TANEの独り言

日々の生活の中でのつぶやきだから聞き流してネ

意を決っして、旅に出る …【第9話】

2022-10-04 15:37:00 | 夢実現に向けて
翌朝は4時過ぎに起床し、5時半にキャンブ場を出発しました。

テントは建てたままにして、剱岳登頂後に再びキャンブ場に戻ってくる計画です。

予定では、その後テントを撤収し雷鳥沢のキャンブ場まで戻ることになっています。

昨夕、管理棟の人が教えてくれた天気予報では昼には雨が降り出すとのこと… 。

剱岳から下山する時刻や天候次第では、劔沢キャンブ場でもう1泊することも考えていました。

劔沢小屋から剣山荘に続くガレ場の登山道を進んで行くと、V字型になった劔沢の奥の方に五竜岳や鹿島槍の黒いシルエットが見えました。


ちょうど剣山荘まできた時に、鹿島槍の辺りから朝日が昇りました。


朝日は見えましたが、上空には雲が広がっており、剱岳の山頂も雲に隠れています。

剱岳は『岩と雪の殿堂』と呼ばれており、山頂まで岩の道が続き登山ルートとしては上級者向けです。

鎖場が何ヵ所もあり、特に細心の注意が必要なのが『前剱の門』『平蔵の頭』『カニのたてばい』と『カニのよこばい』等です。



登り始めて1時間ほどで山頂を覆っていた雲は一旦とれたのですが、暫くするとまたガスに包まれてしまいました。

一服剱を過ぎ前剱では視界は10〜20m程で、岩場に架けられた橋を渡る『前剱の門』も岩の壁を登る『カニのたてばい』も高度感を感じること無く通過してしまいました。





時々スマホを取り出し、登山アプリで自分の位置を確認しながら山頂をめざしたのでした。

剱岳の山頂ではカフェ・オ・レで一服していると2人連れの登山者が登って来られたので、白いガスを背景に記念写真を撮ってもらいました。



下山時も慎重に足場を選びながら進みましたが、『カニのよこばい』を知らない間に通過してしまっており、記録写真が無いのが悔やまれます。

昼過ぎには剱山岳まで戻り、カレーライスを食べて雷鳥沢キャンブ場まで歩くために腹ごしらえです。



この後、劔沢キャンブ場まで戻りテントを撤収していると雨が落ちてきたのです。

私は雨具を着込んで雷鳥沢キャンブ場まで歩き始めたのです。

私は何度も後ろを振り返り、雲に隠れて行く剱岳を見たのでした。












意を決っして、旅に出る …【第8話】

2022-10-03 12:09:00 | 夢実現に向けて
私はテントの出入り口を開け放ち、テントの中で横たわりました。

テントの開口部から剱岳の凛々しい姿を望むことができました。

疲れた体に500㎖の缶ビールが沁み渡り、私はいつの間にか眠りに堕ちていたのでした。

孫の声が聞こえた気がしてふと目を開くと、テントの白い天井が目の前に広がっていました。

『ココは何処だ?… 家に居るのか?… 』

私はボーっとした頭でしばらくの間白い天井を見つめ、喘ぎながら急登を登ったことや突然目の前に姿を現した剱岳の勇姿が夢の中の出来事であったかのような混乱を覚えました。

家を出て立山駅に着くまでに仮眠はとりましたが、わずか2〜3時間だったと思います。

もしかしたら寝たのは1時間だったのかも知れません。

寝不足の中で室堂から10kg以上のザックを背負い、足を引き摺るようにして急登を登ってきた私の身体は、相当に疲れていたのだと思います。

テントの開口部にある、夕日を浴びてますます “彫が深くなった” 剱岳を確認し、

『あぁー、私は劔沢に来ているんだー… 』

と、我に返った私は長年の夢が現実になっている事をしみじみと感じたのでした。

劔沢キャンブ場には水場やトイレ(2ヵ所ありその内1つはバイオトイレ)も整っています。


キャンブ場よりも高い所い場所にある所から湧水を黒いゴムパイプで引いてきてありました。

天然のミネラルウォーターがパイプの口から常に流れ出ていました。

夕飯はこの水を沸かして注ぐだけのドライフーズの「リゾット」です。



インスタントですがスープもあります。

食後にはカフェ・オ・レも準備しています。


早目の夕食をとった私は、明日の剱岳登山に備えて夕暮れ刻には眠りに着いたのでした。


夜中にトイレに行きたくなり目が覚めました。

ベッドランプを着けて真っ暗な道をトイレへと向かう時、空を見上げるとガスの間から星がキラキラと輝いて見えました。












意を決っして、旅に出る …【第7話】

2022-10-02 14:44:00 | 夢実現に向けて
室堂に降り立った時は曇天だった空も、峠に建つ剱御前小舎(別山乗越)に着く頃には青空が広がり始めました。

