は根気があり、困難にめげず、決然とし、しかも賢明だ」と支持を表明しています。
一方、トランプ氏については「偏見に満ち、無知で、嘘つきで、自己中心的で、執念深く、狭量で、女性蔑視で、財政面で無頓着。民主主義を軽蔑し、米国の敵に心を奪われている」と、ネガティブな言葉を重ねて批判を展開しました(14日付産経ニュース)。
しかし、ここで疑問がわいてきます。もしこうしたアメリカの主流メディアが言っていることが事実であるならば、なぜトランプ氏が共和党の指名を勝ち取り、メディアによる連日の批判にも関わらず、約4割近い支持率をキープし続けているのでしょうか。
主流メディアはあまり報じませんが、トランプ氏が各州を演説して回ると、クリントン氏よりもはるかに多くの有権者が、トランプ氏の演説を聞くために会場に押し寄せます。これまで政治に興味を示さなかった人々も、トランプ氏の演説に吸い寄せられるように集まってきています。
保守派評論家の江崎道朗氏は、新著『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』で、次のように分析しています。
「『リベラルに牛耳られたメディアは、ポリティカル・コレクトネス(政治的公正さ)でがんじがらめになって、ちっとも本当のことを伝えない。メディアなどあてにしないで、自分で足を運んでトランプが何を言っているのか、本当のことを聞きたい』という人たちがトランプの集会に集まってきているのです」
トランプ氏を支持するアメリカの有権者の多くは、主流メディアがエスタブリッシュメント(既成勢力)に偏っていて、クリントン氏の政策は報じるのに、トランプ氏の政策は一番過激なところしか報じていないため、信用できないと感じているのではないでしょうか。
◎行き過ぎたポリティカル・コレクトネス
今年のアメリカ大統領選において、アメリカ人が口癖のように使うようになった言葉が、江崎氏の分析にもあった「ポリティカル・コレクトネス」。
これは、差別や偏見に基づいた表現を「政治的に公正」なものに是正すべきという考え方のことで、主に人種や性別、性的嗜好、身体障害に関わる表現から差別をなくすことを言います。
しかし、このポリティカル・コレクトネスが行き過ぎて、これまでアメリカ人が大切にしてきた価値観が脅かされる事態が起きています。
もっとも分かりやすい事例は、アメリカ国民の多数派を占めるキリスト教徒が、学校や職場などの公共の場で「メリークリスマス!」と言えなくなりつつあること。
また、難関大学などの選考で、黒人やヒスパニック系が優遇されるなど、白人から見ると「逆差別的」に感じられることも起きています。
社会全体が、「政治的に公正」であることを意識しすぎて、言いたいことを言えない緊張感があります。自由を何よりも大事にするアメリカで、言論や表現の自由が奪われつつあるのです。
こうした中で登場したトランプ氏は、「政治的に公正」かどうかなどお構いなしに、国民が心のどこかで感じている移民が増えることへの不安や、エスタブリッシュメントへの不満を正直に発言するので、多くの国民の本心を代弁してくれる存在になっています。
昨年10月にフェアレイ・ディキンソン大学が世論調査を実施したところ、「アメリカが抱える大きな問題は、ポリティカル・コレクトネスだ」という考えを「支持する」と答えた国民はなんと68%。「トランプ氏の『アメリカが抱える大きな問題は、ポリティカル・コレクトネスだ』という発言を支持するか」と聞くと、53%が支持していました。
「人種差別主義者」というレッテルを貼られたくないので、表向きは「トランプ支持」とは言えないけれど、本心ではトランプ氏に賭けたら何かが変わるのではないか、と期待を寄せている人も多いというのが実情のようです。だから大統領選挙の結果は、蓋を開けるまで分からないのです。
◎アメリカと日本のマスコミに求めたい「公正さ」
クリントン氏が代表するエスタブリッシュメント寄りのアメリカ主流メディアと、それをそのまま紹介する日本のマスコミ報道を見ているだけでは、アメリカの政治の実情も、トランプ氏の人物像も、正確には理解できません。
アメリカの主流メディアは、トランプ氏が大統領まであと一歩のところまで来ている以上、印象操作のために一部を切り取ったトランプ氏の発言だけを紹介するのではなく、より公正な報道を心がけるべきです。そして日本のマスコミも、アメリカのマスコミの受け売りではなく、アメリカの真の姿を報じる努力をする必要があります。
今のアメリカの真の姿を知るためには、「メディアが偏向している」「不正選挙が行われている」と警鐘を鳴らす、トランプ氏の発言に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。(小林真由美)
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