http://the-liberty.com/article.php?item_id=12123 幸福の科学出版
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が25日〜27日に大統領就任後、初めて来日します。
ドゥテルテ氏と言えば、麻薬・犯罪撲滅を公約し、大統領就任後は人権・法律無視の過激な手段で取り締まりを強行しました。結果的に、大統領就任後100日間で、約4000人もの麻薬犯罪容疑者が、取り調べや裁判といった手続きを経ずに殺害されています。
日本人の感覚からすると、ヒトラーのような危険人物にも見えるドゥテルテ氏ですが、フィリピン国内では、恐れられながらも高い支持を集めています。
ドゥテルテ氏来日前にフィリピン事情をおさらいし、日本にはどのような外交姿勢が求められるかを考えてみましょう。
◎法律・人権無視に過激発言 それでも支持率は91%
ドゥテルテ氏は、その過激発言から、「フィリピンのトランプ」と呼ばれています。特に、麻薬犯罪者の大量殺害を「人権侵害だ」と批判するアメリカへの敵対的な発言は、日々エスカレート。
オバマ米大統領について「地獄に落ちろ」「売春婦の息子」などの暴言を連発しています。こうした感情的な暴言は、アメリカとフィリピンの70年間の同盟関係を無視したものであり、外交音痴と批判されています。
しかし、フィリピンで行われた最新の世論調査では、ドゥテルテ氏の支持率は91%。この数字からは、これまでフィリピン国民がいかに犯罪や麻薬に苦しめられてきたかが分かります。
ドゥテルテ氏が大統領になる前に市長を務めていたダバオ市では、市民が「ドゥテルテ氏は街に平和と秩序をもたらした。麻薬との闘いも全面的に支持する」と評価していると報じられています(24日付東京新聞)。
ドゥテルテ氏の手段は過激ですが、同氏の就任後に自首した麻薬関係者は73万6247人。多くのフィリピン国民には「ドゥテルテ大統領になってから、劇的に治安が改善された」という実感があり、「実行力があるヒーロー」と評価されているようです。
◎「中国が頼りだ」経済援助で見事に懐柔された?
ドゥテルテ氏は10月20日、中国・北京市で開かれたビジネスフォーラムで演説し、「軍事的にも経済的にもアメリカと決別する」「今後長い間、中国が頼りだ」と、中国重視の姿勢を明確に打ち出しました。ドゥテルテ氏は以前にも、「祖父が中国人だから中国と戦争しない」と述べ、中国との対話や南シナ海での共同資源探査の可能性を示唆していました。本格的に、アメリカに依存した外交政策を転換し、中国との関係を強化していくとみられます。
北京でのフォーラムでは、注目されていた南シナ海の領有権問題については棚上げし、中国からの経済支援や関係改善を優先させていました。中国によるフィリピンへの経済援助は、薬物中毒者の更生施設への融資に加え、鉄道や道路、港湾建設などインフラ整備など多岐に渡ります。民間の投資も含めると、その規模は総額135億ドル(約1兆4000億円)に上る見通しと言われています(21日付ハフィントンポスト)。
しかし、ドゥテルテ氏の中国におもねる外交姿勢は、フィリピン一国のみならず、地域全体の治安を脅かします。現在、フィリピンには今年最大規模といわれる台風が直撃して、被害が拡大しています。このような台風が直撃していることも、天が何かを警告しているのかもしれません。ドゥテルテ氏も、彼を支持する多くのフィリピン国民も、目先の利益に目を奪われているため、長期的な視野を持つ必要があるのではないでしょうか。
◎日本は質の高い援助や技術支援で差別化すべき
日本やアメリカは、中国との間で南シナ海の領有権問題を抱えるフィリピンを支援してきましたが、ドゥテルテ氏による中国シフトの方針転換で、今後、難しい対応を迫られています。
フィリピンと中国の接近は、日本にとっては死活問題です。日本は資源のほとんどを輸入に頼っており、日本に輸入される石油の約8割は南シナ海を通過しています。もしフィリピンが中国の軍門に下るようなことがあれば、南シナ海を中国に封鎖されかねません。
ドゥテルテ氏が中国との関係を深めている大きな理由は、「経済援助」にあると考えられます。日本は、中国よりも長期的な視野を持って、質の高い技術支援などを行うことができます。日本にしかできない経済支援を打ち出し、ドゥテルテ氏に「中国よりも日本との関係を強化することの方が、フィリピンの国益につながる」と思わせる必要があります。
ドゥテルテ氏はアメリカに対してひどく嫌悪感を抱いているため、日本は独自にフィリピンとの関係性を深め、アジアの平和を守る外交努力をすべきです。日本とフィリピンの首脳会談はどうなるのか、注目です。(小林真由美)
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