雷鳥沢から長い長い急登を喘ぎながら登ってきた私は、目の前にドカンと姿を現わした剱岳を前に元気を取り戻すことができました。


ここから先劔沢キャンブ場までは全て下りです。

斜面に付けられた登山道を下って行くに従い目の前の剱岳がドンドン大きくなっていくのです。


下り始めて30分でキャンブ場のテントが見えてきました。


思っていた通りの、素晴らしいシチュエーションのキャンブ場です。

足は疲れているはずなのに、自分の周りに展開する絵のような景色のせいで軽やかに石の坂道を下って行きました。

『どの辺りにテントを張ろうかなぁ… 』

『朝起きた時にテントのファスナーを開けたら目の前に剱岳が聳え立つ場所を選びたいものだ… 』

そんな事を考えながら劔沢キャンブ場を目指したのでした。


管理棟で受付を済ませ、早速1人用テントを組立てはじめます。

風が無かったのも幸いして今夜のお宿は直ぐにできあがりました。

あとはマッタリと過ごすだけです。

私は、キャンブ場から5分程下った所にある劔沢小屋へビールとツマミを買いに行きました。

戻りは登り道で大変でしたが、あとは山を見ながらビールを飲んで寝るだけだと思うと気分はルンルンです。

青空をバックにした剱岳を見ながら飲んだビールの味を忘れることができません。

今まで飲んだ中で一番ウマいビールでした。

私は写真を撮るのも忘れ、ただ夢の中に自分の身を置きました。




















意を決っして、旅に出る …【第6話】

2022-10-01 10:51:00 | 夢実現に向けて
室堂に来たのは学生時代以来でした。

その時は室堂から雄山に登り、その後は1週間程かけて薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳を経由し槍ヶ岳まで縦走しました。

我が家を出たのは昨日(9/20)の夕方で、室堂に降り立ったのは次の日の午前9時前です。

私がこの地を再訪するのに40年以上の年月を要した訳ですが、いざ行くと決心したら何とたったの16時間で着いてしまうのですから不思議な気持ちでした。

今回は立山連峰を右手に見ながら劔沢へ向かいます。

天気次第ですが次の日に剱岳の山頂に立つためには、今日はテントを張る予定の劔沢キャンブ場まで重いザックを背負って歩かなければなりません。



室堂から雷鳥沢辺りまでは、ザックを背負った登山者に混じって軽装の観光客も見かけられました。



この辺はコンクリートで石を固めた石畳の道や階段が1時間ほど続きます。

その整備された石の道を登ったり降ったりしながら雷鳥沢キャンブ場まで来ました。



『帰りはこのキャンブ場にテントを張るんだな… 』

と思いながら、休憩もとらずに先を目指しました。

これから先は上り坂(写真中の赤線)です。



それも、私が考えていた以上に長く辛い急登だったのです。

この別山乗越に続く急坂で、今年7月に馬見山の急登を登った時の “悪夢” を再び体験することになってしまいました。

両足が攣ってしまい動けなくなってしまったのです。

◯前日の睡眠時間が少なかったこと
◯水分補給が充分でなかったこと
◯足に負担がかかる歩き方をしていたこと

等々、さまざまな理由が重なったのだと思われます。

でも、あの馬見山での経験があったので私は冷静に対処することができました。

◎焦らずに充分な休憩をとり
◎買ったいたおにぎりをお腹に入れ
◎魔法の薬「68」を飲み
◎この日の為に揃えたステッキを使って
◎ゆっくり小さく刻むように足を運ぶ





過去の失敗を活かし、この重大な危機を乗り越えることができたのでした。

コースタイムの2倍近い3時間以上の時間を費やしましたが、室堂到着が予定より早かったために劔沢キャンブ場には予定していた時間に、無事辿り着くことが出来たのでした。
























意を決っして、旅に出る …【第5話】

2022-09-30 10:45:00 | 夢実現に向けて
台風はすでに東北地方を横断し低気圧に変わっていましたが、その余韻は残っているようでした。

『今は空を覆っているこの雲も、次第に切れていくはず… 』

そんなふうに自分に言い聞かせながら、室堂行き7:20発の臨時便の乗車券を購入したのでした。



立山駅から美女平まではケーブルカーで、美女平からは高原バスに乗り換え室堂に向かいます。



美女平に着いた時はガスの中でした。


ところが、バスが樹林帯を抜け弥陀ヶ原を過ぎる頃には雲は切れて行くではありませんか。

高い山の上はまだ雲に隠れていましたが、その雲も徐々に上がって行くのが分かります。



そんな景色を見ながらバスに揺られている時、私のスマホが突然鳴り出したのです。

電波の状況が悪くすぐに切れてしまいましたが、その後すぐにLINEにメールが入りました。

そのメールは旧友で山仲間のT氏からで、

いつ出発しますか? 出かける前に話したいと思って電話しました😊と、ありました。

私は、「今、室堂行きの🚌の中です!」

と、返信しながら、ドタバタと家を出たために仲間にさえ出発を伝えていなかった自分の慌て振りを今更ながら反省したのでした。


立山駅を出て1時間30分程で室堂に着きました。

眼下に雲海が広がり空はまだドンヨリとした雲に覆われていましたが、一ノ越から雄山〜別山に続く稜線をハッキリと望むことができたのです。