読者諸賢、ご機嫌よう。ハウリンメガネである。
エフェクターが好きだ。
突然何を言い出すんだお前は、と思われたであろうが、御放念頂きたい。
好きなのである。エフェクターが。
私のライブを見た方や、友人、知人は「いや、お前ライブでエフェクター使わないじゃん!」とツッコむであろうが、それはそれ、これはこれ。
好きなのである。
エフェクトペダルが!
(大事なことなので三回言いました)
メーカーごとの設計思想が見え隠れするメカメカしい見た目。これを通すとどういうことが起きるのか?と心を騒がせるデザイン。ギターやアンプほどの大きさもないため家に転がっていても邪魔にならないサイズ感。トドメにプロのステージに並ぶ色とりどりのペダルのカッコよさ!と、男子の好きなコレクタブル要素山盛りの素敵アイテム!それがエフェクトペダル!
……とまあそんな諸々の理由でエフェクトペダルが好きなのだけど、実際のところ、私が敬愛するギタリストの多くがアンプ直結の人、かつ、うちの編集長からの「ギタリストはギターとアンプとシールドだけあればいいんだよ!」という長年の教えの影響で私も基本的にはアンプ直結派。
そう、直結派ではあるのだが、時にはアンディ・サマーズやビル・フリゼールのようにディレイやリバーブを活かしたイカしたフレーズを弾きたい!という欲望が魍魎の如く湧き出す夜もあるのだ……
(そういえばアンプ直結の人でもリバーブだけは……という人も多い。うちの編集長は「エフェクター?要らねえよ!あ、アンプのリバーブは別。アレは音が美しくなるから」と言っていたし、日本が誇るべきブルースマン、吾妻光良氏は「リバーブがないアンプで弾くとパンツを履いてないみたいで落ち着かない」との名言を残しておられる(同感!))
そんな私の最近のペダルセットがこれ。
(写真)
アンディ・サマーズみたいな音が出るエレハモのフランジャーに、これまたビル・フリゼールの影響丸出しのエレハモのフリーズ(ホールド・サスティナー)とLINE6・DL4(ディレイ)の組み合わせ、そして最長23秒の超ロングディレイでフリップ先生のフリッパートロニクスごっこが可能となるBOSS・DD-20(ディレイ)という、筆者の憧れ丸出しのペダルセットである。
音を出して……おお!これよ!クリーントーンをスペーシーなモジュレーションが彩り、そこに絡みつくディレイサウンド!これぞニュー・ウェイヴ・ギター・サウンドよ!ワッハッハ!ワッハッハ!……
……というように散々欲望を満たした後でいつも「でもアンプ直の方が弾きやすいし音もいいよな」と我に返ってしまう私。
さあ、ここからが本題だ。(前置きが長いというツッコみは捨て置け!)
なにゆえペダルを通した音はアンプ直結時と変わってしまうのか。
すべてのペダルをオフしたとしても、ペダルボードのど頭にバッファアンプを置いたとしても、ギターとアンプを直結させた時の音とはやはり何かが変わる(音が鈍るというか、弾いた時の感触に一枚膜がかかったような感覚になる。なにで読んだかは忘れたが鮎川誠さんが「エフェクター使ってもいい音出す人はたくさんおるけど、僕はエフェクター使うと音が潰れてしまってよう出んのよ」と仰っており、言葉は違うが、そうそう!と頷いた覚えがある)。
これらの問題の根っこが「インピーダンス」である。
インピーダンス。
近年の楽器弾きなら一度は聞いたことがあるのではなかろうか。
「このボリュームペダルはローインピーダンスだからギターから直で挿しちゃダメだよ。直で挿すならハイインピーダンスのやつを使わないと……」
「ギターをミキサーに繋ぐときはダイレクトボックスやバッファ入りのエフェクターでローインピーダンスに変換して……」
「ファズフェイスはハイインピーダンスで繋がないと手元でクリーンにできないから……」
はい、この時点で何を言っているのかチンプンカンプンという方。致し方なし。
私もこのハイインピーダンス・ローインピーダンスというのがどういう事を指し示しているのか理解するのにかなりの時間を要した。
思いっきり省略して説明すると、パッシブピックアップのギターから直接出ている信号は「ハイインピーダンス」。アクティヴピックアップのギターから出ている信号や、オン状態のエフェクター(BOSSのように常時バッファ回路を通るペダルの場合はオフ状態も含む)を通った信号が「ローインピーダンス」である(思いっきり省略しているので齟齬があるケースも多々あるのだが、とりあえずはこの理解で読み進めて頂きたい)。
ハイインピーダンス信号は微弱な信号の為、長いシールドやトゥルーバイパススイッチのようなパッシブ回路を多く通ると信号のロスが多くハイ落ち(音がこもる)し、外乱ノイズにも弱いのだが、その信号の微弱さは繊細であることの裏返しであり、プレイヤーの弾き方をダイレクトに反映してくれる。
ローインピーダンス信号はハイインピーダンスの逆で、長いシールドを使おうが信号ロスし難く、外乱ノイズにも強い。だが、ハイインピーダンスのような繊細な表現は反映しづらい。
ここまで読んだ方は「じゃあアンプ直結とエフェクターを通した音を比較して音が鈍って聴こえるのはローインピーダンスだからって理解でいいのかな」と思われたであろう……半分正解!
