夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

コロナ危機「最もリスクがあるのは<会話>だということが、なぜ伝わらないのか?」

2020-07-24 23:05:30 | 政治
1.どうやって感染するのか
 コロナウイルス(SARS-Cov-2)は、鼻と喉の粘膜で増大する。そして病気(Covid-19)を引き起こす。このウイルスが体外に大量に出るのは、一般的に他人に感染させる場合は口からが最も多い。鼻やその他体液、糞便からも当然出ていくが、社会生活上、居住空間を別にすれば、口からの飛沫または、呼気からの流出が最も多いと考えられる。その口から出たウイルスが本人の手に付着し、その手で触ったものからも感染する(接触感染)が、それより実際には、口から口または鼻へ直接ウイルスが伝わり、感染することが最も多い。
 その証拠に、マスクをする人が多いほど感染が縮小する。口から出るウイルスを減少させるからである。WHOが6月になって指針を変更し、マスク着用を推奨したのも、接触感染より口からの飛沫感染が多いことが分かり始めたからである。また、6月に医学誌Lancetに掲載された、感染リスクと距離についての論文(対人距離が3メートルの範囲で、1メートル長くなるごとに感染リスクがおよそ半減する 。また、マスク着用でリスクが17%から3%に減少)も、口からのウイルスが飛散することを前提に分析されている。
2.最も感染リスクが高いのは、マスクなし、近距離での会話
 口からの感染で、最もリスクが高いのは、当たり前ことだが、キスである。英国BBC電子版は、キスをしない性行為を薦めるという医学者の意見を載せているぐらいである。キスを例外とすれば、その次にはマスクなしでの近距離での発声、会話である。
 このことは、報道されるクラスターの事例を見れば分かる。「接待を伴う飲食店」、ライブハウス、小劇場、他人数による会合(多くは飲食している)、カラオケスナック、居酒屋、医療・介護施設、職場、その他すべてでマスクなしの近距離での会話が行われている。それも、一言二言の会話でなく、長い時間にわたる会話である。
 多くの場合は飲食を伴っているので、当然マスクを外す。酒が入れば、さらに声が大きく、対人距離も縮まる。医療・介護施設では、患者等にマスクを着用させるのが無理な場合が多い。明らかに、マスクなし、近距離会話で感染拡大が多く発生しているのである。
 (といっても、マスクによる感染率の減少は85%という研究データ(Lancetによる)があり、100%ではなく、マスクをしていれば感染しない・感染させないなどということはない。)
 逆に、満員に近い電車に1日数十万人が乗っているが、大量の感染が起きたなどという話が聞こえてこない。それは、乗客同士は会話をしないからである。
3.厚労省の3密
 厚労省は「
 1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
 2.密集場所(多くの人が密集している)
 3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)
という3つの条件が同時に重なる場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。」と書いている。
 確かに、この3つの条件が重なれば、リスクは高いと思われる。(ここではマスクに触れらていないが、厚労省はマスク着用も重点的に呼びかけている。)そして、この言葉はかなり浸透している。
 しかし、この3つは、感染のリスクが大幅に違う。1.の密閉空間は、例えどんなに密閉していても、口を閉じ、かつ2メートル以上離れていれば、呼吸からのウイルス飛散はごく僅かで、数十時間その場にいるなどしなければ、感染リスクはほとんどない。2.も同様に距離を開け、マスクをしていれば感染リスクは小さい。アメリカの人種間不平等への抗議デモで感染拡大の報告がないのは、距離をとりマスクをしているからである。それとは正反対に、トランプの共和党集会で感染拡大があるのは、マスクなしで近距離で座るからである。しかし、3.の密接場面だけは、例え戸外でも、少々風が吹いていても、数十センチの距離で、マスクなしで会話を15分以上すれば、極めて感染リスクは高いのである。だから、誤解を生むのである。
 カラオケスナックや居酒屋の感染例では、「窓を開け、換気に気を付けていたので大丈夫だと思った」という声がある(LivedoorNews)。確かに、同時に3密の条件は満たしていない。また、多くの人が集まるとあるが、「多くの人」の解釈は人それぞれで、5,6人なら、「大丈夫だろう」と会食をする。1と3の条件に合っているが、2は条件を満たしていないから大丈夫と考える。そう考える人がいるのは、3密の厚労省説明を読む限りでは自然なことである。はっきりと書かねばならないが、1、2があってもなくても、3だけで感染リスクは非常に高いのである。「同時に重なる場」などという表現があるから誤解を生む。だから、クラスターが発生するのである。
4.濃厚接触者の定義変更
 4月22日、国立感染症研究所は.濃厚接触者の定義変更し、それ以前に示した条件(患者と同居あるいは長時間の接触など数項目)の他に、『手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する) 』を追加した。この場合の「必要な感染予防策なし」とは、医療・介護施設以外の社会生活上では、マスクであり、「(15分以上の)接触」とは、身体的接触を除けば主に会話である。この条件は勿論、「専門家会議」でもリスクが高いとしてきたのだが、敢えて追加したのは、それだけ重要なことだと分かってきたからである。
5.グループで通常の距離間、マスクなし、15分以上の会話で、ひとりでも感染者がいれば、ほぼ全員感染する。
 結局、最もリスクが高いのはこれである。感染予防に努めるとは、第一にこのことを避けることである。経済を再開すると感染拡大が起こるのは、会話の機会が増えるからである。人が移動すれば、必ずどこかで、今まで会わない人と会話が始まるので感染が広まるのである。ただ単に、街の中を黙って歩いただけで、感染が広まるのではない。また、「夜の街」で接待サービスを受けることだけで感染が広まるのでもない。昼だろうが夜だろうが、飲み屋だろうが職場だろうが、近い距離でマスクなしで15分以上、声を発すれば感染するリスクが高くなる。あれやこれやと様々な感染予防法を言うよりも、このことを声を大にして言うべきなのである。
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 
 
 

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