夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「接触確認アプリCOCOAが役立ちそうもない理由」

2020-06-22 11:24:16 | 政治
 1.日本版COCOA
 6月19日、厚生労働省はCOVID-19の接触確認アプリCOCOAの運用を始めた。日経新聞によれば、初日で179万件のダウンロードがあったという。とに角何であれ、ウイルスを封じ込めて欲しいという期待がそこには表れているように見える。
 このようなアプリは中国から始まり、その後、公権力からの監視、セキュリティ、プライバシーなどの問題から、改善を重ね、韓国、シンガポール、オーストラリア、ドイツその他、世界で60か国ほどで導入されている。日本のCOCOAは、極めて単純で、アプリをダウンロードした同士のスマホが「1メートル以内の距離で、15分以上 」接近したことを検知・記録し、その中の保持者が自分が陽性だ入力した場合、そのスマホに記録された接触者の情報を基に、厚生労働省の通知サーバから接触者のスマホに通知が行くというものである。位置情報も使わず、匿名で、接触記録は中央のサーバでなく、スマホ内に残り、14日で消去されるなど、いくらかはプライバシーとセキュリティには考慮したものにはなっている。
 2.世界では
 このアプリは理論上、人口の60%が使用すると効果が高くなるが、先に導入した国の状況では、中韓の追跡・個人特定型を除くと、シンガポールで3/28導入後、現在でも人口の20%、オーストラリア4/26導入現20%、フランス、イタリア6月初旬導入現2~4%と人口の60%には遠く及ばないのが現状である。このアプリのダウンロードには、政府に対する信頼度が大きく影響すると思われるが、比較的政府に対する信頼度が高いドイツで6/16に導入された。1日で650万件ダウンロードされ、他国より順調と言えるが、世論調査では4割強が使用する、同じく4割強が使用しないとなっており、やはり人口の60%の使用は非常に難しいと思われる。
 3.日本では良くて10%
 こういったアプリを好意的に受け取る、またはもの珍しいものが好きだという層がどこの国にもいるので、導入初期にはダウンロードが多く、その後すぐに横ばいに転ずるという傾向が各国とも見られる。さらに日本は、政府のコロナ危機対応の評価は最低水準である。それは政府の作成したソフトウェアがセキュリティ上、信頼できるかどうかにもにも影響する。結局日本では、各国の使用率よりも低く、初日179万件だとしても、その後はすぐに途絶え、1000万件、10%がやっとだろうと思われる。
 4.検査体制が整っていない
 このアプリの前提条件は、PCR検査が迅速に行われる(抗原検査は発症後2~9日という条件があるので、PCRに取って代われない)ことが条件である。もともと、多くの検査で迅速に陽性者が判明し、それを接触者に通知するというシステムなのである。そこでのメリットは、自分では記憶にない「1メートル以内の距離で、15分以上 」で接触した人に知らせる、または知らされることであるが、検査数が多ければ多いほど、無症状や軽症の場合でも、感染リスクを認知させる人数が増え、効果を持つと考えられる。しかし、日本では、厚労省は検査が必要だと言っているが、実際には諸外国の10分1から100分の1程度しか検査は行われていない。直近の6月18、19日のデータで、1日1000人当たり米国1.14 英国0.98 ドイツ0.55 フランス0.47件に対し、日本は0.08である(Our World Dataによる)。検査数が少ない日本の場合、現状の保健所等自治体担当部門が通知している以上の効果は疑問である。
 5.実際に想定されるのは
 最も感染確認数が多い東京で想定してみる。東京都での直近の感染確認数は1週間で200人、2週間で400人程度である。人口は1400万人だが、実際に市中で生活し往来するのは1000万人だとして、2週間で1人の感染確認者に遭遇する確率は、400分の1000万、0.004%である。普通の会社員が、「1メートル以内の距離で、15分以上 」の接触する人間は、家族、通勤電車、仕事で1日当たり20人だとする。2週間で280人である。280人×0.004%は0.0112となる。つまり、感染確認された人が全員陽性通知すると仮定しても、2週間で0.0112回の確率ということである。逆算すると、178.6週間に一度、1250日に一度の確率ということである。
 これは、東京都1000万人が全員アプリを使い、かつ陽性が確認されたら通知するという前提での計算で、実際にはこの数分の1から数十分の1になる。東京で10%程度の使用率だとすると、「1メートル以内の距離で、15分以上 」という接触者も10分1しか認知できず、まったくといっていいほど、意味をなさない。ダウンロードした10%100万人の内、10週間以内に通知が来るのは、計算上は0.56%で5600人となるが、(0.0112×5×0.1×1,000,000)実際の接触者の内、通知されるのはその10分の1でしかない。
 さらに、東京の会社員の場合、「1メートル以内の距離で、15分以上 」とは、朝夕の通勤電車で隣に居合わせた人も接触者となり、これがその人の最も多い接触者だという人はかなり多いだろう。通勤電車での感染リスクが高いというデータはなく、それで通知が来た場合、どこで接触したかは表記されないので、通知が来た者は大混乱に陥る可能性もある。
 結局のところ、アプリをダウンロードしたものの、自分が陽性者でない場合、接触者からの通知が来る確率が極めて低い。数年間、通知など来ないという者が99%も占めるということになる。それでは、通常の生活では感染などしないのではないかという錯覚に陥るか、このアプリにどこか不具合があり、おかしいと思いアプリを削除してしまうか、どちらかだろう。結論として、役に立たないのは目に見えている。
 

 

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