これ、私自身もいろいろ試行錯誤してようやく掴めてきたところなのだが、音が鈍るか否かの最大のポイントは最終的にアンプへ入力する信号がハイインピーダンスなのか、ローインピーダンスなのかということと、アンプのインプットがどちらの信号に対応しているのかが重要なのではないかと思う。
ギター弾きの方ならアンプのインプットに「ハイ」と書かれている差込口と「ロー」と書かれた差込口が並んでいるのを見たことがあるだろう。
これ、そのものズバリ、ハイインピーダンス向けの差込口とローインピーダンス向けの差込口なのである。
つまり、パッシブのギターを直接挿すなら「ハイ」。アクティヴのギターやエフェクターを通して挿すなら「ロー」に挿せば信号の整合性が取れることになる。
「え?じゃあインプットが一つしかないギターアンプの場合は?」
はい、これも音が鈍る原因。インプットが一つの場合、それは大概ハイインピーダンス入力なのである。
電子楽器の鉄則として「ハイ受けロー出し」というのがある。入力はハイインピーダンスにし、出力はローインピーダンスにするということだ。
ちょっとバケツの水をペットボトルに入れることを想像してほしい。きっと水の大半はペットボトルには入らず、こぼれてしまうだろう。これがハイインピーダンス信号をローインピーダンス入力に送るということなのである。つまり、出力された信号を入力側が受けきれないのだ(結果、ものすごくこもった音になる)。
逆にペットボトルの水をバケツに入れることを想像してほしい。きっとペットボトルの水は残らずバケツに入るだろう。これがローインピーダンス信号をハイインピーダンス入力に送るということ。つまり、ハイ受けロー出しなら、大抵の出力された信号をすべて受けきれることになるのだが、バケツをひっくり返した場合の水の出方とペットボトルからの水の出方は違う……これが、ペダルを通した時に音が鈍って聴こえる原因だ。
バケツからバケツへ水を移すのなら一気に大量の水を流し込める。だが、ペットボトルからバケツへ水を移すなら流せる量はペットボトルの口径が限界となる。この「水」を弾き手がプレイに込めたニュアンスだと読み替えて頂きたい。
バケツからバケツへ、つまりハイインピーダンス出力をハイインピーダンス入力へ送る場合、弾き手の込めたニュアンスは全て一気に注ぎ込める、つまりニュアンスが全て出せることになるが、ペットボトルからバケツへ、つまりローインピーダンス出力からハイインピーダンス入力へ信号を送る場合、弾き手の込めたニュアンスには制限がかかるということになる。
理想的なのは出力インピーダンスと入力インピーダンスの完全なマッチングなのだが、エフェクターやアンプがマスプロ製品である以上、完全なマッチングというのは不可能に近い(オーダーでカスタムすれば別だろうが)。であれば、多少の訛りは諦めて使いたいエフェクターの効果を優先するか、可能な限り訛りのない、アンプ直結でのプレイという二択を我々アマチュアギタリストは迫られるのである…………
なんてなことを書いてはみたが、我ながら洒落くせぇ!
いいんだよ!使いたかったらなんぼでもペダルを繋げ!要らねえと思ったらアンプに直で挿せ!
出したい音を出したいように出す!そのために研究はするが基本中の基本は『やりたいようにやれ!』だ!
さあ、同志諸君!今年もやりたいようにやろう!好きな様に好きな音を出して世界と対峙してやろう!
また次回!ハウリンメガネでした!御粗末!
<ハウリンメガネ筆>
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