2月29日

日々の思いつき及び読書の感想

読書 加藤周一著『ある晴れた日に』(岩波現代文庫)

2010-04-13 19:22:56 | 読書
戦時中から終戦までの、医師土屋太郎を主人公とした、小説である。しかし、書かれていることは、加藤さんが当時に感じたことや体験したことが反映されていると思う。なぜなら、あとがきに、「ある晴れた日に、戦争は終った。―1945年8月15日の青空と輝く白い雲とを、私は複雑な気もちで眺めたが、その気もちを物語の形で明らかにしようと試みたのが、この小説である」(243頁)と加藤さんは記しているからである。    
なお、本書の「序」は渡辺一夫さん、解説は澤地久枝さんである。

友達の姉である、あき子は「理由のない戦争にかり立てられる人の命が惜しいわ。」(13頁)と言ったが、戦争というものに人の命をつぎ込むことのできる正当な理由が果たしてあるのだろうか。
太郎は同じ医師である岡田との戦争の話の後に、「戦局の判決に関しては、非論理的であり、軽率であることが、愛国的なことであるのか」(113頁)と思ったが、これは「(軍の)下す統制・監視・命令は諾々として受入れ納得され」(v頁 渡辺さんの序)た当時の日本社会というものとつながるのだろう。
また、太郎は「常に脅迫により愚劣な行為を強制して、相手を侮辱しつづけてきた権力」(186頁)という軍人に対して怒りをもっていた。その軍人(の多く)は、当時の日本の最高統治者である天皇という「神聖」さの下に、まさに虎の威を借る狐のごとく、日本国内だけなく、台湾、朝鮮、中国などの侵略先においても、狼藉を極めたのが事実だろう。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 育児 週末は2日とも子どもと... | トップ | 再度の自転車チェーン外れ »

読書」カテゴリの最新記事