夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

SNS各社によるトランプのアカウント停止は、言論の自由を脅かす?

2021-01-18 17:34:37 | 政治
 アメリカのトランプ支持派の議事堂襲撃を受け、SNS各社はトランプのアカウントを停止した。それに対し日本では、極右の三浦瑠璃をはじめ、総じて右派は「言論の自由の侵害」として捉え、所謂リベラル派は、トランプ派の暴力扇動を停止させる措置として当然と受け止められている。リベラル派からは「twitter japanは日本でのレイシストの言動を停止しろという」Twitterまで出ている。
 その後、ドイツのメルケル首相やフランス政府高官から、アカウント停止に対する懸念が表明された。そのことに日本の極右派は、メルケルも「問題」だと言っていると勢いづいた。
 しかし正確には、メルケルは報道官を通して「言論の自由は、根本的に重要な基本的人権だ。そしてこの基本的人権が制限され得るのは、法律を通じて、また立法者が定めた枠組みの中でであり、ソーシャルメディア各社の経営陣の決定によってではない」(AFP1月12日)と言ったのである。つまり、SNS各社という営利企業に社会的な問題を判断する権限を与えていいのか、という懸念である。ドイツでは、投稿を法で規制している(朝日新聞1月18日)し、社会全体の問題として、法的な枠組みで行われるのが民主主義として本来の姿だという意味である。決して、トランプの言動を規制すべきでないとは言っていない。
 今回のSNS各社の措置は、議事堂襲撃という一種のクーデターがあり、その後も暴力行為が予想されるため、フランスのデジタル副担当相が言うように「緊急予防的な形で正当化される」(同上)ものだろう。しかし、あくまで、法の枠内で行われるのが、本来の民主主義である。
 そもそも、Twitter社やFacebook社などは営利団体であり、議事堂襲撃事件に至るまでの長い間、トランプ派の暴力扇動やレイシストの言動を野放しに流してきたのである。Twitter社は、規約で暴力やテロへの扇動・賛美を禁止している。しかしSNS各社は、その企業の規約にもかかわらず、「ドナルド・トランプに対する彼らの対応は、非常に長期にわたりお粗末だった」し、「彼(トランプ)は明らかに偽情報を広めていたし、人々に対して口汚いことも明らかだった」(Wikipedia創始者ジミー・ウェールズ。AFP1月15日)のである。それを長い間、野放しにしてきたのは、SNSが広告収入で莫大な利益をあげるために、「できるだけ多くの閲覧者、できるだけ多くのページビューが必要」(同上)必要だったからである。(因みに、Wikipediaは非営利である。)
 SNSだけでなく、ITプラットホーム各社は、世界の検索エンジンで90%以上を占めるGoogleが検索のアルゴリズムを明らかにしないように、企業秘密で押し通し、透明性はない。彼らの都合いいものが検索上位になるという疑念は、決して拭われてはいないのだ。彼らの「都合のいいもの」に、社会的、政治的なカテゴリーが入っていないとは言い切れないのである。端的に言えば、「アルゴリズムを明らかにしろ」や「プラットホームを規制すべき」という主張が下位にされても、分からないのだ。
 日本のリベラル派が言うように、単にトランプの言動だから、レイシズムの言動だから、CNS各社は規制していい、というような単純な問題ではない。重要なのは、営利団体に過ぎない一企業の判断で、言論が左右されることがあってはならない、ということなのだ。
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