「トランプ砲」がドイツを直撃 日本よりドイツの方が心配なワケ
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《本記事のポイント》
・米通商政策のトップがドイツを批判
・移民・環境政策でも対照的な米独
・ドイツは「トランプ革命」の波に乗れるか
アメリカのトランプ大統領の一挙手一投足に、世界が注目している。日本の政府や企業の間でも、今後どう対応すべきか、という議論が目立つようになってきた。
日米関係に注目するのは大事だが、他の国はどのような状況なのか。特に、日本と同じく、自動車などが主力産業であるドイツの対応は気になるところだ。実は、日本よりも、ドイツの方が、"トランプリスク"にさらされる可能性が高い。
◎アメリカ通商政策の司令塔がドイツを批判
先月、トヨタのメキシコ工場建設計画が、トランプ氏の批判にさらされ、日本に衝撃が走った。トヨタは、今後5年で100億ドル規模の対米投資を表明することで、トランプ大統領の"矛"を収めさせようとしている。
このショックが冷めやらぬ中、「トランプ砲」が、今度はドイツに"被弾"した。
1月31日付英フィナンシャル・タイムズ紙によると、トランプ政権の通商政策の司令塔である国家通商会議(NTC)のピーター・ナヴァロ委員長が、ドイツの通貨政策を批判した。
ナヴァロ氏は、「暗黙のドイツ・マルク安が貿易交渉の障害になっている」として、ドイツがユーロ安を利用して、アメリカとの貿易で優位な立場に立っていると批判。ドイツの企業も今後、トヨタと同様に、対米戦略を再考するよう迫られるだろう。
◎移民政策で対照的な米独
また、トランプ政権は、イスラム圏7カ国の市民の入国を禁止する大統領令を発し、移民の受け入れを規制する方針を示している。日本にとっては、重大な影響を受けない政策だが、ドイツの場合は事情が異なる。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相はこれまで、100万人以上の移民を受け入れ、移民に"寛容的な政策"を行ってきた。この政策は"人道的"と評価する声があるが、ドイツ国内は、大量に押し寄せる難民で大混乱に陥っている。ショイブレ財務大臣はこのほど、移民の受け入れが誤りであったことを認めるなど、閣内でも意見が割れるシビアな問題だ。
トランプ氏の大統領令は、こうした移民反対の流れを強めかねない。そのためメルケル首相は1月30日に、「テロとの戦いは必要不可欠なのは疑いようがない。イスラム教のような特定の信仰や出身国を理由に、全員に疑いをかけることは正当化できない」と述べ、トランプ氏を批判するとともに、自らの政策を正当化した。
トランプ氏は、移民政策を立て直し、国内秩序の回復を目指しているが、メルケル氏の眼からみると、そのやり方は非人道的行為に見えるのだろう。
◎環境政策でも対照的
さらに環境政策についても、米独の判断は分かれる。
トランプ氏は、オバマ政権が進めた地球温暖化対策を白紙撤回するとともに、環境規制を撤廃する方針を示している。規制に苦しむ国内産業を活性化させるため、原油や天然ガスなどの化石燃料の使用を増やす方向に向かうと見られる。
一方のドイツは、"環境大国"という国際的地位を高める政策を行ってきた。2022年までに「脱原発」を果たし、自然エネルギーで電力を100%賄う政策を推進している。
つまり、トランプ氏の政策は、ことごとくドイツの政策とすれ違っている。
世界は今、「トランプ革命」の流れにどう乗るかで腐心しているが、ドイツをはじめとする国々はどのように対応していくか。今後も注目していきたい。(山本慧)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『守護霊インタビュー ドナルド・トランプ アメリカ復活への戦略』 大川隆法著
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《記事のポイント》
・トランプ氏の動向で、自動車メーカー「マツダ」が戸惑っていると報道
・グローバル化の中で、日本企業は潤ったが、日本経済は停滞した
・「強い日本」の復活が必要
トランプ米大統領の動向に、日系自動車メーカーが揺さぶられている。
その中でも、広島に本社工場を置くマツダの株価の下落が目立つ。1月5日と2月1日の終値の比較では15.6%も下落しており、ホンダ、トヨタ、日産など自動車大手7社の中でも際立っている(2日付朝日新聞)。
同紙は、「米国市場は、『稼ぎ頭』だが、ほかの日系自動車メーカーに比べて輸出の比率が高い。米国向けの拠点として拡大しているメキシコ工場も標的になりかねず、戸惑っている」と報じる。
1月上旬、トヨタがメキシコに建設している工場に対して、トランプ氏は「米国内に工場を建てろ。さもなければ、高い関税を払え」と指摘。トヨタは米国内の工場の生産や雇用を増やすことで妥協点を探る。
だが、マツダは他社とは事情が異なる。2011年にアメリカでの生産を停止し、14年にはメキシコの工場を稼働させ、アメリカやヨーロッパへの輸出の拠点としている。この状態で、トランプ氏が、北米自由貿易協定(NAFTA)を見直し、米国への輸入品に高い国境税をかければ、マツダは大きな打撃を受ける。
人件費の安いメキシコで生産したものをアメリカに売るというビジネスモデルは難しくなりそうだ。
◎グローバル化で日本経済が弱っていった
トランプ氏が海外からの輸入品に高い関税をかけると言っているのは、賃金の安い海外に流出した工場を呼び戻し、米国内での雇用を増やす狙いがある。
多くの日本企業も、アジアを中心とした人件費の安い国々に工場を移し、その国や周辺国で売って利益を上げているが、ここには一つ問題がある。
それは、国境を越えて、地球全体を一つの市場として捉える「グローバル化」によって企業が利益を得る一方で、日本国内の雇用を減らし、本来、日本に納められるべき所得税や法人税が失われ、日本経済が弱っていくという面だ。
現在、全国の書店で発売中の本誌3月号の記事「製造業が日本に戻る日」では、グローバル化が進む中で、日本企業が潤ってきた反面、日本経済は衰退し、中国が国力をつけて軍事拡張してきた事実を伝えている。
同記事では、こうした状況を打開するためにも、トランプ革命に対応するためにも、日本企業が取り戻すべきものと、日本政府が果たすべき役割について提言している。
トランプ政権下で「強いアメリカ」の復活を目指すのであれば、日本も「強い日本」の復活を目指すべきだ。いま日本の政府や企業には、大きな決断が迫られている。(片岡眞有子)
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