夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

じわりじわりと右傾化する朝日新聞

2019-12-01 23:52:33 | 政治
 新聞各紙を丹念に読み比べている評論家の池上彰によれば、在京の新聞の中で、安倍政権に対する批判記事が多い順に、東京と毎日が同じくらいで、朝日がその次だという。この指摘は、まったく正しいと言えるだろう。恐らく、以前はこの3紙に差はなかったはずだ。では、東京と毎日が安倍政権に対する批判を増やしたのだろうか? そうではない。朝日新聞がじわりじわりと右傾化、つまり安倍政権に対する批判記事を少しずつ減らしているのである。
 2019.12.1朝刊で第1面に看過できないルポ記事を載せている。東欧のポーランド、ルーマニア等で、ロシアの脅威に対抗するために、民兵組織が活動しているというものである。記事によれば、それはウクライナでのロシアの軍事的脅威に触発されたものだという。つまり「親ロシア」のウクライナ東部の「軍事力による占領」とクリミア半島のロシア軍による占領下の住民投票で「併合」したことが原因だという。じつのところ、この説明は、西側(アメリカとその軍事同盟国)の主張とまったく同じものである。NATOの司令部もまったく同じことを主張しているのである。確かに、朝日新聞はほんの僅かにNATOがロシアの周辺にまで迫り、ロシアにとっては脅威であるかもしれないと、ほんの少しは、NATOの広報ではないことを示してはいる。しかし、朝日新聞は公平なジャーナリズムとしての重要なことを一切触れない。そもそも、ロシアの軍事力は、NATOの軍事力と比べてどのくらい力を持っているのか。ロシアの軍事費はアメリカの10分の1であることを考えれば、核戦力を別にして、通常兵器レベルでは、圧倒的にNATOが上回ることは明らかである。
 ウクライナにおいて、西側政府とメディアが「親ロシア派」(pro-Russian)と呼ぶ勢力とはどのような人びとなのか? はっきりさせなければならないが、彼らは「親」(pro)ではなく、意識としてはロシア人そのものなのである。つまり、ウクライナ国籍を有しているが、ロシア語を話し、ロシア正教を信奉するロシア系住民なのである。ウクライナ危機の発端は、ウクライナ西部のキエフでウクライナ民族主義を掲げる政権が誕生し、それまで公用語であったロシア語を公用語から外すなど(結果として実施されなかったが)、排外主義的姿勢を示し、それに東部のロシア系住民が恐怖から反発したことから表面化したものだ。また、クリミア半島での最も肝心なことだが、クリミア半島は長くロシア領であったが、1954年にフルシチョフがウクライナに割譲したのである。ソ連崩壊までは、同じソ連内であり、ここの住民はほとんどロシア人だったが、大きな問題と見做されなかった。要するに、ロシアとしては、領土を取り返したのである。しかし、朝日新聞も西側政府もこれらのことにはまったく触れようとはしない。なぜなら、不都合な真実だからである。
 対ロシアだけでなく、対中国に対しても、今年になってから、徹底した批判を第1面に掲げている。しかし、驚くことに批判の主旨は、アメリカ政府とほとんど変わらない論理で貫かれている。国際関係を西側右派政権と同じ論理で記事にする、そういった記事をじわりじわりと増やしている。それが朝日新聞の現状と言っていい。
 恐らく、朝日新聞は経営上の理由から、右へウイングを広げることで、読者層を拡大したのだろう。また、かつて「赤い朝日」と右派から揶揄されたことを払拭したいのだろう。しかし、そもそも以前から、朝日新聞の論調は左派などとは言い難い。朝日新聞は、英国労働党に近い論調のThe Guardianと比較すれば遥かに「右」であり、日本の右派から見れば、中道が「左」に見える、そういった単なる相対的な意味に過ぎないのである。



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