風を避けられる子三瓶山の南斜面で昼食を摂った私たちは、「扇沢」に向かって下山をはじめました。
その頃には青空も見え、陽光が白い雪に反射して眩しいほどでした。
雪目にならないよう持ってきたサングラスも着けました。
子三瓶山の北斜面は滑り台みたいに急傾斜になっており、深い雪に覆われています。
その斜面を半ばお尻で滑るように(尻セード)して降りていきます。
途中、前を行っていた会長さんの奥さんの右脚が腰まではまり込み、一人では身動きできなくなったのです。
奥さんは笑いながら、
「登山靴が岩に挟まり抜けなーい!」
と助けを求められたので私は直ぐに近付いたのですが、私も右脚がスッポリとはまり込んでしまったのです。
私は何とか自力で抜け出すことができましたが、2人揃ってはまり込んだ姿はさぞ滑稽だった事でしょう。
奥さんの方は、はまり込んだ右脚の爪先側と踵側を2人がかりで掘り出し事なきを得ました。
岩に挟まって抜けないと思われた奥さんの足の周りは、登山靴をスッポリ包んだかたちで雪が固まりかけていました。
ストックかピッケルを使わないと掻き出せないくらいでした。
『単独行だったら抜け出せないなぁ… 』
と、何だか恐ろしくなりました。
途中、1か所ルートを間違えそうになりましたが「扇沢」まで降りてきました。
「西の原登山口」と逆の方向にあるお鉢の内側の「室の内池」へ行くことも考えましたが、雪の状況も分からない上に時間的な問題もあり真っ直ぐ下山することにしました。
麓に近づくにつれて雪質は水を含み重く感じられました。
登山靴で踏んだ雪の下に枯葉や土の色も見えはじめた頃、私たち6名は無事に下山したのでした。
「西の原登山口」では下山した私たちを祝福するように長く繋がった連凧が夕暮れの空を泳いでいました。