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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,4) The Searchers『Sugar & Spice』(UK) &『Meet The Searchers』(US ver)

2024-11-10 12:32:02 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

前回に引き続き、60年代ブリティッシュビートのいぶし銀的バンド「サーチャーズ」をご紹介します!まずは1963年にパイレコードからリリースされたイギリスでの2ndアルバム「Sugar & Spice」(UKオリジナルMONO盤)です。

前回紹介した1stアルバム同様、60年代特有のレトロな雰囲気のバンドロゴに、収録曲が散りばめられ、中央には同じポーズで佇む4人組というカバーデザインが実にPopですね。サウンド面でも1stアルバム同様「ポップで親しみやすい曲たち」が並びます。このアルバムの一カ月後には、ビートルズの2ndアルバム「With the beatles」がリリースされるのですが、こちらのジャケットは有名な「ハーフシャドウ」と呼ばれる顔の片方にのみ光を当てたクールで渋い印象の白黒写真となっており、レコード会社の違いはあるものの両バンドの売り出し方というか戦略も随分と分かれてきていたように感じます。

さて、では針を落としてみましょう。1曲目は1963年にイギリスで3位まで上昇した3rdシングルでありタイトル曲「Sugar & Spice」です。ベース&ヴォーカルの「トニー・ジャクソン」のハイトーンの甘いヴォーカルに、サーチャーズの抑えられた演奏が響きます。1stアルバムから4カ月後という、今では考えられないハイペースで録音、リリースされたものですが、当時の他のロックバンドの流れと同様全体的によりラウドになって来たように感じます。その後も彼らお得意のR&Bカバーが続きますが、聴いていくうちにある変化に気付きます。「あれ?1stアルバムとボーカルが全然違うぞ!」そうなんです!1stアルバムでは12曲10曲でトニー・ジャクソンがリードヴォーカルを取っていたに対し、この2ndアルバムでは、リードギターの「マイク・ペンダー」が8曲でリードボーカルなのですよ(ダブルボーカルを含む)彼のハスキーで低めのボーカルこそが、この2ndアルバムでの最大の変化であり、彼らの新たな魅力となっているのです。トニーのボーカルは、その声質通り、R&Bの激しい演奏に対し甘くポップになり過ぎる部分があるのですが、ここにマイク・ペンダーという全く声質の異なるボーカルが混ざり合う事で、非常に美しいハーモニーとなっています。その部分に注目すると、よりこのアルバムを楽しめるでしょう!そして、今も当時も珍しい「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」がリードを取る「Ain't That Just Like Me」こそ、個人的に言えばこのアルバムのベストトラックでありましょう!最初からゴスペルのように3人のボーカルが掛け合い、そこにラウドな演奏が絡み合います。特にトニーによる高音部のコーラスが素晴らしい!彼のハイトーンボーカルの魅力がコーラスでこそ発揮される事がよくわかります。途中で少しテンションを落としてから再び盛り上がる演奏等、いかに彼らが数々のギグをこなし、鍛えられて来たか・・・を物語っています。

さて、このアルバムの4カ月後、ついにアメリカでのデビューアルバム「Meet The Searchers / Needles And Pins」Kappレコードからリリースされます。(写真はUSオリジナルMONO盤)

まずはジャケットに注目でしょう!スーツ姿で微笑む4人組の姿は、明らかにビートルズを意識させますが、イギリス盤と比べて、スタイリッシュでクールな印象を受けます。裏ジャケットには各メンバーの年齢や身長、体重、目や髪の色なんかも紹介されており、彼らがアメリカにおいて「どのような売られ方をされていたか」が分かり興味深いでしょう。

それでは針を落としてみましょう。まず注目は、当時の最新シングルであり、タイトル曲の「Needles & pins」です。シェールとのデュオでお馴染み「ソニー・ボノ」が書き、フォークシンガーの「ジャッキー・デシャノン」が録音したフォーク・ソングですが、サーチャーズはこれを見事にロック・サウンドにアレンジしているのです!ドラムのリズムやギターのフレーズ。そして抑えられた演奏等「ビートグループの一つの典型」とも言えるアレンジでしょう。フォーク・ロックの先駆けとも言える演奏で、アメリカでシングル発売され13位まで上昇したヒット曲でもあり、当時最大の人気番組である「エド・サリヴァン・ショウ」でも演奏されています。80年代以降のアメリカンRockをリードした「トム・ペティ&ハートブレイカーズ」も、後にこの曲を取り上げていますが、明らかにサーチャーズのアレンジを参考にしており、サーチャーズのサウンドが後のロックに少なからず影響を与えている事が分かります。アルバム自体も全米で22位まで上昇しており、決して長くは続きませんでしたが、アメリカでもイギリスでもサーチャーズの人気のピークだったのがこの時期と言えるでしょう。

ちなみにこちらのアメリカ盤1st。ジャケットはもちろん収録曲もイギリスとは全く異なっており、イギリス盤の1st、2ndからアメリカで受けそうな曲をチョイスし、さらに1曲目に「まだアルバム未収録だったシングルを追加した内容」となっている独自盤です。その為、全体的にアップテンポでロックな曲が多く、さらにUS盤特有の音圧の高さやラウドさが加わり、非常に魅力的な盤に仕上がっております。バンド自体のオリジナリティという点では「いかがなものか?」と言うマニアも居るようですが、一つのパッケージとして考えればこのアメリカ盤1stにサーチャーズの魅力が詰まっており、軍配が上がるでしょう!

当時のレコーディングはほぼ一発録りでライブ録音に近く、彼らの演奏力の高さや、エレキギターのクリーンな音の美しさがよくわかります。今聴いても、純粋に「かっこいい!」と思わせるサウンドに心躍ります。現在では時代に流され、マニア以外ではまったく語られなくなったバンド「サーチャーズ」。私は推さずにはいられないのです!ぜひとも「オリジナル・アナログ盤」で聴いて頂き、あなたの音楽ライフを豊かに過ごして頂ければ嬉しく思います!次回もお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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